日曜美術館「レオナルド・ダ・ヴィンチ 幻の戦争画大作」 2015.07.05


去年春一枚の板絵を見るために世界中から美術研究者たちがフィレンツェに集まりました。
その絵とは幻となったレオナルド・ダ・ヴィンチの戦争壁画「アンギアーリの戦い」の下絵ではないかと言われています。
長らく海外に流出していました。
レオナルドが壁画に取り組んだのは1503年。
しかし完成する事なく…その謎に満ちた絵は今でも多くの人を惹きつけています。
幻の壁画の重要な手がかりと考えられるこの下絵はいつどういった技法で描かれたのか。
分析調査の結果が報告されました。
一連の調査の結果技法や材料については16世紀前半のフィレンツェで使われていたものに完全に適合する事が分かりました。
度重なる修復で騎士の体の一部や馬の足などオリジナル部分が削られた箇所もありレオナルドの直筆かどうかについては結論が出ませんでした。
この板絵はミステリアスな謎を秘めていてレオナルドの「アンギアーリの戦い」の最も重要な絵画的証拠でしょう。
レオナルドが「アンギアーリの戦い」の壁画に取り組んだのは「モナ・リザ」と同じ時期。
まさに画家としての円熟期でした。
もし完成していれば間違いなく代表作となった作品。
どのような絵になるはずだったのかその謎に迫ります。
はぁ…。
ああ…。
こちらですね。
はぁ…何と勇ましい。
勇ましいというか…。
激しいですね。
「日曜美術館」です。
今回は「レオナルド・ダ・ヴィンチと『アンギアーリの戦い』展」に来ています。
実はこの作品はレオナルド・ダ・ヴィンチの幻の大壁画といわれている「アンギアーリの戦い」のさまざまな謎に迫る最も重要な手がかりとして長らく注目されてきました。
この作品初めて日本で今公開をされています。
レオナルド・ダ・ヴィンチといえば「モナ・リザ」や「受胎告知」のような静かで神秘的な印象があったんですけれどもこんなドラマチックな絵を描こうとしていたなんでほんと驚きました。
そうですね。
もしレオナルド・ダ・ヴィンチの未完の壁画が完成していれば一体どのような作品になったのか。
今回は多く残されているさまざまな記録や素描を通してその実像に迫っていきます。
レオナルド・ダ・ヴィンチが活躍したルネサンスの都…街の中心シニョーリア広場に面して建つのが市の庁舎である…昔から政治や行政が行われてきました。
この大広間の壁に描かれるはずだったのが大作「アンギアーリの戦い」です。
今は別の画家の戦争画が描かれています。
レオナルドが挑戦した戦争画とはどのようなものだったのでしょうか。
レオナルドがおよそ20年ぶりにミラノからフィレンツェに戻ったのは50歳近くになった1500年でした。
既に「最後の晩餐」で高い名声を得て画家としての円熟期を迎えていました。
当時のフィレンツェはそれまで権力を握っていたメディチ家が追放され市民たちの手による自由で民主的な新しい国づくりを目指していました。
議長に就任したピエロ・ソデリーニはヴェッキオ宮殿の大広間の壁に民主的国家の象徴としての壁画をレオナルドに依頼したのです。
選んだテーマはおよそ60年前フィレンツェが宿敵ミラノに勝利した「アンギアーリの戦い」。
そしてその横にもう一枚の壁画が発注されます。
引き受けたのは当時注目され始めた若手芸術家ミケランジェロ。
この時28歳。
互いにライバル心を燃やしていた二人の天才の対決。
大きな話題となりました。
レオナルドはサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の教皇の間で下絵の制作を始めます。
戦争画の大作を描くのは初めての挑戦。
絵の構図をどうすべきか深く考え続けるレオナルド。
半年以上たっても遅々として絵が進みませんでした。
これに業を煮やした共和国政府がレオナルドに出した督促状です。
「既に月々の報酬を支払っているのになぜ画稿が完成しないのか」。
催促と期限が言い渡されます。
レオナルドはどのような場面を描こうとしていたのか。
