先日、TOHOシネマズ日本橋で杉浦日向子原作 原恵一監督のアニメ映画
「百日紅」を観てきました。

原作の漫画は文庫で2年くらい前に読んでたので映画化の報を聞いた時は
まさかこの漫画をどうやって映画化するんだ?!って思ってました。

内容は葛飾北斎(鉄蔵)の三女 葛飾応為(お栄)をとりまく江戸の出版文化や
画業にまつわる見聞に洒脱で軽妙な語り口と落語のようなオチを添えた素敵な漫画なのですが

これエンタメ要素むずかしいな~配給というか、どう料理すれば一般大衆にウケるんだろ?と思ってたのです。
僕は原作好きだけど、江戸時代のお話はある程度知識が無いと置いてきぼり食うし
まさに江戸の文化に通じてた杉浦日向子先生だから噛み砕いて描けた部分が大きかったんじゃないかと思っていたのです。

と思ってたところで予告編などをyoutubeで観ると絵はまさに杉浦日向子の絵が動いているし(最高!)
浮世絵がアニメーションになった映像美は楽しいし(高畑監督がぽんぽこでやってたけど)
お栄の生き様をロックに見立てる様は「あ、エンタメできてるじゃん!」とその時は思ったのです。

で、映画を観てきた感想ですが、もちろん先に書いた予告に魅せられた内容はバッチリだったのです。
アニメーションの技術も最高。
江戸時代の両国橋のスケールがすばらしい。木造でもこんなでっかい橋作れたんかと驚嘆しました。
四女で目を患ってる6歳のお猶がまた親を気遣う健気な子で、かわいい!
橋の上でじっと往来の声や喧騒に耳を傾けてる描写は演出も含めて本当に感動しました。
さいごに病床で鉄蔵が見舞いにきた時、布団で寝たまま実父の顔をまさぐるお猶のカットが焼きついています。

死別を描いているのにお涙頂戴な演出にしなかったのは大英断です。
(映画興行としてはお涙の方がいいんだろうけど)とにかくすばらしかった。

さて・・・それがいざ総評となるとなんだか雲行きがあやしくなってしまう。
一番の問題は主人公お栄のキャラ的立ち居地があやふやなまま全体のストーリー展開らしい展開に一本筋が見えづらい事だ。
文庫漫画では一話完結の鉄蔵やお栄を取り巻く江戸出版文化を支えた絵師や町人文化が描かれるのだが
これを90分の尺にまとめようとすると難しい。
一応パンフを読むと原監督は四女お猶の死に向かって季節が移ろっていく時間軸でストーリー進行していくのいだが、
そもそも鉄蔵とお栄の二人がなぜそこまで画業にこだわっているのか
その実存がピンと来ないのだ。だから観客は二人に思いいれが出来ないまま四女お猶の死にエンドで肩透かしを食らってしまう。

実の娘にも会いたがらず、妻とも別居して一般常識からすれば「あんた何やってんの?」って人物だ。
史実ではそういう人物だったからその様に描くのだというのでは作品にならない。
なぜそう絵筆を握る事に固執する人物なのか共感するエピソードが無いから全体に印象がボヤけてしまう。

そこに原作には無いエピソードをくっつけても良かったのにな・・・と個人的に残念に思う所がある。

あとBGMにハードロックというかメタルな音を採用した実験性には「おお!」と思ったけど
じっさい見てると、そこまで合ってる様には思えなかった。
お栄さんが例えばお裁きするとか「さくらん」みたいな花魁でロックする話でも無いワケで・・・。
あと最後、現代の両国橋のアニメ映像が挿入されるんだけど、これほんと要らないと思いました。
それなければもう少し評価良かった気がします・・・。 

oeitonao