(cache) 2015上半期ラノベ周辺まとめ３　早川一強が崩れ出したラノベSF

　今年のSF作品は、ハヤカワ以外からの意外な掘り出し物が多くありました。

　電撃大賞受賞作の『ひとつ海のパラスアテナ』は海洋SF+百合という組み合わせで好評を博しました。２巻以降は（主に百合方面で）パワーダウンしたという批判もありますが、電撃SFの新たな旗手として活躍する予感があります。野崎まど待望の新作『独創短編シリーズ　野﨑まど劇場（笑）』では、タイポグラフィを駆使した短編に加え、なろうブームを皮肉った短編「お医者さんになろう」も。

　ガガガ文庫の『あの夏、最後に見た打ち上げ花火は』は、ファミ通文庫から出ていそうなジュブナイル恋愛に時間SFの要素を振りかけた佳作。角川スニーカーからは、kindleで先行連載されていた『テスタメントシュピーゲル２』の書籍版が５年ぶりに発売されました。

　キャラノベ/ソフトカバーラノベでは、『マレ・サカチのたったひとつの贈物』『螺旋時空のラビリンス』などの意欲作が登場。

　デビュー作『天盆』が大絶賛され早川書房の伊藤計劃トリビュート企画にも抜擢された王城夕紀『マレ・サカチのたったひとつの贈物』は、転移能力者の女性を主人公に、資本主義が終焉を迎えようとする未来世界を描き出したSF。本年度最強の新人デビュー作との呼び声も高い『螺旋時空のラビリンス』は、キャラノベレーベルから超本格的な時間SFを出したと話題になりました。

マニア人気の高い石川博品の星海社完全新作『明日の狩りの詞の』は、宇宙生物をハンティングする高校生を描いた単発作。アニメのチープな演出が大炎上を招いた『ニンジャスレイヤー』書籍版は、第三部に突入。ニンジャスレイヤーが野球対決をする忍殺きっての狂気回「ノーホーマー・ノーサヴァイヴァー」が早速収録決定しヘッズが騒然となりました。タイトルをレイ・ブラッドベリの作品からとった『ウは宇宙ヤバイのウ！～セカイが滅ぶ5秒前～』でSFマニアから注目された宮沢伊織の創元SF短編賞受賞作『神々の歩法』は電子版がヒットしました。『幻想再帰のアリュージョニスト』が一部のSFマニアから注目を集めている最近の商業デビュー作にしてアリュージョニストのスピンオフ作である『アリス・イン・カレイドスピア』は、大方の予想通り、やはり、星海社から発売。