その手がかりとなるさまざまな素描が残っています。
軍旗を奪い合い両軍入り乱れて争う場面。
剣を振り上げ戦う兵士の姿。
前足を大きく跳ね上げる馬。
疾走する馬と騎士。
援軍でしょうか。
行進する騎馬隊の列。
戦場のダイナミックな動きを感じさせる素描の数々です。
こうした戦争のイメージをレオナルドは手記の中にこう書いています。
「敗れた者の顔は青白く眉は高くしかめその上には悲痛なしわが一面に寄せられている。
弓形をした口は上の歯をあらわにし号泣まじりの叫び声を出しているかのように引き離されねばならぬ。
敵に武器を奪われ打倒されながらその敵に立ち向かって歯と爪で残虐で激しい復讐を試みるものも見えて差し支えない」。
「死んだ馬の上には多数の人間が累々と折り重なって倒れているのが見えたに違いない」。
レオナルドは戦争や戦闘について明確なコンセプトを持っていました。
それは獣のような狂気です。
特に人間と馬を主役に据えて「怒り」の感情を大画面にぶつけました。
それはフィレンツェ軍の勝利の様子ではなく敗北したものの憤怒の感情に焦点を当てています。
そうした激しい感情の動きを馬と人間のダイナミックな運動の表現によって効果的に表したのです。
残された素描を基に壁画「アンギアーリの戦い」の全体構想を考えてみます。
中心部分には軍旗争奪の場面。
右側にはフィレンツェの援軍の隊列が。
そして左側には敗走するミラノ軍と殺戮の場面。
激しく肉体と感情がぶつかり合う戦争のむごたらしさ。
その徹底的なリアリティーを探究しまるで映画のような臨場感を込めた画面にしようとしていたのです。
そんなレオナルドの絵に対して隣に描かれようとしていたミケランジェロの壁画はどんな絵であったのでしょうか?これはその下絵の模写です。
ピサとフィレンツェの戦いを題材にした絵ですがちょっと変わっていました。
ミケランジェロは勇壮な戦いの場面ではなく突然の敵の襲来に水浴びしていた裸の兵士たちが慌てふためく様を描こうとしたのです。
それは裸体彫刻の見本のような内容でした。
遠くを指さし敵の襲来を告げる者。
急いで衣服を着けようとする者。
さまざまな筋肉の動きが見事に表されています。
ミケランジェロはなぜ戦闘の場面ではなく違った視点で戦争を描こうとしたのでしょうか。
ミケランジェロが描いた当時の素描が残っています。
上に描かれているのはレオナルドの軍旗争奪の場面のようです。
その下に「カッシナの戦い」の兵士たち。
二つの絵が並んだ時の事を考えていたようです。
尊敬する大先輩と似た戦闘場面になる事を避けるためか。
それともライバルレオナルドへの挑戦だったのか。
レオナルドとミケランジェロは事実ライバルでした。
二人は生い立ちも違い絵のスタイルも違い芸術家としても性格も違っていました。
でもミケランジェロはレオナルドに一目置いていたようです。
もし二人が描いた絵が今残っていればまさに「世界の学校」と言えるものになっていたでしょう。
今回のゲストをご紹介しましょう。
どうぞこちらへ。
中世ルネサンスの美術と歴史にお詳しい樺山紘一さんです。
どうぞよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
樺山さんまずとにかくこの作品本当に勇ましい絵ですよね。
そうですよね。
これまでも話題になってきた作品なんですけども私も実は現物見るの初めてです。
あこういう作品なのかなという事を改めていろいろな事を考えさせられました。
この「アンギアーリの戦い」というのはフィレンツェ軍とミラノ軍の激しい戦いを描いているそうですけれども当時のイタリアというのは一体どのような状況だったんでしょうか?15世紀または16世紀のイタリア大変政治的にはいろいろな混迷状態にありました。
一つ一つの国がそれぞれ都市国家をつくってましてねそれぞれの軍備を持っていると。
この軍事力が大変大きな役割を果たしていたという。
考えさせられますよね。
