安保法案:16日午後衆院通過 「暴挙」野党、採決応じず

毎日新聞 2015年07月16日 11時09分(最終更新 07月16日 14時02分)

官邸に入る安倍晋三首相=首相官邸で2015年7月16日午前9時47分、長谷川直亮撮影
官邸に入る安倍晋三首相=首相官邸で2015年7月16日午前9時47分、長谷川直亮撮影

 集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案は16日午後の衆院本会議で、与党の賛成多数により可決され、参院に送付される見通し。与党が15日の平和安全法制特別委員会で採決を強行したことに反発を強める野党5党は、関連法案の採決に応じない方針だ。

 本会議では、民主、共産、社民の各党は討論が終わった時点で、維新の党は同党の対案の採決後に退席する予定だ。生活の党は本会議を欠席する方向。

 関連法案が16日に衆院を通過すれば、参院が議決しなくても衆院の出席議員の3分の2で再可決すれば法案が成立する憲法の「60日ルール」が9月14日以降に適用可能となる。会期は同月27日まで延長しているため、法案の今国会での成立は確実になる。

 安倍晋三首相は16日、衆院本会議前に国会内で行われた自民党代議士会で「戦争を未然に防ぐ必要な法案だ。国民を守り抜く大きな責任を果たしていこうではありませんか。国民の理解が深まるよう、皆様と努力を重ねていきたい」と述べた。

 衆院議院運営委員会は16日午前、理事会を開き、林幹雄委員長(自民)が職権で開会を決めた同日の本会議の議題を確認した。野党筆頭理事の笠浩史氏(民主)は「審議は尽くされておらず、法案を委員会に差し戻すべきだ」と抗議。「本会議が開会されるならば、政府案への反対と抗議を表明するために十分な討論の時間が必要だ」と要求した。民主党の高木義明国対委員長は同日の記者会見で、15日の採決強行について「まさしく民意を踏みにじる暴挙だ」と批判した。

 一方、自民党の佐藤勉国対委員長は16日、党の会議で、午後の法案可決を見越し、「法案の意義を引き続き国民に分かるように説明する使命も帯びている。参院送付後は成立に向け、最大限のサポートをしていこう」と呼びかけた。公明党の山口那津男代表は同日の党中央幹事会のあいさつで「賛否が政党の意思の表れだ。不明確な対応では何のために長い間、議論してきたのか」と述べ、野党を批判した。

 関連法案は、自衛隊法など既存の10法を一括して改正する「平和安全法制整備法案」と、他国軍への後方支援のための「国際平和支援法案」の2法案。

 最大の焦点となっている集団的自衛権の行使容認については、武力攻撃事態法などを改正し、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される「存立危機事態」で行使を認める。しかし、憲法学者らからは集団的自衛権に関する従来の憲法解釈を変更して行使を容認することに対し「違憲」との指摘が絶えない。

 また、他国軍への後方支援は、現行の周辺事態法を改正する重要影響事態法案で、米軍以外の他国軍の支援を解禁し、弾薬の提供も可能とする。国際社会の平和が脅かされる事態に対応するため、これまで通り必要に応じて特別措置法を制定するのではなく、国際平和支援法案を恒久法として新たに整備し、自衛隊の迅速な派遣を可能とする。両法案とも従来のように「非戦闘地域」をあらかじめ設定し派遣するのではなく、「現に戦闘が行われている現場以外」であれば派遣が可能になる。政府は衆院審議で、こうした自衛隊活動の拡大により「自衛隊員のリスクが高まることはない」と主張したのに対し、野党はリスクが増大することを認めるよう追及した。【水脇友輔、佐藤慶】

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