【中継】受賞会見 再生ボタンを押してください
[PR]

 お笑いコンビ「ピース」のボケ担当。口数は少ないが、内省的でマイペースな言動は、騒々しいテレビ画面では、むしろ独特の存在感を放つ。

 今やレギュラー番組を持つ売れっ子だが、下積み時代は「お金はない。年はとる。将来はいつも怖かった」。受賞作は、かつての自分を重ねた青春小説だ。詩やエッセーには定評があったが、長編小説はこれが初めて。お笑いに夢を懸ける若者の、うだつのあがらない日々を活写した。

 幼い頃から、自分や周囲の行動を観察していた。「一人で散歩してる俺、大人やな」。頭の中が言葉であふれ「ずっと自分で自分に向かってしゃべってる」。人とは違う、と思っていた。「異常なんかな」。ひそかに恐れていた。

 そんな少年を変えたのが芥川龍之介だった。中学の国語の教科書で「トロッコ」と出合った。主人公の内面描写に「この人もむっちゃ自分にしゃべってるやん」。以来、本が手放せなくなった。

 敬愛するのは太宰治。自意識をあえて真正面から見据えた「人間失格」に強くひかれる。「全部おもしろおかしく笑い飛ばさんでも、痛がったり悩んでもええやろ、と言ってるんじゃないですか。そこに救われる。太宰は、自分の自意識を滑稽でしょとみせられる人。レベルの高い行為で、芸人的だとすら思う」(板垣麻衣子)