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2015.7.15 WED
PHOTOGRAPHS BY NORIYUKI AIDA(portrait),
STUDIO ROOSEGAARDE(projects’ images)
TEXT BY WIRED.jp_U
SPECIAL THANKS TO SHIBAURA HOUSE
──まず最初に、ご自身のバックグラウンドについて教えてください。どのような環境で育ってきたのでしょうか?
子どものころは、固くて無機質なコンクリートの家で育ちました。だからいつもそこから出たくて、自然の中で遊んでいたんです。ツリーハウスをつくったり動物と遊んだりね。そのころからずっと、道具やテクノロジーを自分に合ったものをつくるために使いたい、身の回りの世界をカスタマイズするために使いたいと考えていました。きっとぼくのDNAのなかには、「消費者」ではなく「メイカー」としての信念が刻まれていたのでしょう。
いまは大人になって、使う道具はハンマーと釘からもっと洗練されたものに変わりましたが、自分の信念はあのころのままだと思っています。「Smart Highway」「Sustainable Dance Floor」「Smog Free Project」といった作品は、ぼくにとってはどれも世界をカスタマイズするための方法であり、同時に「未来の世界がどのように見えるか」といった提案でもあるのです。
1/12ダーン・ローズガールデ作品集
Smart Highway:スタジオの代表作である「スマート道路」。日中の太陽光で充電し、夜になると発光する蛍光塗料によって、エネルギーを使わずに光を発する。
2/12Smog Free Project:イオンを利用したテクノロジーによって大気汚染物質を吸収する、巨大バキューム。オランダや中国で使われている。
3/12Dune:オランダ・ロッテルダムに流れるマース川沿いにつくられた、人が近づくと反応して光と音を発する「インタラクティブ・ランドスケープ」。
4/12Crystal:人が触ることに反応し、LEDライトで光を発するクリスタル。ダーンはいつまでも遊んでいられるこの作品を「火星からやってきたレゴ」とたとえる。
5/12Marbles:「Crystal」を大きくしたような作品。LEDとセンサーによって、人の動きに合わせて光を発する。
6/12Boo:スタジオの作品にはライトを使ったものが多い。「光は人とのインタラクションをつくり出すいい方法なんだ」とダーンは言う。
7/12Lotus:フランス・リールのサント・マリー・マドレーヌ大聖堂の中につくられた作品。人の動きに反応して、アルミニウムでできた花びらが開いたり閉じたりする。
8/12Liquid Space:3本のアームが、人の動きに合わせて音と光を発したり変形したりする作品。2008年のYCAM(山口情報芸術センター)にも出展された。
9/12Sustainable Dance Floor:人が踊ることで生まれる振動をエネルギーに変換するフロア。
10/12Intimacy:心拍数によって服の透明さが変化する「テクノロジーと親密さ」の関係を表現した作品。「テクノロジーは第2の皮膚である」という自身の考えを体現している。
11/12Flow:数百の換気装置が人の動きに合わせて動き、人工的な風をつくり出す「スマートウォール」。
12/12Rainbow Station:125年の歴史をもつアムステルダム中央駅と、現代のテクノロジー技術を組み合わせて生まれた作品。本来は星を見るために使われる液晶技術によって虹を描いた。
──デザイナー、建築家を志した理由のひとつに、日本人の建築家の影響があったと聞きました。
その通り! あれは16歳のとき、高校の美術のクラスでロッテルダムの美術館に行ったときのことです。当時は若かったから最初は「美術館なんてつまらない」と思っていたけれど、そこで磯崎新がつくった巨大で美しいタワーを見た瞬間に、「これこそが自分が将来仕事にしたいことだ」と感じたんです。その経験がきっかけとなって、大学では建築を学ぶことを決めました。
おもしろいのは、いまでは若い世代の子がぼくに同じようなことを言ってくれるようになったことです。「いままで何がしたいかわからなかったけど、あなたの『Van Gogh Path』(ゴッホの自転車道、下記動画)を見てやりたいことが見つかりました。ありがとう!」ってね。ある意味では、ぼく自身が誰かにとっての磯崎新になれたといえるのかもしれません。
もちろんぼくと磯崎の作品は違います。でもこのことからわかるのは、新しい領域を開拓すること・探求することは、いつの時代においても重要だということです。ぼくたちのスタジオが決して過去に成功したものをコピーせずに、常に新しいものに投資をしているからこそ、彼らの心に響くものがあるのでしょう。
「Van Gogh Path」は、1883年にゴッホが住んでいたオランダ・ヌエネンにつくられた自転車道。「Smart Highway」と同じく、日中の太陽光で充電し、夜になると発光する蛍光塗料を使っている。「自転車の安全な走行や環境志向の観点からこの道路に興味をもつ人もいるけれど、個人的には、『最初のデート』にぴったりな場所だと思う」と『WIRED』の以前の記事でダーンは話している。
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