安保法案:衆院特別委で可決 与党単独で強行採決

毎日新聞 2015年07月15日 12時27分(最終更新 07月15日 13時16分)

安全保障関連法案の強行採決に反対する野党議員で混乱する衆院平和安全法制特別委員会=国会内で2015年7月15日午後0時15分、長谷川直亮撮影
安全保障関連法案の強行採決に反対する野党議員で混乱する衆院平和安全法制特別委員会=国会内で2015年7月15日午後0時15分、長谷川直亮撮影
安全保障関連法案と主な内容
安全保障関連法案と主な内容

 集団的自衛権の行使などが可能となる安全保障関連法案は15日午後、衆院平和安全法制特別委員会で、与党単独による強行採決で可決された。与党は16日に衆院を通過させ、参院に送付する方針。関連法案は自衛隊法や武力攻撃事態法の改正が柱。日本周辺での有事で米軍を支援するための周辺事態法を改正し、地理的制約を撤廃する「重要影響事態法案」も含まれる。関連法案が成立すれば、自衛隊の海外での活動は大きく拡大する。

 関連法案は、他国軍を後方支援するための「国際平和支援法案」と、既存の10法を一括して改正する「平和安全法制整備法案」の2本。

 採決に先立ち、安倍晋三首相が出席して締めくくりの質疑を行った。首相は「(法整備には)批判もあるが、確固たる信念と確信があれば政策を前に進めないといけない」と成立に強い意欲を示した上で、「残念ながらまだ国民の理解はない。今後も丁寧に(議論を)進めたい」と述べた。

 これに対し、民主党の大串博志氏は「議論していない論点は山ほどある。審議を打ち切らないでほしい」と要求。維新の党の下地幹郎氏も「憲法学者が『違憲』と指摘した問題は未解決だ。最高裁の違憲判決が出れば一からやり直しになる」と警告した。質疑終了後、民主、共産両党は採決に応じず、浜田靖一委員長(自民)に抗議。維新は採決の際に退席した。

 一方、衆院議院運営委員会は15日午後の理事会で、衆院本会議の日程を協議し、与党側は16日に安保関連法案の採決を提案する方針。16日に衆院を通過すれば、参院が議決しなくても衆院の出席議員の3分の2で再可決できる「60日ルール」が9月14日以降に適用でき、同27日までの今国会での成立が確実になる。

 関連法案のうち、整備法案は、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される「存立危機事態」を規定。同事態の際に集団的自衛権を行使できるようにするため、自衛隊法と武力攻撃事態法の改正案を盛り込んだ。集団的自衛権を巡っては憲法学者を中心に「違憲」との批判が強まっている。政府は行使を判断する具体的な基準についても明確にしていない。

 重要影響事態法案では米軍以外の他国軍の支援や弾薬の提供も可能になる。国際平和支援法案は、自衛隊を迅速に派遣し、国際社会の平和のために武力行使する他国軍を後方支援する。両法案によって、自衛隊の活動範囲は従来の「非戦闘地域」から「現に戦闘が行われている現場以外」に拡大する。野党は「自衛隊員のリスクが増大する」と追及したが、政府はこれを否定している。

 このほか、国連平和維持活動(PKO)で、巡回、検問などの治安維持任務を可能にし、任務遂行のための武器使用もできるようにするPKO協力法改正案▽武力行使に至らないグレーゾーン事態でも米軍などの防護が可能となる自衛隊法改正案▽国際社会の平和と安全のためでも船舶検査の実施を可能とする船舶検査活動法改正案−−などが盛り込まれている。【青木純、飼手勇介】

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