激しく荒れる冬の日本海。
ここは秋田県。
この時期ならではの味覚があります。
ハタハタです。
漢字では魚偏に「」と書きます。
古くから「神様がくれた生きる糧」とされてきました。
(雷鳴)もう一つ魚偏に「雷」でもハタハタ。
冬雷が激しく鳴る季節岸辺に押し寄せるからです。
この時期海の中をのぞくと…。
うわ〜すごい数!ハタハタの大群です。
あっ卵を産んでいます。
メスが一度に産む卵の数はおよそ2,000粒。
ピンポン球ほどの大きさの塊になって海藻にくっついています。
冬岸の近くにやってくるのは産卵のため。
実は大荒れの海が赤ちゃんの誕生に欠かせないといいます。
今回研究者の協力のもと巨大水槽を準備。
産卵の様子をじっくり観察することで荒波に耐える卵の秘密を解明しました!厳冬の日本海で子孫を残すハタハタ。
知られざる素顔に迫ります!
(テーマ音楽)大荒れの冬の日本海。
世界各地で厳しい自然を相手にしてきた私たちでも撮影困難な場所です。
そこで力強い助っ人に協力を要請しました。
地元のベテランダイバー金坂芳和さん。
30年以上にわたりこの場所でハタハタを撮影しています。
この海を熟知した金坂さんに案内してもらいましょう。
岸の近く水深2メートルほどの浅場です。
水温はおよそ10度。
一面に海藻が生えています。
目立つのはホンダワラの仲間。
空気の入った袋を持つのが特徴です。
これが浮きの役割を果たし海の中で直立しています。
ハタハタは好んでこの海藻に卵を産み付けるといいます。
海藻の間を探していくと…。
いました!ハタハタです。
体長はおよそ20センチ。
体にウロコはありません。
ずいぶん大きな胸ビレですね。
その胸ビレを閉じたり開いたり。
ハタハタだけにパタッパタッと動かしています。
こうして複雑な流れを巧みに捉えてひとところにとどまっています。
こちらのハタハタは砂地に半分埋まっています。
休憩中なんだそうです。
ここにもいますよ。
どこにいるかわかりますか?あっ動きました!背中の模様見事に砂地に溶け込んでいますよね。
こちらは今まさに潜ろうとしているところ。
体をくねらせてズブッズブッと。
器用ですねぇ。
あっ卵を見つけました。
すでに産卵が始まっていたんです。
ふだんは水深200メートルほどの深場で暮らすハタハタ。
産卵の時期になると岸近くの浅場にやってきます。
そして海藻に卵を産み付けるんです。
卵を産んだメスはすぐに深場へと戻ります。
一方オスは浅場にとどまり次のメスが来るのを待つといいます。
金坂さんによると今ここにいるのはほとんどがオス。
最初の産卵が終わって次のメスを待っているところだそうです。
このあと12月中にもう1〜2回産卵が見られるといいます。
私たちは次の産卵を待って撮影することにしました。
ところがその日の午後から海が荒れだしました。
金坂さんが海から上がってきました。
撮影続行は危険だと判断し引き揚げることにしました。
その後夜にかけて天候はどんどん悪くなっていきました。
そして…。
「このあと午前9時の予想天気図で低気圧中心948ヘクトパスカルです」。
12月17日。
爆弾低気圧の影響で秋田の海は大荒れとなりました。
海に出られない日が続きます。
ようやく爆弾低気圧が過ぎ去ったのは12月20日。
4日ぶりの海。
はやる気持ちを抑えて潜ります。
すると…。
うわ〜!卵がたっくさん!どの海藻にもびっしりと産み付けられています。
よく見ると一つ一つ色が違います。
中にはこんな鮮やかな色をしたものもあります。
詳しい理由はまだわかっていませんが親の食べ物に関係があると考えられています。
でも…辺りを見渡すとハタハタの姿はありません。
産卵を終えてオスもメスもみ〜んな深場へ帰ってしまったようです。
え〜っ!そんなぁ!ああ〜漁師さんたちも網を片づけています。
どうやら漁のシーズンは終わってしまったようです。
狙っていた産卵の現場には立ち会うことができませんでした。
え〜っちょっと待った!あヒゲじい来ましたね。
はい!もうすっごく期待してたのに産卵が撮れなかったとは残念ですなぁ。
いや〜やっぱり自然には勝てませんね。
でもね産卵の様子を捉えたとっておきの映像があるんですよ。
えっそうなの?はい。
金坂さんが30年にわたり撮りためた映像からお見せしますね。
はいはい。
こちらです。
うわ〜ハタハタがいっぱい!はい。
運が良ければこんなふうにオスとメスが入り交じった大群が見られます。
