株式会社ベネッセコーポレーション様「いぬのきもち ねこのきもち」ユーザーテスト(行動観察)を活用した潜在的課題の発見事例

いぬのきもち ねこのきもち

本記事では、ユーザーテストを活用したプロジェクトの中から、ベネッセコーポレーション様「いぬのきもちねこのきもち」でのユーザー心理に基づく課題発見事例を紹介させていただきます。

ユーザーテストの目的

アプリインストールの促進や、雑誌購読者数の向上を目標とするプロジェクトの中で、潜在的な課題も発見できるユーザーテストを活用したサイト改善と、検索エンジン流入を向上させるSEOを並行して進めることになりました。

ユーザーテストの位置づけ

ユーザーテストの位置づけ

フルリニューアルは行わずにコンテンツやUI・デザインを検証し、改善を反復していく運用型プロジェクトの初期調査が今回のユーザーテストです。

(本事例の対象サイト)

いぬのきもち ねこのきもちTOP
いぬのきもちTOP
ねこのきもちTOP
まいにちのいぬ・ねこのきもちアプリ詳細

被検者リクルーティング

ユーザーテストでは、テストに協力してくれる被検者をリクルーティングする必要があります。被検者はターゲットユーザー像(ペルソナ)を明確にした上で、アンケートなどを用いてスクリーニング(選定)します。

今回は商品特性上、過去に雑誌(いぬのきもち、ねこのきもち)の購読経験があるとバイアスがかかる可能性があるため(※)、「過去に購読経験がないユーザー」を前提条件としています。

その中で、「ペットを飼っており、しつけや飼い方について雑誌やWebで意欲的に学んだ経験がある人」に限定しつつ、「具体的にどのように学んだのか」「ペットにかけている月々の支出」もアンケートで確認を取りました。

ユーザーの購買力を検証するわけではありませんが、”そもそも情報にお金をかけるつもりはない人”が被検者になってしまうと、ユーザーテストの精度が下がる可能性があるためです。

これらの条件(他複数のフィルタ条件あり)を満たす方に当社のユーザーテストルームにお越しいただき、ユーザーテストを実施しました。

(※)被検者スクリーニングでは、ペットを飼っている候補者の8割以上が当該媒体を認知しており、内約半数の候補者が過去に雑誌の購読経験があった。テストの目的次第でスクリーニング条件は変わるため注意が必要。

テスト設計

いぬのきもち ねこのきもち

本テストでは、Webビジネス上重要な3つのゴールに至るまでの流れをユーザーシナリオ(※)としたテストを設計。

デバイスはPCとSP(スマートフォン)それぞれ数名ずつ実施し、PCサイトではアイトラッキングも併用して、より明確にユーザーのWebブラウジング時の心理や行動を調査しました。

今回は、以下3つのユーザーシナリオでテストを実施しました。

  1. TVCM~アプリインストール(アプリの利用)
  2. TVCM~雑誌購読の申し込み
  3. 検討段階~ペット保険の比較検討

(※)ユーザーシナリオとは、ユーザーがどのような流れ(遷移)や条件でゴールに至るのかを見える化し、ユーザーニーズ(心理)や行動とともに起こしたものです。ユーザーシナリオはビジネスモデルやサイトコンセプトを確認し、サイト上のコンテンツや導線を把握した上で起こします。

ユーザーシナリオ1:TVCM~アプリインストール(アプリの利用)

TVCM-まいにちのいぬ・ねこのきもちアプリ

「いぬのきもち」「ねこのきもち」はTVCMやパンフレットなどで非常に認知が高いことに加え、現在は雑誌に限らず「まいにちのいぬ・ねこのきもち」というアプリを積極的に展開しているため、今回はTVCMを接触の機会としたコミュニケーションを念頭に置いてテストを設計。

アクセス解析の分析結果からTVCMと検索流入の数やキーワードは密接な関係にあることがわかっていたため、デバイスなど条件を絞り込み、TVCMの閲覧からアプリを検索、情報収集の後にインストールに至り利用するユーザーシナリオ(仮説)の行動観察を実施しました。

テスト結果(発見点の一部)

  • TVCMを見ても検索キーワードを認識できず、意図したランディングページに誘導できなかった
  • 検索してアプリ紹介ページを見たユーザーに、「ペットの成長に合わせた有益な情報が得られる」というアプリの特徴(USP)が適切に伝わっていなかった
  • 検索結果に出てくる一般ユーザーのアプリ紹介ページがわかりやすく、公式LPでは伝えられていなかったアプリの特徴が伝わった
  • 犬と猫の情報の豊富さがアプリの特徴の一つだが、ユーザーは自分に必要な(犬 or 猫)情報だけを求めていた
  • アプリインストール前の期待と、利用後のアプリ体験が一致せずミスマッチが生じていた

アプリ紹介

アプリは、TVCMを通してユーザーに検索してもらいランディングページ(LP)でアプリの魅力を伝えるはずでしたが、ターゲットが異なる複数の機能を並列で案内していることで、LPを全て見る前にユーザーに”いる・いらない”を判断されて心理が変化してしまっていました

独自の強み(USP)である肝心の情報はページの中ほどに用意されていましたが、縦長のLPではページ下部へいくほど閲覧率が下がるため、ページ上部で伝える情報をより精査する必要があります。

今回のケースでは、ユーザーが上から下へと情報収集を進める過程で製品のコンセプトや強みを勘違いしないように絞って紹介することで、コンバージョンの改善が望めると考えられます。

