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【福島原発事故】

避難解除 17年春までに 生活・健康…不安消えぬまま

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 政府は十二日、東京電力福島第一原発事故で多大な被害を受けた福島の復興指針を改定し、閣議決定した。「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」の避難指示を、事故から六年後の二〇一六年度末までに解除するほか、事業再建に向けて一六年度までの二年間に集中支援する方針を盛り込み、被災者の自立を強く促す姿勢を打ち出した。 

 避難住民の帰還促進や、賠償から事業再建支援への転換が柱。地元では帰還への環境は整っていないと不満の声もあり、被害の実態に応じた丁寧な対応が求められる。

 安倍晋三首相は官邸で開かれた原子力災害対策本部会議で「避難指示解除が実現できるよう環境整備を加速し、地域の将来像を速やかに具体化する」と述べた。

 居住制限区域など両区域の人口は計約五万四千八百人で避難指示区域全体の約七割を占めるが、生活基盤や放射線による健康被害への不安は根強く、避難指示が解除されても帰還が進むかは不透明。東電による「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」の住民への月十万円の精神的損害賠償(慰謝料)支払いは一七年度末で一律終了する。一六年度末より前に避難指示が解除された場合も一七年度末まで支払い、解除時期で受取額に差が生じないようにする。既に避難指示が解除された地域にも適用する。

 一方、第一原発に近く依然、放射線量が高い「帰還困難区域」の解除時期は明示しなかった。

 被災地域の事業者に対しては事業再建に向けた取り組みを一六年度までの二年間に集中的に実施。商工業者の自立を支援するための官民合同の新組織を立ち上げ、戸別訪問や相談事業を行うほか、営業損害や風評被害の賠償は一六年度分まで継続する。

 東電は既に今月七日、福島県に対し、避難指示区域内の商工業者に支払っている営業損害賠償は一六年度分までとし、その後は打ち切る方針を示している。

◆きめ細かな対応必要

 <解説> 福島復興指針の改定で政府は、福島県の居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示の解除目標時期と賠償の終了時期を明示し、住民の自立を促す方針を打ち出した。政府はこれまでの「賠償」という形から「生活再建支援」に移行したい考え。しかし住民の置かれた状況はまちまちで、福島では「賠償の打ち切りだ」との反発も多い。

 除染やインフラ整備が完了しても、商圏自体を失った企業の再建や、避難に伴い住民がばらばらになったコミュニティーの再生は容易でない。既に避難指示が解除された地域でも帰還が進んでいないのが実情だ。政府や東電は、無責任な賠償打ち切りにならないよう、分かりやすい説明と、個々の被災者の状況に応じたきめ細かな対応に努める必要がある。

 震災復興、原発事故対応には多額の国費が投入されている。被災地への関心の低下が指摘される中、国民への丁寧な説明も引き続き求められる。 (共同・小野田真実)

■改定指針のポイント■

▼福島県の居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示を2016年度末までに解除。

▼両区域の住民への精神的損害賠償(慰謝料)の支払いを17年度末で一律終了。早期解除した場合も同等に支払う。

▼16年度までの2年間を集中的に事業者の自立支援を図る期間として取り組みを充実。事業者の自立を支援する官民合同の組織を創設し、戸別訪問や相談事業を実施。

▼原発事故の営業損害と風評被害の賠償は16年度分まで対応。

 

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