(池山樹里・ナレーション)
昼の忙しさが夜のにぎわいに変わる頃
都会の喧騒の奥の奥
この店はその日唯一のお客様を出迎える
ここを訪れることができるのは今まさに人生の岐路に立たされた人だけ
店の名前は「LeBonVivre」
フランス語で「よき人生」
いらっしゃいませ。
(綾子)どうも…。
網本様ですね?
(綾子)はい。
お待ちしておりました。
どうぞ。
扉が閉じられる
それから数時間の後…
あの…。
これをお預かりしました。
と…ここまでの物語
ここはこの世から失われた料理を再現することができるレストラン
ここで振る舞われる料理は立ち止まってしまった人生を再び動かす力を持つ
それは始まりの飯「シメシ」と呼ばれている
どうぞ。
メールで何度かやり取りさせていただいたオーナーの池山です。
どうも。
いろいろご協力ありがとうございました。
いえ。
それでは早速ですがこちらのメニューを。
今回網本様がご希望する料理はこちらで間違いございませんか?はい。
網本様がこれを食されたのは23年前の1992年。
私が15歳のときです。
かしこまりました。
それでは本日は「グラン・タカシマのオムライス」を再現しご提供させていただきます。
お願いします。
(小瀬清)網本綾子38歳。
演歌歌手。
デビューは18歳。
21歳のときに出した曲「巣鴨の恋」がスマッシュヒットを記録しました。
が…ヒット曲はその1曲だけで最近は新曲を出すこともなく地方での営業活動でなんとか続けているようです。
(寺屋敷錬一)うん…。
(綾子)営業が入るとか入らないとかはっきりしなくて。
ほんと嫌になっちゃう。
差し支えなければなぜこれを召し上がりたいのかお聞かせ願えませんか?私には両親の記憶がほとんどありません。
父は私が生まれる前に事故で亡くなり母は私が5歳のときに病気で…。
(祖父・回想)おう!綾子!
(綾子)じいちゃん!
(祖父)ははっ。
ちょうど一緒になったな
(綾子)そんな私を育ててくれたのは祖父でした。
あっ汚ぇぞいいよいいのか
(綾子)正直うちは裕福な方ではありませんでした。
祖父は小さな町工場で働いていましたが当時は不況のあおりもあり…。
食べなじいちゃんは?いや〜じいちゃんね卵ダメなんだようそほんと。
ガキの頃さ卵食ったらさもうおなかが痛たたた…ってなっちゃってさええ〜?だから綾子が食べなもうだまされないよ。
はいこれじいちゃんの分どうだ?うまいか?
(綾子)うんおいしい!
(綾子)祖父はいつも笑顔で接してくれました。
私はそんな祖父が大好きでした。
そして祖父は歌が大好きな人でした。
「・いのち短し恋せよ乙女」と…はははっ
(綾子)・あかき唇
(綾子)・あせぬ間に綾子なんでこんな歌知ってんだよ?じいちゃん毎日歌ってるから嫌でも覚えるよははっそうか
(綾子)うんうまいな!ほんと?
(祖父)もっと歌ってくれようん・いのち短し・恋せよ乙女
(綾子)・あかき唇
(綾子)・あせぬ間に
(綾子)そして私は祖父の勧めで町の小さなコンクールに出場しました。
(祖父)頑張れ綾子!
(「ゴンドラの唄」)・いのち短し・恋せよ乙女・あかき唇
(綾子)私の歌でうれしそうに笑ってくれる祖父の笑顔が好きでした。
(祖父)いいぞ綾子!
(綾子)・熱き血潮の
(綾子)・冷えぬ間に・今日はふたたび・来ぬものを
(場内拍手)綾子な上手に歌ってたぞお前たちも褒めてやってくれ。
なっチーン
(鈴の音)そしてしばらくたってから…祖父が優勝したご褒美にとあるレストランに連れていってくれました。
じいちゃんほんとにいいの?だって綾子頑張ったもんなあっ少々お待ちください
(祖父)えっ?申し訳ございません。
ただいま満席でして
(祖父)いやだってほら空いてるじゃんああ…あちらはご予約のお席で
(祖父)あっそう…
(祖父)すみませんせめてこの子だけでも
(綾子)じいちゃん
(祖父)お願いしますよ申し訳ございません
(祖父)お願いしますよ
(綾子)じいちゃんもういいよ。
じいちゃんと食べたいもん
(祖父)ああそう?
