「元少年A」の印税、差し押さえろ 日本にも「『サムの息子』法」制定望む声

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   神戸連続児童殺傷事件を起こした「元少年A」(32)が手記「絶歌」(太田出版)を出版し被害者の遺族が反発している問題で、注目されているのが印税の行方だ。男性に多額の収入がもたらされるのは間違いないが、その使い道は明らかではない。

   米国の多くの州では、犯罪者が自らの事件の暴露で得た収入は被害者救済にあてなければならないとする「サムの息子(Son of Sam)」法が定められており、日本でも同様の法律の制定を望む声が出始めている。

  • 手記「絶歌」の印税はどう使われるのか
    手記「絶歌」の印税はどう使われるのか

10万部売れれば1500万円が「少年A」の収入に?

   「絶歌」は初版10万部で、価格は1500円(税別)。今の出版業界では多少レートが高い可能性もあるが、仮に売上の10%が著者に支払われると仮定した場合、10万部売れれば著者は1500万円を手にすることになる。

   太田出版では、印税の使途に関する意向は「聞いていません」と話し、

「経済的に遺族に償う責任を感じておられますので、本人が考えるはずだと思います」

とはいうものの、使い道は明らかではない。生活費に使ったり、場合によっては遊興費に回る可能性すら残されている。

   こういった道を封じるために米国で定められたのが「サムの息子」法だ。この法律は、ニューヨークで若い女性やカップル計6人を射殺したデビッド・バーコウォッツ受刑者が警察やメディアに「サムの息子」を名乗る意味不明な手紙を送りつけ、ニューヨーク中を恐怖に陥れたことにちなんでいる。バーコウォッツ受刑者は1978年に懲役365年の判決を言い渡され、今でも服役中だ。

   逮捕から有罪が確定するまでの間、出版社が多額の報酬と引き換えに手記の執筆を持ちかけたことが問題視され、77年に「サムの息子」法が成立。約40の州と連邦政府で同様の法律がつくられた。

   米国では1970年代以降、凶悪犯が自らの事件に関する手記を出版したり映画化の権利を売ったりして数億円相当の利益を得るケースが相次ぎ、世論からの批判を背景に立法されたとも言える。

1991年には最高裁で違憲判決も

   これらの法律は犯罪者が自らの悪事から利益を得ることを阻止する目的で制定されたが、批判もある。(1)法律が、犯罪者が自らの犯罪について書き残す経済的動機を奪ってしまい、事件の真相が分からなくなり公共の利益が損なわれる(2)出版の自由を定めた憲法に抵触する、といったものだ。実際に連邦最高裁は1991年、ニューヨーク州の法律を「適用される範囲が広すぎる」などとして違憲判決が下している。

   その結果、ニューヨーク州やカリフォルニア州では憲法に抵触しない形での法改正を余儀なくされた。例えばカリフォルニア州では、法律を適用する範囲を重罪が確定した人に限定するなどしている。


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024
nagi 2015/7/ 2 10:22

表現の自由を制限するかのごとき契機を与えるような行動は,厳に慎むべきです。戦前,反戦記事を掲げた新聞社が在郷軍人会を中心とする一部の方々から不買運動をくらって,その他の新聞社も,大衆迎合的かつ戦争を煽るような記事を書いたということは,重要な示唆を与えることでしょう。
つまりは,ある表現内容から,それが表現されるにふさわしいか否かを決定する権限は,誰にもないということです。サムの息子法は,たしかに表現行為それ自体を制限するものではない。しかし,表現行為による経済的利益を封じてしまえば,それは表現行為それ自体を否定するのとあまり変わらない結果をもたらします。
それに,犯罪を犯した者は,刑罰を受けることで,その罪は消滅するものと考えるべきです。ならばなおのこと,元犯罪者が手記等を出版する行為が,犯罪の延長線上にあると考えるべきではありません。

023
ANNY 2015/6/27 08:42

少年が非行に走るか否かの分岐点を考えてきました。ナメクジや猫の解剖については一部詳細が語られていましたが、重傷を負わせたり、殺害をした子供たちについては、ほとんど削除されていました。文芸春秋5月号に掲載された「少年審判全記録」には詳細が書かれていましたが「精神鑑定医にも話さなかった」と言う初めての「精通体験」の時期と状況が「絶歌」には書かれていて加害者は医師や裁判官や弁護士までも騙すことが出来る。元「少年A」に関するする本を数冊読んだが誰も彼と直接話した者はいないので「隔靴掻痒」の感じだった。「この手記」は貴重な資料となると思います。とくに記したい事は乳児から2歳までの親との愛着関係の形成が感情をつかさどる脳の形成に大事なこと。厚生した彼を社会が強烈に排除せず貴重な体験を今も苦しんでいる多くの子供たちの救済のために努力してほしい、それが被害者と遺族への償いになると思います。

022
mimi 2015/6/26 21:20

非難されるべきは出版社だと思います。 テレビでちょっと見ましたが、出版社の社長は「非難されるのを覚悟で出した」というようなことを述べていました。表現の自由というのとはこの件は異なると思います。

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