以前、といっても10年くらいは昔だったような気もするんですが、竹下登氏の回顧録を読みました。
政治とは何か―竹下登回顧録
強行採決がどうとかこうとかという話については、本当はその回顧録とか読むとすっげえ色々書いてあって面白いんですが、手近なところではWikipediaでも色々まとまってまして、まあ内容もこんなもんだと思いますので、気になる人は読むといいと思います。
Wikipedia:強行採決
国会では議案に充当させる審議時間の配分や審議の順番など議事日程は議案ごとの均等割ではなく、議案ごとに議院運営委員会で調整され、ここでの調整が重要な政治上での駆け引きの材料となってきた(国対政治)。このため、議院運営委員会での優勢を背景に、野党の合意を取り付けないまま審議を終了させ、法案を採決することを「強行」とマスコミや野党が表現した。また与党が一方的に審議を打ち切ることから、「与党による審議拒否」とのレトリックが用いられることもある。
与党が強行採決する際は、国会対策委員長同士や会談や委員会の理事懇談会といった非公式な場で、野党側に対して「○時○分に採決に踏み切る。」あるいは「○○議員の質疑終了後、質疑を終局する。」などと事前通告されている。このため、採決間近になると、与野党の議員が集結の準備を整えており、マスコミ各社のカメラもスタンバイを終えている。採決する時間も、NHKの生中継がしやすい時間帯を選んで設定されている。一方、一部の野党が出席して強行採決に踏み切る予定が、段取りを間違え全野党議員が欠席のまま採決してしまったため、数時間後に改めて野党議員の出席の上で強行採決をやり直した例もある。また、与野党対立を激化させないため、委員会で強行採決を行ったあと、当該委員会の委員長が引責辞任することもある。実際のところ、「強行採決」という言葉自体メディアが作ったものでして、国会法や衆議院規則にそういう記載があるわけでもありませんし、「○月×日に採決を行います。みんな来てね!」と事前告知しなくてはいけない、という決まりがある訳でもないです。ないんですが、実際にはちゃんと告知が行われるので、野党の皆さんが事前に反対のプラカードを作る時間もある訳です。素敵な慣例ですよね。
このように、与野党が対立する法案にあって、どうしても妥協点が見出せない場合、ギリギリの落とし所として、強行採決が選択される。与党は法案を可決させるという「実」を取り、野党側は「体を張ってこの法案を阻止しようとした。」という姿を国民にアピールする「名」を取る。その意味では、与党が野党の顔を立てたものとも言える。
ちなみに、野党が採決に抗議する姿が慣例通りテレビ放送されていて話題になっていましたが、自民党が下野していた時期にも強行採決は散々行われておりましたので、自民党も当時抗議活動を行っていた筈です。プラカードを作っていたかどうかまでは私は知りませんが。
実際のところ、強行採決といっても、国会法に則って正規に運営された立法府が正規に審議した、という事実は動かせないと思いますので、採決方法について文句を言うならば、まず国会法に文句を言わなくてはいけないと思います。というか、民主党は何故、自分たちが与党の間に少数意見を尊重する方向に法改正しなかったんでしょうか。不思議ですよね。
全然関係ないですが、今回の採決について「自民党によるクーデターだ!」とかいうテキストをtwitterで見かけまして、「え、マジで!?多数派与党の国会立法もクーデターって言うの!?」とか軽く衝撃を受けました。新しいクーデターの概念ですね。言語の可能性って素晴らしい。
まあ、強行採決ってのも随分イメージ先行の面白い言葉だなあ、という話でした。