生字幕放送でお伝えします岩渕⇒「くらしきらり解説」きょうは七夕ということで宇宙の話題です。
先月、日本が独自の探査機を火星に送り、再び地球に帰還させるという初めての計画が明らかになりました、いったいどういう計画なのか土屋敏之解説委員に聞きます。
火星往復ってなんだかすごそうな気がします。
土屋⇒JAXAの中の宇宙科学研究所が宇宙政策委員会に報告した計画です。
火星そのものに着陸するわけではなく、ターゲットは火星の周りの衛星です。
どんな計画か。
時期はまだ確定していないんですが、2022年ごろ7年後に探査機を打ち上げるというのが有力視されています。
探査機は火星の周りを回って衛星に着陸します。
そして地質サンプルを採ります。
数年かけて地球に戻ってくるサンプルリターンと呼ばれる計画です。
持って帰るんですね。
火星にはアメリカや旧ソ連そしてヨーロッパ、去年はインドも実は探査機を送り込んでいますが、これまでのものはすべて片道飛行でした。
もし日本が往復に成功すれば史上初ということになります。
そもそも火星の衛星に着陸すること自体、初めてです。
火星の衛星というのがよく分かりませんが、どういうものですか。
火星にはフォボスとダイモスという2つの衛星があります。
以前NASAの探査機の近くを通過したときに撮った写真ですがいびつな形をしています。
大きさが10kmから二十数kmと月の3000km以上に比べてずっと小さい衛星です。
そんな小さいところに行こうとしているんですね。
そもそも日本の探査機が火星に行くのも初めてですね。
実は1998年に一度だけのぞみという探査機を火星に向けて飛ばしたことがあるんですが残念ながら失敗に終わっています。
片道でも成功していないのに、往復しようとしているんですね。
できるのかなとも思いますし7年後はそんなに時間がないですね。
非常にこれは大きな挑戦だろうと思います。
私も最初に聞いたときは本当かなと正直思いました。
専門家による検討チームは技術的には可能だというふうに言っています。
というのもこれは、一から技術開発するのではなく日本が誇る、はやぶさなどの技術や経験などを生かせるからだとしています。
はやぶさは小惑星に行きましたね。
どうこれと関係しているんですか。
実は火星の衛星というのはどうしてできたのかまだはっきり分かっていないんですが、有力な説の1つがもともと小惑星だったというものなんです。
小惑星というのは火星と木星の間の小惑星帯というところにたくさんあるんですがこれが何らかの理由で移動して火星の引力につかまって周りを回る衛星になったのではないかということです。
小惑星が移動したと。
小惑星の移動はなかなかピンときませんが、はやぶさが行った小惑星イトカワも、もともと小惑星帯にあったものが地球に近い軌道に移動してきたものだといわれています。
イトカワ、地球に近いんですね。
近いところまで来る軌道だったんです。
それよりは今回は遠天体ということになってはやぶさやはやぶさ2で培ってきたいわば小惑星からのサンプルリターン技術というのが生かせる。
ですから火星のそばにある小惑星を目指したはやぶさ3のような計画だとみると分かりやすいかもしれません。
小惑星では成功していますね。
実際はやぶさで使われたイオンエンジンを使うということも検討されています。
もう1つあります。
先日この番組で月面着陸を目指すSLIMという探査機を紹介しました。
SLIMはこれまでの各国の探査機に比べて、ずっと正確に月面の狙った位置に着陸する技術を開発しようとしています。
ピンポイント着陸の技術これも応用がきくということです。
こうした技術を使うんですがそれでも火星そのものにもし着陸しますと引力を振り切って再び離陸することは大変なことなので地球まで戻ってくるというのは現在の技術では戻って来られません。
火星ではなくそれよりも引力が弱い小さな衛星をねらうというのがこの計画の1つのポイントでもあります。
それで衛星ということなんですね。
そもそも火星の衛星に行く目的はなんでしょうか。
何のためにいくのかいくつか目的であります。
まずは火星と衛星の成り立ちそのものを調べること。
本当に小惑星だったのか、あるいは昔、何か天体が火星にぶつかってそのかけらでできているのかなどいろいろ長年の論争になってきたことも地質サンプルを持って帰って直接みれば、決着がつきます。
