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【政治】

安保法案 衆院委で可決 反対民意の中 強行

2015年7月15日 14時08分

 他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする政府の安全保障関連法案は十五日午後の衆院特別委員会で、自民、公明両党の賛成で可決された。民主、維新、共産の野党三党は強行だと抗議して採決に加わらなかった。安保法案に対し、憲法学者から「違憲」との指摘が続出するなど、各界各層に反対の声が広がる中、安倍政権は今国会中の成立を目指す姿勢を鮮明に打ち出した。

 特別委は同日午前、安倍晋三首相が出席して締めくくり質疑を行い、与野党が質問。続いて野党側が審議の継続を求める動議を提出したが、賛成少数で否決され、浜田靖一委員長(自民)が質疑終局を宣言。野党議員が委員長席に詰め寄って抗議する中、維新案、政府案の順で採決した。維新の対案二本は賛成少数で否決された。野党三党は席に着かず、浜田氏に抗議を続けたが、政府案は与党単独で可決された。民主、維新両党が共同提出した領域警備法案は採決しなかった。

 首相は採決前の質疑で、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱にした安保法案について「まだ国民の理解が進んでいないのも事実だ」と認めた。「批判に耳を傾けつつ、確固たる信念があればしっかり政策を進めていく必要がある」とも強調した。

 民主党の長妻昭代表代行は「説明が尽くされたと思っているのか。国民の理解が得られていない中、強行採決は到底認められない」と訴えた。

 特別委に先立ち、自民、公明両党の幹事長は都内で会談し、安保法案を十六日の衆院本会議で可決し、参院に送付する方針を確認した。

 参院では法案を審議する特別委の設置に野党が同意しておらず、早期の審議入りは難しい情勢。与党は、衆院通過後に六十日が経過しても参院が採決しない場合、憲法の規定に基づき衆院が三分の二以上の賛成で再可決、成立させる可能性も排除しない姿勢を示し、参院に審議を促す考えだ。

◆世論説得 自信のなさ露呈

<解説> 与党は十五日午後、安全保障関連法案に関する衆院特別委員会で採決強行に踏み切った。五月末から一カ月半にわたるこれまでの審議では、政府側の説明の矛盾やあいまいさが際だった。審議を進めるほどに世論の疑念が深まる中での採決は、拙速との批判を免れない。説明を尽くしても、国民の理解を得る自信がないと認めているに等しい。

 法案の最大の問題点は、どんな状況になれば、他国を武力で守る集団的自衛権を行使するのか不明確なこと。歴代政権が憲法解釈で禁じてきた集団的自衛権を行使する判断について、安倍晋三首相の答弁は「私に任せてほしい」と言っているようにしか聞こえない。大半の憲法学者が「違憲立法」と批判する理由はここにある。

 首相は審議の序盤では、「他国の領土、領海、領空で戦闘行為を行わない」と強調。他国での武力行使は中東・ホルムズ海峡の機雷掃海以外に「念頭にない」と明言していた。ところが、近隣国の領海で米艦が攻撃を受けた際の対応について野党から追及されると、集団的自衛権を行使する可能性を排除しなかった。

 首相は、敵国の意図が不明でも集団的自衛権行使に踏み切る可能性にも言及。政府の裁量次第で行使の範囲が広がる懸念は、審議を重ねるごとに強まった。

 そんな状況で採決したのは、世論の反対がこれ以上強まる前に採決してしまえという姿勢にほかならない。首相は安保法案を閣議決定した五月十四日の記者会見で「分かりやすく丁寧に、必要な法整備であることを審議を通じ説明していきたい」と強調した。自身の発言の意味を、今こそかみしめるべきだ。 (新開浩)

(東京新聞)

衆院特別委で民主などの野党議員が取り囲む中、採決を強行する浜田靖一委員長(右)=15日午後0時24分、国会で(神代雅夫撮影)

衆院特別委で民主などの野党議員が取り囲む中、採決を強行する浜田靖一委員長(右)=15日午後0時24分、国会で(神代雅夫撮影)
 

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