コラム:イラン核協議合意は原油安・円高を招くか=斉藤洋二氏
斉藤洋二 ネクスト経済研究所代表
[東京 14日] - 国連安保理常任理事国(米英仏中ロ)にドイツを加えた「P5プラス1」は4月2日、イランとの間で同国の核開発を制限する代わりに経済制裁を解除する「枠組み合意」に達した。それ以降、査察や制裁解除の詳細などに関する協議が続けられてきたが、7月14日ようやく最終合意に達したと報じられた。
これによって、中東における核拡散に歯止めをかけることが期待されるほか、制裁解除を受けて、石油輸出国機構(OPEC)3位の産油国であるイランの原油産出量が増大すると予測されている。すでにイランと石油メジャーが今後の増産計画について協議を行っていると伝えられるなど、最終合意前からイランの資源をめぐる動きは活発化していた。
では、対イランの制裁解除によって、原油価格のさらなる下落はあるのだろうか。以下、今後の原油相場と円相場への影響について考えてみた。
<15ドル下落との予想も>
周知の通り、イランは石油・ガスのエネルギー資源大国であり、2013年末では石油埋蔵量は世界4位、天然ガスは世界1位と言われている。ただ、既存油田の老朽化が進んでおり、先進テクノロジー導入による生産拡充が課題となっている。したがって、制裁解除を受けて、ガス田の補修や新規開発、液化天然ガス(LNG)プロジェクトなどが一気に動き出すのではないかとの期待が高まっている。
主要な銀行や証券会社の石油アナリスト25人を対象にロイターが実施した調査(7月1日公表)によれば、制裁解除後、イランの原油輸出量は1年以内に最大60%増加する見通しだという。同国のザンギャネ石油相は、失った市場を即座に取り戻すことは可能と発言したと伝えられている。
もしこれが本当ならば、原油価格の下押し要因となるのは明白だ。米エネルギー情報局(EIA)の分析では、対イランの制裁解除は、同国の増産(2016年末までに日量70万バレル)と在庫(約3000万バレル)の販売を可能にすることから、2016年の原油価格を1バレルあたり5ドルから15ドル引き下げる効果があるという。 続く...