(綾子)うん
(店内BGM)
(店員)あっお客様!あっ…今ですね急遽ご予約のお客様にキャンセルが入りましてえっ?どうぞこちらへ何にいたしますか?えっ?ははっ…。
難しいな…。
綾子は?う〜ん…
(綾子)これ綾子はそれがいいのか?うんじゃあオムライス2つかしこまりました。
失礼いたしますじいちゃん卵嫌いじゃなかったの?ふふっ…今日はねなんとなく綾子と同じのが食べたかったんだよふふっ変なじいちゃんはははっ「卵嫌いじゃなかったの?」なんて言って…。
ふふっ…。
で…熱々のオムライスが運ばれてきたんです。
すっごくキラキラして見えて…。
(店員)「グラン・タカシマ」特製オムライスでございますおお…
(店員)ごゆっくりどうぞ特製オムライスだってじいちゃんおいしい!うん!うまい!ふふっ。
おいしいねうんそんな祖父も昨年他界してしまいました。
私の歌はもう誰にも求められていません。
いちばんのファンだった祖父もいないのですから…。
私は歌う意味を見失ってしまいました…。
そんなことを考えていたら祖父と食べたオムライスを思い出して…。
おいしそうに食べるじいちゃんの顔を…。
分かりました。
それでは調理に入らせていただきます。
小瀬君よろしく。
はい。
「グラン・タカシマ」は2001年に廃業していますが書庫にレシピが残されていました。
この店には食に関するさまざまな文献を集めた書庫が存在する
出版された本に限らず歴代のシェフたちが日本全国を食べ歩き独自に収集したさまざまな飲食店のレシピなどもファイリングされている
更に念のため関係者を捜したところ当時レストランのマネージャーをされていた方に接触することができました。
非常に協力的な方で食材の仕入れ先ルートも教えていただきました。
そのルートから割り出した食材がこちらです。
小瀬。
はい。
今日はお前が作ってみるか?えっ…。
いや…そ…そんなダメですよ無理ですよ。
えっマジですか…。
ははっ冗談だよ。
なんだ…びっくりした…。
よし。
やろう。
うん。
お待たせしました。
オーダーいただきました「グラン・タカシマのオムライス」です。
どうぞお召し上がりください。
じいちゃんおいしい!うん!うまい!おじいちゃん…。
(綾子)やっぱりおいしいね…。
いかがでしたか?本当に…おいしかったです。
何よりです。
感謝の気持ちを伝えたいのでシェフを呼んでいただけますか?かしこまりました。
シェフの寺屋敷とセカンドの小瀬です。
小瀬です。
本当にありがとうございました。
おいしかったです。
今回ですねレシピを再現するにあたってある方のご協力をいただきました。
ある方?はい。
今回のご依頼を受けてレストランの元マネージャーだった方にお会いしたんです。
(野村)それにしても…懐かしいなぁ。
懐かしい?私ね偶然会ってるんですよお二人に。
会ってる?
(綾子)・いのち…
(野村)
うちの娘もコンクールに出場してましてねそしたら…。
これはもううちの子はダメだなと思いましたね
(祖父)いいぞ綾子!
(綾子)・あかい唇
(野村)
私…写真が趣味でしてねあまりにも隣の方がいい顔をされてたのでつい…
カシャ!
(シャッター音)
(野村)あっ…すみませんつい…いえ。
すみませんうちの孫なもんですから
(野村)ああ〜。
どうぞ使ってくださいありがとうございますそれから何日かたって…。
あっ少々お待ちください
(祖父)えっ?
(店員)申し訳ございません
(綾子)じいちゃんもういいよ
(祖父)そう?
(綾子)うん
(店員)ふぅ…柴田君。
何やってるんだ君ははい?今のお客様すぐ呼び戻してきてでも…いいんですか?いいに決まってるだろはい…ふふっ…おいしい!うまいね!うんその方こう言ってました。
私はあの日からず〜っと網本さんのファンです。
もちろん2番目のファンですがね。
これからのご活躍も楽しみに…待ってますとどうかお伝えください。
いましたね。
えっ?歌を届けるべき人が。
はい。
どうぞ。
あの…。
これをお預かりしました。
(綾子)ありがとうございました。
これがその日「LeBonVivre」で起こった物語
おやじが作った焼きそばを再現する。
東京じゃあ珍しい焼きそばってなんですかね?この焼きそば…。
もしかして…。
全部話す決心できました?よし。
うん。
2015/07/06(月) 01:00〜01:30
MBS毎日放送
ドラマ「シメシ」 第3話[字]【村上淳×林遣都×愛加あゆ】
「グラン・タカシマのオムライス」▼人には誰でも忘れられない味がある…『もうこの世には存在しない料理』を再現する不思議なレストランがあったら、何を注文しますかーー
詳細情報
◎このドラマは…
レストラン「ボンビーブル」ここでは特別な料理を振る舞っている。
それは『もう、この世にもう存在しない料理』
ーー「亡き祖母の手料理」「今は跡形もなくなった老舗レストランの料理」「材料がもう取れなくなった幻の料理」など…
葛藤や悩みを抱え人生の岐路に立たされた人達は、ここで再現された料理を食べることによって、再び、前を向いて新しい人生を歩み始める。
“始まりの飯”=「始飯(シメシ)」なのだ
番組内容
網本綾子(田畑智子)は演歌歌手。彼女は早くに両親を失い、祖父・網本勝男(ミッキー・カーチス)に男手ひとつで育てられてきた。かつて、その祖父に食べさせてもらった高級レストランのオムライスを思い出し、それを食べたいと「ボンビーブル」を訪れるのだった……。
出演者
寺屋敷錬一(「ボンビーブル」・シェフ)…村上淳
小瀬清(「ボンビーブル」・アシスタントシェフ)…林遣都
池山樹里(「ボンビーブル」・オーナー)…愛加あゆ
網本綾子…田畑智子
網本勝男…ミッキー・カーチス
ほか
スタッフ
【監督】小川弾
【脚本】金沢知樹
【企画プロデュース】大澤剛
音楽
【主題歌】
Ms.OOJA「花」
制作
【製作】シメシ製作委員会/MBS
おことわり
番組の内容と放送時間は変更になる場合があります。
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 音声解説
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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