この「アンギアーリの戦い」それ自体は1440年という年に起きたと考えられておりましてやっぱり当時としてはこういう形でもって具体的な兵士たちが自分たちの国の都市国家の運命を決めるんだとそういう事を証明していると。
そういう絵なんだと思いますね。
1502年レオナルドはイタリア中部を支配しようとしていたチェーザレ・ボルジアの下で軍事技師として働いていました。
チェーザレは野心に満ちた若き指導者。
勇猛な戦いぶりで支配地域を拡大していました。
彼はレオナルドを信頼し武器や要塞の設計を任せ常に行動を共にしていたといいます。
この時レオナルドは戦争の現実を目の当たりにしていたのです。
レオナルドは軍事技師として武器の使い方やその威力戦争の道具に関しては深い経験がありました。
彼は兵士ではなく参謀としてさまざまな場面で兵士の動きや戦いの作戦などを研究する人間です。
知能はずばぬけていてしかも画家です。
そのおかげで合戦の様子を詳細に想像する事ができ最も効果的な方法で表現したのです。
「アンギアーリの戦い」を表す軍旗争奪の場面。
実際の戦いにはどのような物語があったのでしょうか。
フィレンツェから南東へおよそ70キロ。
戦いの舞台となったアンギアーリの町があります。
石造りの壁に囲まれ今でも中世の面影を残しています。
この町から見下ろす平原がかつて戦場となりました。
フィレンツェと教皇の連合軍に対して敵方ミラノ軍を率いるのはその名をとどろかせていた傭兵隊長ニッコロ・ピッチニーノ。
2,000の騎兵を従えて合戦を挑みます。
両軍一進一退の攻防が続いたあと連合軍が優勢となり散り散りに逃げるミラノ軍は次々殺されました。
この絵はミラノ軍の象徴である軍旗を奪い合う騎士同士の壮絶な戦いの場面です。
剣を振りかざし激しく叫ぶピッチニーノ。
軍旗を必死に守ろうとするその息子フランチェスコ。
それを二人のフィレンツェ軍の騎士が追撃しています。
レオナルドは戦場のリアルさを出すためにぶつかり合う馬や足元で死闘を繰り広げる二人の兵士を大胆に描き戦いの激しさをより強調しています。
更にこの絵の特徴はミラノ軍の敵将ピッチニーノを主人公に描いている事です。
ピッチニーノが負けた事は政治的に大きな重みを持つものだったのです。
フィレンツェはミラノ軍に勝っただけではなく当時一番有名な指揮官の一人を負かしたのです。
それが重要なポイントなのです。
それはフィレンツェにとって宿敵ミラノを倒した歴史的な叙事詩となるからです。
敵将を主人公にした緊迫感あふれる戦争画はかつてありませんでした。
レオナルド以前に描かれた「アンギアーリの戦い」の絵と比べてみます。
ここにも軍旗争奪の場面が描かれていますが色とりどりの衣装で戦う兵士たちの姿はまるで祭りのような華やかさを感じさせます。
これまでの戦争画は様式的で装飾的な表現の作品が多かったのです。
それに対してリアルな戦場の臨場感を目指したレオナルドの「アンギアーリの戦い」。
それは紛れもなくルネサンスという新しい時代の幕開けとなる戦争画のはずでした。
あっこれも「アンギアーリの戦い」を描いているんですよね。
でも随分鮮やかなというかにぎやかなというか。
よく色が残ってますよね。
真ん中の下の方には倒れている人物と馬も倒れているんですけれども真ん中の辺りは軍旗争奪が行われてますよね。
でもなんかこう全体からはここから人間同士が殺し合う憎しみとか怒りとかそういった感情はなかなか感じ取られないですね。
そうですね。
やっぱりこの時代まで戦争というのは騎士たちが整列して集団になってお互いに両軍が戦い合うというそういう性格だったんですね。
どことなくほんわかとした雰囲気が見えてますよね。
ダ・ヴィンチが戦争画を描くという事はダ・ヴィンチは一体戦争の何を表現したかったのか…。
レオナルド・ダ・ヴィンチという人はもともとその当時からして軍事技術家と思われてました。
だからこれ見るとやっぱりね戦争がやっぱり激しいものでもあるけれどもそんなにリアルに迫ってくるって感じがしませんけれどもね。