そして火星の衛星には長年火星から放出された微量な物質がたまっているので、それを調べると例えば大昔、火星には海があったのかとか火星の歴史をひもとく手がかりにもなるんです。
火星の環境を観測する拠点にもなるわけですさらに将来、火星には今の宇宙ステーションのように国際協力によって人を送り込む火星有人探査という構想もあるのでそういうときには火星の衛星が中継基地としても重要視されてくると思います。
火星と衛星そのものの話なんですけれどもこれから、もし本当に小惑星だったら私たちの地球の成り立ちにも大きく関わってくるということなんです。
実は地球の水は小惑星によって運ばれたという説があるんです。
というのは地球ができたのは46億年前、そのころは地球はとても温度が高かったのでもし、もともと水があったとしても多くは蒸発、分解して宇宙に逃げてしまったのではないかという可能性があります。
そうすると、今、地球の海ですとか私たちの体の中にある水というのは地球ができてしばらくたってから、あと天体衝突があって持ち込まれたものではないかといわれています。
以前はすい星、ほうき星が地球に水を運んできた最有力候補だと考えられていたんですが去年ヨーロッパの探査機がすい星に着陸して調べました。
するとすい星と地球の水の成分というのがかなり違っていたんです。
それでもう1つの候補であった小惑星が地球の水の起源ではないか、という見方が今有力になってきているんです。
小惑星は岩の塊のようなものだと思っていましたが水があるんですか?確かに液体の水がじゃぶじゃぶあるということではないですが小惑星には岩石だけではなくいろいろなタイプがあることが分かってきました。
例えば、水の氷ですね。
あるいは炭素、そしてミネラルという生命に欠かせないような物質をたくさん含んでいるタイプも多いんです。
火星の衛星を望遠鏡で観測した光の反射の具合などからあるいは氷を含んだタイプの小惑星ではないかというふうな期待をされています。
ですからサンプルを持ち帰って調べると、地球の水の起源が分かるかもしれないんです。
ひょっとしたら私たちの体の中に小惑星からきた水も含まれているかもしれませんよね。
そうなると今後この計画、どう進みますか。
現時点ではこれは、まだJAXA内部の計画案という位置づけなので関係者は今後具体的な検討を進めて来年度中に国の正式決定を目指したいとしています。
そのためには技術的にクリアしなければいけない課題も多いですがあわせてコストダウンも課題になっていきます。
というのはこういう宇宙開発の計画で認められる国の予算は大体300億円程度だといわれています。
これまでにアメリカとか火星探査をやった実績でいうとその数倍かかることが多いんです。
ですから、例えばはやぶさなどで培った技術を最大限活用ということも合わせて打ち上げのためのロケット自体のコストダウンも必要です。
といいますのは今日本の主力ロケットH2は打ち上げに1回100億円ぐらいかかります。
国際的にも高いほうです。
300億円の予算の中で打ち上げだけで3分の1使ってしまいます。
今JAXAは、次の主力ロケットのH3の開発を行っています。
これを予算、半分にすることを目指しています。
火星探査計画の実現のためにもこれは必要です。
この計画、日本の科学技術が世界をリードするものです。
はやぶさのように子どもたちに夢を与えられるプロジェクトになる可能性もありますので高いコストをかけずに実現できれば大きな意義があると思います。
きょうは七夕です。
お天気が心配ですが夜空を見上げる機会があったら火星にも思いをはせてみるのもいいですね。
土屋敏之解説委員でした。
次回は三輪誠司解説委員と共にお伝えします。
ぜひ、ご覧ください。
2015/07/07(火) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「火星に往復!?日本の探査機」[字]
NHK解説委員…土屋敏之,【司会】岩渕梢
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出演者
【出演】NHK解説委員…土屋敏之,【司会】岩渕梢
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ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
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