ユーザーシナリオ2:TVCM~雑誌購読の申し込み

いぬのきもち ねこのきもち雑誌

一定の認知がある雑誌だが、実際に購読検討する時にどのような行動を取るのか、情報収集を経てどのように感情が変化するのかを行動観察した。過去にパンフレットを閲覧したことがあるユーザーと、全く情報収集をしたことがないユーザーでは心理や行動や異なるため、それらの点に注意してテストを実施した。

テスト結果(発見点の一部)

  • 雑誌のふろく内容はわかったが雑誌自体のボリュームがわからず、定期購読の不安を払拭できなかった
  • 直近のふろくは非常に好印象だったが、過去や今後の付録がわからずそれ以上に前向きになれなかった
  • 試し読み機能で読んでいる時に表示される試し読み可能ページ数を、本誌のページ数だと勘違いしていた
  • 解約条件が最後の案内になっており、定期購読に対する不安を抱きながら情報を探していた
  • 解約時の返金条件を知った上でフォームに進んだ人は、お得な年間プランを選択するケースが多かった

(※)当該雑誌は書店での販売は行っておらず、Webやパンフレットなどからの定期購読申し込みのみとなっている。

解約時の案内

ユーザーは解約条件を把握してから「申し込み手続き」へ進むと、金額がお得な年間一括プランを選択しやすいことがわかりました。しかし解約に関する情報は、「申し込み手続きに進んだ後」でわかりやすく明記されていますが、最初のLPではページ下部にテキストで小さく書かれているだけです。

懸念の残っているユーザーは申し込み手続きへ進まずに離脱するため、予めLPでわかりやすく案内することでユーザーの不安や懸念が払拭され、離脱率の改善に伴うコンバージョンの増加が見込めます。

ユーザーシナリオ3:ペット保険の比較検討

いぬのきもち保険 ねこのきもち保険

いぬのきもち保険 ねこのきもち保険

ペット保険の「いぬのきもち保険」「ねこのきもち保険」は雑誌に比べ認知が低く、またWebサイト上でも導線が見つかりづらい状態にあった。アプリや雑誌の情報収集に訪れるユーザーがペット保険の検討段階であれば併せて検討されたいため、ペット保険の比較検討時のWebブラウジングも含めて行動観察を実施し、導線やコンテンツ改善の根拠となるユーザー心理を探った。

テスト結果(発見点の一部)

  • 最初は「ペット保険」「ペット保険 比較」などのキーワードで検索するユーザーが多い
  • 特定条件の検討目的を持ったユーザーは、絞り込んだ検索を行い出てきた保険の中から比較する
  • 検索結果の上位に表示される比較サイトで情報収集した内容を前提に、公式サイトで調べることがある
  • 詳細ページへの導線に気づかず、最初の概要ページだけで全ての情報を見たと勘違いしてしまった
  • 試算機能を使うと意外と安くて前向きになるユーザーがいる一方、試算機能がわかりづらく諦めてしまったユーザーもいる

保険見積もりの試算

保険ページ導線の課題は想定通りだった一方で、試算機能でエラーを出すユーザーがいることを発見しました。ユーザーが自力で解決できるエラーなら気にしないこともありますが、今回はユーザーがエラー続きになってしまい諦めてしまったため、改善点として取り上げました。

ご担当者様よりコメント

調査結果の率直な感想をお教えいただけますか?

Webサイト自体のユーザー調査は過去何度か行ったことがありますが、今回の調査では、アプリ訴求のCMから実際にアプリをダウンロードしたか、その時のハードルは何だったか、という点までしっかりウオッチしてくれたので、CM→検索→Webサイト→アプリダウンロードへの問題点を俯瞰して見れたのが良かったです。

意外だった発見はありましたか?

想定外だったことはいくつかありますが、自社のアプリ紹介サイトより個人で作られている「まいにちのいぬ・ねこのきもち」のアプリ紹介ページを読んでアプリをダウンロードしたいと思ってくれたこと。

自社サイトでは、アプリを楽しめるポイントを説明していたのですが、ユーザー様が気にされるダウンロードしてからの登録フローであったり、所要時間であったり、記事の内容であったり、そういうことをしっかり見せることがダウンロード時の不安軽減に繋がるのだということが分かりました。また、雑誌を申込する上でのハードル軽減方法について、いくつもヒントをいただきました。

今後どのように活用できそうでしょうか?

上記にあげたアプリLP・雑誌LPの改善はもちろんですが、今後コンテンツを増やしていく上で、スムーズな導線の確保であったり、情報の見せ方であったりユーザー様に使いやすいと言っていただけるサイトになるには、まだまだできることが山ほどあるな…と感じました。今回の結果も踏まえてサイトを改善する予定ですので、ユーザー様には楽しみにお待ちいただきたいです。

最後に

今回のユーザーテストでは、まだ認知の低い新しいアプリをインストールするまでのユーザー行動観察と、多くの人に既に認知されている雑誌媒体のユーザー行動観察を中心に行ないました。

ここで触れている内容は実際の発見点のごく一部でしかありませんが、ユーザー心理を知ることでユーザー目線で改善を回していくことが可能となり、データ分析しながら改善を進める際の改善検討にも大きな幅をもたらしてくれました。

TVCMの閲覧から検索、情報収集~インストール・アプリの利用など、限られたテスト時間の中でも一連のユーザー体験を再現したことで、想定通りの課題はもちろん想定外の発見も多々得られ、Webサイトの課題に留まらない改善議論の種を得ることができました。

何だかんだでコストをかけながら試行錯誤を繰り返されている方は、ぜひユーザーテストの活用をご検討ください。

大谷昌史Webコンサルティング事業部 副事業部長

1981年生まれ京都府出身。人事や営業責任者など色々経て現在に至る。Webコンサルティング事業の業務提携やサービス改善を行いながら、データ分析・サイト改善領域の業務推進を担っている。

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