でもレオナルドらしいアンギアーリになりますとやっぱりぐっと迫ってくるものがある。
その時には当然激しい殺し合いがあったりあるいは激しい打ち合いがあったりというそうしたものとして作品が描かれてますので。
だからこれ見るとやっぱり戦争だなというリアリティー現実感が違うなという感じがしますよね。
やっぱり現実に起こっている戦争が随分レオナルドたちにとっては見え方が違ってきたんでしょうね。
「アンギアーリの戦い」を描いていた頃レオナルドが夜ごと通っていた場所がありました。
病院の地下室です。
実はこの部屋でレオナルドは人体解剖をしていました。
「人はどのようにして手足を自由に動かせるのか」人間そのものを徹底的に見つめようとしました。
解剖の必要性についてこう書いています。
「裸体の人々によってなされる姿勢や身振りを上手に描くためには腱や骨や筋肉の構造を知るための解剖が画家には必要である。
さまざまな運動や力にとっていかなる腱もしくは筋肉がその運動の原因となっているのか。
またこうした関係を大きな動きにつなげているものを知るためである」。
レオナルドの人間への飽くなき探究心と好奇心は彼独特のものでした。
「最後の晩餐」を描いていた頃レオナルドは街へ出てはさまざまな人物の表情や人相をスケッチしています。
老人と若者の顔の違い。
顎が長い鼻が大きいしわが多いなど個性的な顔だち。
驚き怒り笑う。
感情によって変化する表情を徹底的に観察分析しています。
「最後の晩餐」はレオナルドにとって新しい実験でした。
「アンギアーリの戦い」と同じように登場人物たちの一瞬の心の動きを的確にそして演劇的な手法で表現しようと試みています。
イエスが発した言葉に波紋が広がりそれぞれが驚きや悲しみ苦悶の表情をします。
大きく両手を広げる者。
嘆くようなまなざしで見つめる者。
後ろ手にナイフを隠し言葉を確かめる者。
表情がどのような動作とつながっているのかその一瞬の動きを再現してみます。
こうした感情の微妙な揺れ動きをレオナルドは表情と動作で見事に表現したのです。
レオナルドは手記にこう書いています。
「人物画は一瞬にしてその人が何を考え何を言っているのか分かるようにそれぞれの働きにぴったりした動作を持つべきである」。
人物の感情を表す演劇的な表現手法や人体への興味は「アンギアーリの戦い」にも生かされました。
「アンギアーリの戦い」の習作でも顔の表情を作るのに筋肉がどう動くのかを細かく研究しています。
そのためにレオナルドは表情筋の解剖まで行いました。
これは怒りの筋肉です。
こっちのは痛みの筋肉。
これらが感情表現をつくり出すための筋肉です。
絵の左側のミラノ軍は気持ちが高ぶって激しく乱れた表情をしています。
一方右側のフィレンツェ軍は勇猛果敢が特徴であり感情が乱れる事はありません。
動きや感情も統制が取れています。
つまり人相学や解剖学の研究によって感情的な高まりや動きが見事なリアリティーで表現されているのです。
また同じ時期にレオナルドはフィレンツェ近郊の地形を調査し水の研究もしていました。
アルノ川の流れを変えて敵であったピサに洪水をもたらすという戦略的な計画のためでした。
実はこの水の研究も絵に関係していたのです。
洪水の多いフィレンツェで怒とうのような水の流れを何度も目にし素描に描いていました。
美しい川が突如豹変し暴力的な水の塊となって突き進む様はどこか人間の荒々しい感情の高まりと共通している事。
ぶつかり合い渦巻く動きこそ激しいエネルギーの源だと考えたのです。
(ラウレンツァ)レオナルドにとって渦巻く形はまさに命のエネルギーとつながっていました。
水の渦はどうやって出来るのか。
水が勢いよく流れてくる時その力が何かに邪魔されると渦が出来ます。
「アンギアーリの戦い」でも同じような現象が見られます。
つまり軍の兵士たちが旗を奪おうとしていますね。
ミラノ軍はそれを取られまいとしている。
ある勢い力が別の動作で邪魔され遮られたわけです。
