【動画】新国立競技場の計画について会見する建築家の安藤忠雄氏=長島一浩撮影
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 新国立競技場のデザイン選考で、審査委員会の委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏が16日、東京都内のホテルで記者会見を開いた。総工費2520億円の建設計画を文部科学省が決めてから、安藤氏が公の場で発言するのは初めて。

 会見の冒頭で安藤氏は、「(審査委員会の役割は)デザイン案を決めるまで。2520億円になった理由は私も聞きたい。総理大臣じゃないので、私が決めたわけではない。都民の1人として下がらないかなと思う」などと説明。安倍政権が別のデザイン案を検討していると報道されていることについては、「日本の国際的信用がなくなる」と指摘し、ザハ・ハディド氏のデザインを生かした現行計画をもとに、費用削減を検討すべきだと主張した。

 安藤氏は、2012年11月に事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が実施した国際コンペの審査委員会の委員長として、公募46点の中からイラク出身の建築家ザハ・ハディド氏のデザインを採用した。だが、ハディド氏のデザインの特徴でもある2本の「キールアーチ」で屋根を支える構造は工事が難しく、工費が高騰する原因となった。

 会見に先立ち、安藤氏は「当初の国際コンペ時の1300億円の予算に対して、14年5月の基本設計の概算工事費は1625億円で、コストを抑える調整をすれば実現可能だと認識した」「大幅なコストアップにつながった項目の詳細は、承知していない」などと主張した紙を報道陣に配った。

 新国立競技場については文科省が6月末、2本のアーチを残すなどハディド氏のデザインを基にした総工費2520億円の建設計画を打ち出し、安藤氏が欠席した今月7日のJSCの有識者会議で計画が了承された。だが総工費が当初の1300億円から2倍近くに跳ね上がったことから見直しを求める声が相次ぎ、安倍政権内でも12年の国際コンペの際に検討された別の計画に変更する案などが浮上している。