そう言おうと思ったが周りに人がいたし、確認するまでもなくそんなことはなかった筈なので口に出すのは止めた。
「この人と会うのはいつ以来だろう」
それも確認するまでもないことで、実は吾輩ははっきりと記憶している。
本日のランチの向かいの席に座っているのは、かつて婚約し極々親しい友人に祝って頂きながら籍を入れることなく終わった女性……
あまりに突然、ランチのお誘いが来たのだ。
それなりに動揺はあったが、もちろん悪い気もしなかったので御一緒させて貰うことにした。
「清志さんはわかりやすい、今付き合ってる人いないんでしょう」
と言われたが、確かに嫁さんがいれば絶対に他の女性と二人で御飯には来ないだろう。
だが付き合っている人もいないと言われると、少々反論はしたくなる。
結末としては別々の人生を歩む選択をしたわけだから、特に思い出を残せば良かったとも思わない。
ふと……
「嫁さんになってくれた女性以外で、気持ちが入ったチューしたことのある女性って…」
と、思い返してみたりする。
元来、あまり好きな行為ではない。
ファーストキスは……
恋愛が成就したらするものだ、という認識以外に特に感慨はなかった。
そうして考えてみると、自分からせがんだ記憶は一人の女性にしかないし……
その女性一人とした回数の方がその他の回数を合計した回数をはるかにしのぐことは間違いない。
はい、左様なり♪
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