この遮られた動作が渦のような運動の表現を生み出しているのです。
レオナルドは自然のあらゆる現象の中に関連性や類似性を見つけ絵に取り入れたのです。
「アンギアーリの戦い」にはどのような動きの表現が隠されているのか。
素描などを手がかりに3次元のCGが作られました。
このミラノ軍の騎士を見て下さい。
旗ざおをつかみ体をねじってさおがてこになってフィレンツェ軍の騎士たちを馬から落とそうとしている事が分かります。
またこうした長い棒を持った兵士の素描があります。
ここにも動きが想像できます。
これに川を飛び越える動きをつけてみました。
素描を丹念に見ていくと人間のいろんな動きの要素がありまるでレオナルドの想像の世界を旅するようでとても感動的でした。
東京藝術大学では軍旗争奪の場面の立体復元を試みました。
4頭の馬4人の騎士などそれぞれを忠実に復元し彩色しました。
立体化する事でよりレオナルドの制作意図が理解できるようになったといいます。
「アンギアーリの戦い」でまずこういうふうに立体化してみるとですね視点がどんどん増えていきますので全体像がまず見えてくるというのはあるんですがやはり絵ですので瞬間瞬間の切り取った姿だとは思うんですけれどもやはりそういった中には過去と現在と未来という時間の前後関係を同時に表現してますので写真を切り取ったようなものではなくてですね時間が流れるような前後するような雰囲気をですね何とか伝えようとしているのではないかなと思いますね。
レオナルドは動きや時間の連続性を表現しようと挑んでいるという北郷さん。
更にもう一つ発見がありました。
彫像を上から見ると4頭の馬は右から左へ回転するような動きがある事が分かりました。
水が渦巻くような動きです。
人間や生き物の激しい動きに対するレオナルドのこだわり。
それは素描の中にも出ています。
格闘する男たちの動作や姿勢を角度を変えて試行錯誤を繰り返している事が分かります。
鬼気迫る状況下の中で迫力のある人間の動きというのは一体どのような動きなのかというのをかなり探っていろんなスケッチをしているというのが伝わってきますね。
多分レオナルドはこのために何十枚と描いたに違いないんですけれども少しずつずらしながら。
で結局人間の筋肉とかあるいは人間の手足とかいろいろなものがどういうふうに動くのかという事もとことん詰めて考えたんでしょうね。
それが画面でどんな形だったら適合するかというふうにいろんな事を試していったというそういう結果だと思いますよね。
この素描など見てますと単なる人体の動きだけに執着したものではないとさえ感じてきますよね。
やっぱりレオナルドとしては人体も自然もあらゆるものが動いていくその瞬間瞬間をこういう形でもって描き留めるという。
これが画家としても科学者としても本来の任務だとそんなふうに考えたんだと思いますね。
レオナルド・ダ・ヴィンチの代表作「モナ・リザ」。
この絵が描かれたのは「アンギアーリの戦い」とほぼ同じ時期でした。
神秘的で静かなほほ笑みをたたえる「モナ・リザ」。
そんな肖像画を描く一方で20m近くもある壁面に激しい感情の渦巻く戦いのドラマを描こうとしていました。
レオナルドは「静」と「動」という二つの異なる世界に挑戦していたのです。
しかし「アンギアーリの戦い」は未完に終わりました。
なぜでしょうか?「13時を期して私は市庁舎ヴェッキオ宮殿の絵に着手した。
私が最初の一筆を下ろそうとした時天候が悪くなった。
画稿は破れ人々が運んできていた水がめが壊れた。
かくのごとく急激に天候が悪化してしまい夕方までどしゃ降りの雨が降りまるで夜のように暗かった」。
レオナルドは未完の原因に天候の異変を挙げています。
更に技法にも問題があったのです。
研究者のアントニア・バルビさんがその技法の失敗を再現してくれました。
それは古代ローマの技法を参考にした油彩技法で簡単に剥がれ落ちないような工夫をした塗り方でした。
絵の具を壁の漆喰に染み込ませるために火を入れた桶であぶっている時の事でした。
