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【政治】

安保法案「弱い人間のまま止めたい」 小さい花は訴える

国会前で安保関連法案反対を訴える植松青児さん=東京・永田町で(梅津忠之撮影)

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 百円ショップで買った紫色の小さな造花を手に、この一カ月以上、国会の正門前に立ってきた派遣社員の男性がいる。印刷出版系の会社に派遣社員として勤務する植松青児(せいじ)さん(54)=東京都国立市。夕方、週に二、三回、安全保障関連法案に抗議してきた。「安倍首相のように拳を振り上げるのではなく、弱い人間のままで法案を止めたい」。自ら名付けた行動は「あじさいアクション」で、花はその象徴。十四日夕も採決阻止を訴える。 (辻渕智之)

 「人々の声を聴け」。十三日夕、植松さんは新たに用意してきたメッセージを国会に向けて掲げた。今、安倍政権に一番訴えたい言葉だ。「(夏までに成立させるとした)米国との約束を優先させるか、世論に耳を傾けるか。当然、僕たちの声を聴くべきです」

 政権の姿勢は、衆院を通過した労働者派遣法の改正案でも同じだと感じる。「需要期だけに人が欲しい財界の意見を優先している。一年に数カ月ではなく、十二カ月仕事がいる生活者の声を聴いていない」。改正案には派遣労働を固定化させるとの批判が根強い。

 植松さんはもともと、雑誌のグラフィックデザイナーだった。契約が切れた後、一九九八年から請負労働者となり、三年前から派遣労働者に。今の手取りは月二十万円を切る。足に障害のある妻と「ギリギリの生活」を送っている。第一次安倍政権のころから、政治デモに時々参加するようになった。「僕たち大人が政治の話を避け、後回しにしてきた。その結果がこの政治だと反省しています」

 アジサイ似の造花を持つのは季節だけが理由ではない。「小さい花がいっぱい集まっているのがアジサイ。僕たち無名の人間に似ている」。ツイッターで参加を呼びかけ、市民団体の行動がない曜日に「小回りが利くから」と十〜五十人の少人数で重ねてきた。アジサイを思わせる青や紫の傘を広げる参加者もいる。

 真夏の日差しの中、こう思いを明かす。「小さい運動で本当に恥ずかしいんです。でも法案がもし通ったとしても、(季節が)寒くなるまでは続けたい」

 

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