へえ〜!こちらはメスです。
おなかがパンパン!卵が詰まってるんですな。
そうなんです。
みんなね産卵する海藻を目指してぐんぐん泳いでいくんですよ。
ほうほうほうほう。
そしてほら産卵が始まりました。
うん?どれどれ?あっホントだ!はい。
メスが卵を産むとオスが集まって受精させます。
いや〜壮観ですなぁ。
でしょ?でも冬の日本海は荒れた日が多いためこの瞬間に出会えることはめったにありません。
金坂さんですら30年の経験の中でたった3回なんだそうです。
そうなんだ。
それは貴重ですなぁ。
あでもどうしてハタハタはわざわざ荒れた冬の日本海で産卵するんですかね?おっヒゲじい鋭い!1つには冷たく荒れた海なら卵を食べてしまう他の魚の活動が鈍いからだと考えられています。
そしてもう1つ荒波でかき混ぜられた海は水中の酸素が豊富になり卵の成長に良いからだという説もあるんです。
なるほど!冬の日本海はハタハタが産卵するのにハナハダ良い環境というわけですな。
なんて!第2章では巨大水槽を使って産卵を撮影。
荒波の中を耐える卵の秘密を探ります。
毎年冬秋田で水揚げされるハタハタはおよそ1,000トンにも上ります。
でも1960年代にはもっととれていました。
2万トンを超える年もあったんです。
ところが1970年代後半以降漁獲量が激減。
2,000トン以下になりました。
さらにそのあとも減少を続け1980年代後半には全盛期の200分の1にまで落ち込んだんです。
原因は産卵にやってきたハタハタをとりすぎたことでした。
当時秋田県水産振興センターでハタハタの研究をしていた杉山秀樹さん。
漁を続けるためにはハタハタの保護が必要だと考えました。
そして漁師さんたちに3年間の禁漁を呼びかけたんです。
…というふうな言い方はしてましたね。
漁師さんたちは納得し1992年禁漁に踏み切ります。
そして…。
1995年漁が再開。
やった〜!たくさんとれています。
以来厳しい漁獲制限などを行い順調に水揚げ量を増やしています。
さらに地元の水族館では今年から人工ふ化させた稚魚の放流会を始めました。
子どもたちにハタハタを身近に感じてもらおうという取り組みです。
絶滅の危機を乗り越えたハタハタ。
いつまでも秋田の海で生きていってほしいですね。
冬の日本海で浅場の海藻に産み付けられたハタハタの卵。
第2章では荒波に耐える卵の秘密に迫ります。
私たちがやってきたのは秋田県水産振興センター。
この巨大水槽を使って産卵の様子を詳しく観察します。
まずハタハタが卵を産み付ける海藻ホンダワラを設置。
そして100トンの海水を流し込んで準備完了です。
そこに主役のハタハタを放します。
ハタハタが弱らないようバケツリレーで素早く運びます。
今回用意したのはオス・メス合わせて700匹。
産卵にやってきたハタハタを捕獲しこの日のために飼育していました。
うわ〜!メスのおなかは卵でパンパン。
今にも産みそうです。
この水槽の監修はハタハタ研究歴12年の甲本亮太博士。
甲本博士もこんなに大規模な試みは初めてだと言います。
(スタッフ)産卵してくれそうですか?カメラマンは交代しながら24時間態勢で見守ります。
さらに最新のロボットカメラも配置しました。
さああとは産卵を待つのみ。
期待が高まります。
でもなかなか産んでくれません。
そして3日目。
ついに産卵を捉えました!こちらがメス。
なんだかソワソワしている感じです。
あっ産みました!卵はプリップリ。
もう一度見てみましょう。
おなかに力を入れるメス。
そして…。
口を大きく開けて一気に卵を出しきります。
卵の下にいるのはオス。
受精させているんです。
ハタハタが産卵する瞬間がこれほど鮮明に撮影できたことはほとんどありません。
よく見ると他のメスも次々産卵しています。
画面中央のメス。
しきりに海藻におなかをこすりつけています。
こうしてちょうどいい場所を探っているようです。
そして…。
産みました!達成感に満ちあふれた表情に見えますね。
メスが産卵するとすぐにオスたちが集まってきて受精させます。
そして今回研究者も見たことがなかったメスの驚くべき行動を撮影することに成功しました。
それがこちら。
産卵直後のメスが卵のほうへ戻っていきます。
そして卵に口先を押しつけ始めました。
口や体を使って何度も卵を押しています。
こうして卵をしっかりと海藻にくっつけ波にもまれても外れないようにしているようなんです。