突然絵の具が流れ出したのです。
レオナルドがこの壁画の制作で技術的に失敗した原因。
それは塗った絵の具の量が漆喰の壁に染み込む限界を超えるほど多かったためです。
火桶の強い熱によって余分な絵の具が溶け出してしまったのです。
「モナ・リザ」と並ぶレオナルドの最高傑作になるはずであった「アンギアーリの戦い」はこうして幻となりました。
しかしレオナルドの戦争画大作への挑戦は後の多くの画家に影響を与えました。
バロックの巨匠ルーベンスが模写したといわれる軍旗争奪の場面です。
細部にわたってレオナルドを写し取りながらもルーベンスらしい豪快な筆遣いで描いています。
模写としては一番古いといわれるザッキアの軍旗争奪の場面。
戦う4人の騎士たちが身に着けている甲冑や武器が詳細に描かれています。
他にもさまざまな画家がレオナルドに学ぼうと絵に挑戦しました。
そしてラファエロが残した軍旗争奪の素描。
わざわざフィレンツェにレオナルドの下絵を見に来たのです。
その躍動感あふれる描写に心打たれるものがあったのでしょう。
レオナルドが壁画制作を断念してからおよそ50年後同じ場所にジョルジョ・ヴァザーリが描いた戦争画。
ヴァザーリはレオナルドの絵について「驚くほどの熟慮と卓越さに富んでいる」と絶賛しています。
どこかレオナルドの軍旗争奪の場面を彷彿とさせる表現もあります。
レオナルドの挑戦は後世の画家たちにとって新しい時代を感じさせる貴重な美の遺産となったのです。
今日は「アンギアーリの戦い」がどのような絵かというのを考えながら見てきましたけれども「もし」という世界はないですけれどももしもこの「アンギアーリの戦い」が完成してミケランジェロと並んでいたらと考えるとちょっと…。
なんか想像すると身震いがしますよね。
レオナルド・ダ・ヴィンチってほんと謎が多い芸術家ですよね。
絵画だけではなくてあらゆる所に謎がたくさん潜んでいますので今回もこの作品が公にされる事によって今までの謎があちこち解けるんじゃないかと私も考えました。
また謎の数が増えたなという感じがしますので。
レオナルド・ダ・ヴィンチの研究や実験挑戦には終わりがない…。
終わりがない。
…という事なんですね。
レオナルドがかけた謎っていうのはほとんどまだ解けてないのかもしれないんで。
天才ってそういう人の事を言うのかもしれないなという気がしてなりませんね。
今回ほんとにこれを拝見しましていろんな事を考えさせられました。
レオナルド・ダ・ヴィンチが生まれたヴィンチ村。
旺盛な好奇心はこの豊かな自然の中で育まれました。
「アンギアーリの戦い」の壁画が未完に終わったあとミラノローマそしてフランスへと旅を続けレオナルドは67歳の生涯を閉じました。
人間を見つめ自然の本質を探ろうとしたレオナルド。
美へ向かう精神は最後まで衰える事はありませんでした。
2015/07/05(日) 20:00〜20:45
NHKEテレ1大阪
日曜美術館「レオナルド・ダ・ヴィンチ 幻の戦争画大作」[字][再]

レオナルド・ダ・ヴィンチが挑戦した謎の戦争画大作「アンギアーリの戦い」。世界の美術界が論争した1枚の絵画からその真実に迫ります。

詳細情報
番組内容
レオナルド・ダ・ヴィンチ 幻の戦争壁画大作「アンギアーリの戦い」。作者はレオナルド・ダ・ヴィンチか? どのような戦争画を描こうとしたのか? 下絵や素描、手稿を基に、1枚の戦争画から真実を推理する。また、ヴェッキオ宮殿の壁画には、ミケランジェロの戦争画も並ぶはずだった。両巨匠の戦争画の大作、なぜ幻となったのか? 今もなお、人々をひきつけるその魅力に迫ります。
出演者
【出演】歴史学者、印刷博物館館長…樺山紘一,【司会】井浦新,伊東敏恵

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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