欧州連合(EU)のユーロ圏首脳会議が決裂寸前でギリシャへの支援再開の道にこぎつけたことを歓迎したい。だが、協議で生じた亀裂の修復や疲弊したギリシャの経済再建など喫緊の課題も多い。
「ギリシャは五年間ユーロを離脱すべきだ」との勧告案まで取りざたされ、異例の長時間に及んだ協議だが、それでもギリシャ支援で全会一致したのは欧州統合という歴史的事業を後戻りさせてはならないとの使命感を首脳たちが共有したからだろう。
ギリシャが破綻すれば、拡大と前進を続けてきたユーロから初の離脱となり、ユーロの停滞や後退につながりかねなかったのだ。
合意した内容は、ギリシャにとって相当に厳しいものである。十五日までに付加価値税(日本の消費税に相当)の増税や年金の削減などの改革法案を議会で可決し、実行することが課された。空港や港など国有資産を民営化して返済に充てるとともに、EUなど債権団による厳しい監視を受けることも義務付けられた。
それらを条件に、三年間で最大八百六十億ユーロ(約十一兆七千億円)の金融支援が受けられる。ギリシャが要求した債務減免(借金棒引き)は認められず、今後ギリシャの改革努力を見たうえで返済期間の延長や金利の軽減を検討することになった。
これはチプラス首相が国民投票を強行する直前にほぼ合意していた六月末の改革案よりも、さらにハードルが高い。ギリシャは銀行が営業停止し、経済活動は急激に悪化している。チプラス政権の大衆迎合的で短絡的な政治手法が招いた結末とはいえ、このような緊縮策でギリシャの再建がはたして進むのだろうか。
過去四年間の緊縮策により、ギリシャ経済は名目国内総生産(GDP)が25%も縮小し、失業率は20%以上、若者にかぎれば50〜60%に達する。肝心の債務残高比率も高止まりしたままである。
今回の協議ではギリシャへの離脱勧告案を提案したドイツに対し、その懲罰的で厳しく追い込むばかりの強硬姿勢を批判する声が高まった。ドイツもまた信頼を失いかけているのである。
フランスとともにユーロをけん引していくリーダーであれば、加盟国の経済力強化を後押しし、結束を高める立場にあるはずだ。
ギリシャの債務負担を軽くするとともに、雇用創出や経済成長につながる産業投資が必要である。ドイツにも努力を期待したい。
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