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じゅじゅるさん。

注意!アニメ・ドラマ・本などのネタバレあります

2015-07-15

[]長井龍雪監督ロボットエモーション 〜長井龍雪監督ロボット系譜から機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」への期待〜

新作長編映画心が叫びたがってるんだ。」の公開を控えている長井龍雪監督

長井監督作品の特徴は「心の揺れを大胆かつ繊細に描く」ところにあると思っています

そんなところが、とても好きな監督のひとりです。

思春期少年少女青春ものイメージが強い監督ですが、その時々に登場する「ロボット」は非常にダイナミックに登場人物のエモーションを代弁します。



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そんな長井龍雪監督が、なんとガンダムを手掛ける、というビッグニュース本日届きました。

その名も「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」。

僕は初見で、主役MSガンダムバルバトスの面構えから非常に強い怒りの感情を受け取ったんですね。

憤怒。庇のように突っ張った角の先端は眉根を寄せているようにも見えるし、彫りの深い眼は威圧的です。

本来感情の宿らないMSに、ノーマルな状態で、ここまでの怒りを前面に押し出しフェイスデザインにした意図とはどのようなものでしょう。

ロボット感情を持っているかのように描写する演出は珍しくありません。

モノアイからオイルの涙を流させたり、能面のような顔に影が走るようなアングルにして不気味さを演出してみせたり。

それはその時々の演出家裁量で「ロボット感情が宿ったかのように見える」もしくは「搭乗者の心情をロボットが代弁した」ように描かれてきたものですが、ガンダムバルバトスは、デザインの段階で憤怒の表情を顔にまとわりつかせていますノーマルから怒っている。

その射抜くような眼光に、人は恐怖すら覚えます。畏怖からガンダムバルバトスを崇拝する者が現れても良いくらい。

虐げ続けた大人達への反逆の意志の現れなのか。そして、その怒りは持続するものなのか。

クーデターを起こした彼ら少年兵の怒りの矛先が宙に浮いた時、ガンダムバルバトスは憤怒の表情を保っていられるのか。

ガンダムの面構えだけでも、色んな妄想が出来ちゃいますね。



このように、長井監督は、初アニメ監督作品であるアイドルマスター XENOGLOSSIA」以降の作品でも、要所要所でロボットを配置し、搭乗者のエモーションをロボットに託します。



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例えば、青春SFアニメあの夏で待ってる最終回では、寡黙で謎の多い檸檬先輩の変わりに、ハイエースに手足が生えたロボが荒ぶる心の裡を代弁する、というシーンがあります

位置的にジョジョのスタンド発現のようにも見えますね。ハイエースオラオラとか叫びそう。



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超能力者異能バトルと超能力に振り回される人々の有り様を描いた「とある科学の超電磁砲」でも終盤、黒幕のテレスティーナがロボットに搭乗して御坂美琴らに襲いかかります

大原さやかさんのドスの利いた雄叫びに乗せて、怒りと軽蔑をない交ぜにした、嵐が吹き荒んだようなロケットパンチがぶっ飛びます

御坂美琴レールガンの弱点ー射程に明確な限りがあるーを見抜きながら、自身の主力兵装が「有線式ロケットパンチ(撃ったら使い捨て)」って。

テレスティーナというひとの、科学者としての才覚とそれに相反する傲岸不遜さが形をなしたようなロボットデザインです。四連式ロケットパンチってすてき。

パトレイバーで例えると、ラスボスグリフォンや零式じゃなくて酒飲んでやけっぱちになった親父が乗る作業用レイバー(安全第一とか書いてある)、みたいなとんちきな絵面になってんのがすげえ好きなんですよ。テレスティーナの化けの皮が剥がれ、言葉遣いが荒れまくってるのもそのとんちきさに拍車をかけてますね。



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その続編にあたる「とある科学の超電磁砲S」でも、やはり最終回に婚后航空の超技術力で作られた巨大ロボ「エカテリーナ二世号改」が登場します。

白地に青が眩しいボディと、極度に発達した碗部が非常に雄々しいです。ヒーロー的なカラーリングに反して、一期と同じく、どこか土木建築作業機体を思わせるアイテムが散りばめられていてちょっとちぐはぐな印象を与えているのも、搭乗する佐天涙子さんのヒーロー願望の強さと、泥臭く生きていくしかない、今の彼女の心境を見事に現している、ように見えなくもありません。

そんな彼女青空に放つパイルバンカーはひっじょうに勇ましく、無力さに苛まれ続けた彼女ヒーロー願望が一気に昇華された瞬間でもあります



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これらの長井監督作品群の「ロボット挙動感情表現してみせる」ギミック大元2007年作「アイドルマスター XENOGLOSSIA」から見られたものです。

ただひとつ違うのは、心情の吐露ロボットから発せられるーーつまり感情を持ってるかも知れないロボットから搭乗者へのささやかながらも実に直接的なアクションを起こす事であります

このアニメは月が粉々に砕けた世界隕石落下を防ぐ手段が「ロボットでぶん殴る」、なんて奇想天外な発想だったもんで、当時とても心が躍ったものです。逞しく主張する巨大アームが力強さを感じさせます

人格を宿した(と言われる)ロボット「iDOL(アイドル)」インベルが、アイドルマスターと呼ばれる搭乗者・天海春香に次第に恋心を抱くようになります

iDOLのインベル言葉は発しませんが、わずかな挙動でその心情をアニメートする描写がとても秀逸です。上記作品群とは違い、人の代弁者ではありませんが、ロボット挙動にエモーションを籠める手法はこの頃から顕著だったと言えるでしょう。



さて、ここまで長井龍雪監督作品に搭乗するロボットについておさらいしてみました。

ロボットが搭乗者や操縦者の想いを代弁するーーまるで自分の身体の延長のように。

そうした手法を用いるロボットアニメは沢山あります

が、ここまで振り返ってもう一度最新作「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」のガンダムバルバトスを拝見すると、常時憤怒の顔にはやはり鬼気迫るものは相当です。ガンダムバルバトスに託した、彼らの蓄積された怒りの感情がどこまで続くのか。彼らの幼い出で立ちを見ると、ある日突然ぷつん、と怒りの感情が持続できなくなる日が来るんじゃないか、なんて邪推してしまうんです。彼らの起こすクーデターの規模とその最終目標が達成に向かえば、緊張の糸が切れる日もそう遠くはないでしょう。その時、彼らに、そして僕らにガンダムバルバトスはどのような表情を見せるのか。



長井監督が脈々と描き続けてきたロボットエモーションは「戦争」という非日常な場と「裏切り」という感情ブーストを経て、より苛烈感情の発露をガンダムバルバトスに託す事になるでしょう。

アイドルマスター XENOGLOSSIA」から作品を経て受け継がれ続けてきた、ロボットという身体の延長から発せられる感情の発露。

鋼の肉体は次はどんな衝動を糧に、戦場を跳躍するのか。

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」。長井監督真骨頂であり新機軸になりそうです。



どうでもいいおまけ話

とある科学の超電磁砲」のロボットとのチェイスシーンの元ネタメガドライブ魂斗羅 ザ・ハードコア」か「ガンスターヒーローズ」の強制スクロール面だよ説が一部では上がっているんですがどうでしょうか。ないでしょうか。