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【社会】

安保法案 衆院通過へ ひどい時代、黙ってられない

舞台「ゴールデン街青春酔歌」のけいこをする出演者たち=東京都豊島区で

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 「あのころは、こんなひどい時代が来るとは思わなかった」。武力で他国を守る集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法案が十六日午後、衆院本会議で可決される見通しになった。京都造形芸術大教授として映画や演劇の世界を目指す若者を教える元文部省官僚寺脇研さん(63)は、「二度とない」と思っていた戦争が、急に身近になりつつある今の日本への異議申し立てを、還暦オヤジたちの酒場トークで描いた舞台を通じて訴える。 (五十住和樹)

 舞台は「ゴールデン街青春酔歌」。戦後二十五年だった高校三年の夏を、同郷の男女が戦後七十年の夏に新宿の飲食店街で語り合う自叙伝的な物語だ。

 寺脇さんは鹿児島県の私立高校三年の夏、近くの女子高演劇部から芝居の脚本を頼まれた。これを形にしたいと思ったのが上演のきっかけ。一九七〇年、戦後二十五年の夏は「大人も子どもも戦争を二度と起こしてはいけないという共通認識があり、戦争とは振り返るものだった」と寺脇さん。

 舞台では、同窓生の女性が営むゴールデン街のスナックに集まった三人の男が高校時代の話を始める。主には当時の恋愛話だが、女子高演劇部に書いた台本が特攻隊員と家族が題材だったこともあり、戦争の話題が何度も出てくる。

 「国のしくみやきまりを少しずつ変えていけば、戦争をしないと決めた国も、戦争できる国になります」

 まるで今の安保関連法案を指すようなせりふは、客が店に置いていった絵本「戦争のつくりかた」の一節をママが読む場面。店にいたママの二十代の娘が、「戦争は過去のことじゃなくて、すぐ先の未来になるかも」と言う。文部科学省の有識者会議で「奨学金の返還に苦しむ若者を防衛省で就業体験させたら」という発言も登場する。

 「もう黙っているわけにはいかないと思った。舞台は今の時代へのプロテスト(抗議)」と寺脇さん。「同級生には大企業の幹部や医者も多い。『おまえらもちゃんと考えろ』と、制作費で協力してもらった」と笑う。

 落語協会の外部顧問を務める寺脇さんは、自分らがモデルの男性三人の役に知人である桂扇生(せんしょう)さん、立川談幸さん、初音家左橋(さきょう)さんという落語家の三師匠を起用。他には小劇場などで活躍する女優が登場する。

 公演は七月二十九日〜八月二日、東京都新宿区の「SPACE雑遊」。一般四千円。問い合わせは電080(6885)6445。

 

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