メスのおなかから出たばかりの卵は一粒一粒がゼリー状の物質でつながっています。
このゼリー状の物質は水に触れると縮みながら固まります。
この時海藻を巻き込みしっかりとくっつく仕組みになっているんです。
もう一つお母さんの工夫もわかりました。
それは卵の塊を丸い形に整えること。
ほら口先を使って器用に形を整えていきます。
丸い形にすると水の抵抗が少なくなり海藻から外れにくくなるからだといいます。
だから波にもまれてもバラバラにならないんですね。
独特な構造とお母さんの一手間のおかげで卵は荒波の中をすくすくと成長していきます。
第3章では赤ちゃんが誕生!春深場に旅立つまで密着です。
荒波の中で育つハタハタの卵。
この時ゆりかごになってくれるのがホンダワラの仲間です。
1つ50グラムほどの卵の塊が鈴なりになっても倒れません。
ホンダワラが持つ浮きのような袋のおかげです。
こうして倒れないで適度に揺れることで卵の塊はまんべんなく新鮮な海水に触れることができるんです。
ところが近年環境の変化などでホンダワラが少なくなる傾向にあります。
年によっては卵を産む場所が足りなくなる事態が起こっています。
そうなるとハタハタは他の海藻などに産卵するしかありません。
例えばこちらアマモの仲間。
卵の重さに耐えきれず倒れてしまっています。
これではゆりかごにはなりません。
それに波にもまれまっすぐな葉から卵が外れてしまうこともあるんです。
こちらは2012年に撮影された映像。
大量の卵が浜辺に打ち上げられています。
ホンダワラが少なかった上に大量のハタハタがやってきたため引き起こされました。
夜。
打ち上げられた卵のところへタヌキがやってきました。
卵を食べています。
こちらでは波間に漂う卵を海鳥が食べています。
ハタハタが命をつないでいくためにもホンダワラが茂る豊かな海であってほしい。
そう願わずにはいられません。
2月。
ハタハタの大産卵から2か月がたちました。
地元のベテランダイバー金坂さんと共に海の中の卵の様子を見に行きます。
あっ卵が透き通っています。
そして中にいる赤ちゃんの目が見えています。
動いている赤ちゃんもいますね。
ふ化が近づいているようです。
出てきました!次々と元気よく飛び出します。
赤ちゃんの体長は1センチほど。
ホンダワラのゆりかごですくすくと育てられたおかげで生まれたてでもしっかり泳いでいます。
赤ちゃんが集まってきました。
うわ〜たくさん!こうして大きな群れを作りホンダワラの森の周りで成長していきます。
ふ化から2か月。
秋田の海は春を迎えました。
成長したハタハタの子どもたちを見つけました!大きさは3センチほど。
もう大人と同じ大きな胸ビレが備わっています。
でも水温が上がるこの時期子どもたちを襲う肉食の魚の動きも活発になってきます。
その敵から逃れるように間もなく子どもたちは深場へと旅立ちます。
そして2年後産卵のため浅場に戻ってくるのです。
冬激しく荒れる秋田の海にやってくるハタハタ。
荒れた海こそが我が子の成長のために欠かせない条件でした。
そして卵を産み付ける海藻がゆりかごとなっていたのです。
荒波と海藻に支えられハタハタは新たな命をつないでいきます。
元治元年6月。
2015/07/05(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「珍魚ハタハタ 日本海の荒波と生きる」[字]
冬の日本海。秋田県沿岸で産卵するハタハタ。わざわざ大荒れの時を狙って海藻に卵を産み付ける。今回、研究者の協力のもと卵の秘密を徹底解明!赤ちゃんの旅立ちにも密着!
詳細情報
番組内容
冬の日本海。秋田県沿岸にハタハタの大群が押し寄せる。わざわざ大荒れの時を狙ってやってくるのは産卵のためだ。荒波は海藻に産み付けた卵を激しく揺らす。これにより、卵に酸素が行き渡り、成長が促されるのだ。今回、研究者の協力のもと、巨大水槽を使ってハタハタの産卵行動を徹底観察。荒波に耐える卵の秘密を解明した。さらに、ふ化した稚魚の旅立ちにも密着!秋田名物ハタハタの知られざる素顔が今、明らかに!歌:平原綾香
出演者
【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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