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私は書きたい

大手メディアの記者として働いていますが、それはあくまで自分の一面に過ぎません。 野嶋剛という個人の基本はジャーナリストです。 このブログでは、ジャーナリスト野嶋の書きたいこと、伝えたいことを、みなさんと共有していきたいと思っています。

プロフィール:

1968年5月、福岡市に生まれる。奈良と横浜、横須賀で育つ。
大学は上智大学新聞学科でジャーナリズムを専攻。
朝日新聞に入社後、佐賀支局、久留米支局、福岡本部など九州で6年ほど過ごし、2001年からシンガポール支局長に着任。ところが9・11テロで特派員生活の半分をアフガン、イラクで過ごし、2003年に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)を出版する。
その後政治部記者を経て、2007年から2010年まで台北支局長。帰国後、朝日新聞東京本社国際編集部次長として、中国語マガジン「新鮮日本」編集長を務める。現在はアエラ編集部。






銀輪の巨人
野嶋 剛
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Tsuyoshi Nojima


【書籍】
アマゾンの著者ページ へ
「ラスト・バタリオン 蔣介石と日本軍人たち」(2014、講談社)
「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)(2011、新潮社)
「銀輪の巨人 GIANT」(2012、東洋経済新報社)
「チャイニーズ・ライフ」(訳書=2013、明石書店)
「謎の名画・清明上河図」(2012、勉誠出版)
「イラク戦争従軍記」(2003、朝日新聞社)

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2015-07-02 09:33:35

沖縄本① 矢部宏治「戦争をしない国」(小学館)

テーマ:沖縄
 


 アエラで沖縄の記事を書くことが増えて、沖縄に関する本をこのところ30冊ぐらいは読んでいる。だいぶ本棚を埋めるようになってきた。新しい本もどんどん出ている。メモとして記録しておく意味も込めて、読んだ本の感想を断続的に書いていこうと思う。台湾や香港、シンガポールなど大国・帝国の周縁的な世界に生きる人々のことを学んできた身としては、沖縄問題に適用できることがたくさんあるし、沖縄問題からさらに学べることがたくさんあると感じているところです。


矢部宏治「戦争をしない国 明仁天皇メッセージ」(小学館)

 久々に、一気にばっと読み終えた本になった。この本は平和がテーマでサイパンやパラオ、広島、福島なども紹介しれいるが、その中心は沖縄に据えられている。
 「沖縄」という戦後日本最大の問題で、かつ巨大な矛盾に、生涯をかけて向き合ってきたのが明仁天皇だということを、はたしてどれくらの日本人が知っているでしょうか。
 そう著者は問いかける。はい、実はあまりよく知りませんでした。
 ただ、前々から1975年の皇太子時代に沖縄を美智子妃と沖縄海洋博出席のため、沖縄を訪問したとき、火炎瓶を投げられたことは気にかかっていた。どんな気持ちだったのか。どんな対応やコメントをしたのか。いつか調べたいと思っていたが、本書にきちんと書いてあった。
 天皇は訪問直前には「石ぐらい投げられてもいい。そうしたことに恐れず、県民のなかに入っていきたい」と語っていたという。実際に投げられたのは、火炎瓶だった。煙まみれになれながらも、明仁皇太子はそのままスケジュールを変えずに慰霊の旅を続け、その日の夜にこんな談話を発表している。
 「払われた多くの尊い犠牲は、一時の行為や言葉によってあがなえるものでなく、人々が長い年月をかけてこれを記憶し、一人一人、深い内省のなかにあって、この地に心を寄せ続けていくことをおいて考えられません
 その後、天皇は今日まで10回に渡って、沖縄を訪れた。
 一連のことからはっきり分かるのは、明仁天皇が、沖縄に対して、非常に強い責任感と罪悪感(この言葉が適切かどうかは自信ないが)を抱いている、ということだ。だから、この本で何度も紹介されている明仁天皇の沖縄に対する言葉は、どれもやけに深く突き刺さる。
 1996年の誕生日会見では、こんな発言も行っている。「沖縄の問題は、日米両国政府の間で十分に話し合われ、沖縄県民の幸せに配慮した解決の道が開かれていくことを願っております
 これは普天間をめぐる返還問題について、天皇は間接的だがギリギリの形で言及したものだろう。
 著者である矢部宏治氏は「日本はなぜ『基地』と『原発』を止められないのか」を書いた人。
 本書では、明仁天皇の言葉を抽出し、平和の問題と絡めて論じた本書の着眼点に敬服する。
 特に以下の指摘はずっと心に刻みたい。
 「沖縄の問題に一度でもきちんとふれると、その人の政治を理解する力《リテラシー》が飛躍的にアップします。それは本土では厳重に隠されている「身もふたもない真実」が、沖縄では日常生活のなかで、誰の目にも見える形で展開されているからです
 思わず、そうそう、そうなんだ、と手を打ちたくなった。
 例えば、台湾でも、本来はどんな条件をみても国であっていいはずなのに、その帰属する政治体制が「国家」として認められない状況を台湾の人々が強いられている不条理を、少なくとも台湾に関わっている人はすべて知っていなければならないのと同じように、沖縄には歴史的かつ政治的な不条理がまぎれもなく存在していることは、日本国民であるなら、辺野古移設に賛成でも反対でも、沖縄メディアが好きでも嫌いでも、その点だけは忘れるべきではない。
 そのことを明仁天皇の言葉が教えてくれる。
 

 
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2015-05-29 08:22:13

「不戦敗」の声も:混迷する台湾・国民党の「総統選候補」選び

テーマ:台湾の政治・経済・社会
*国際情報サイトフォーサイトに5月18日に執筆したものです。出張などありしばしブログに転載するのを忘れていました(笑)。ですが、状況はあまりその後も大きくは変わっていません。国民党の人選はまだまだ混迷しそうで、もしかすると6月後半とか7月にずれ込むかもしれません。


「不戦敗」の声も:混迷する台湾・国民党の「総統選候補」選び


 台湾の与党・国民党の総統候補選びが混迷に陥っている。5月16日の立候補受け付けの締め切りまでに、これまで有力な候補者と見られていた王金平・立法院長、朱立倫・党主席、呉敦義副総統などが次々と不出馬を宣言した。

 立候補受け付けには洪秀柱・立法院副院長や楊志良・元衛生署長らが応募したが、それなりに知名度がある個性派ではあるものの、いずれも「大物」とは言えない。すでに早々と出馬を確定させている民進党の蔡英文氏に勝てる候補になるとは思えず、党内からは「事実上の不戦敗」との懸念も出ている。

 今後、洪氏らは世論調査と党員投票によって選考が行われるが、国民党内のルールでは、「党の調整」にも含みが置かれており、洪氏らの支持の広がりがなければ、党が候補者を指名する可能性も残されており、今後もすんなり決まらずにずるずると引き延ばされ、ますます戦況が不利になる恐れもある。



切れてしまった2人の関係

 14日から16日にかけて、台湾では国民党の候補者選びで目がくらむほどの激しい動きが展開された。口火を切ったのは呉敦義氏で14日、「総統選に出ないという気持ちには変わりがない」と表明した。一時は人気の低さから目が消えたかと思われていたが、王金平氏と朱立倫氏のにらみ合いで一部に待望論が出かけていたところ、自ら火を消した。15日には、王金平氏が「皆さんの期待に応えられずに申し訳ない」と語って事実上の不出馬宣言。王金平氏は一時出馬に自信を持った時期もあったようだが、馬英九総統を含めた党内の反発を抑えきれないと判断したのか、最後の最後で「撤退」に傾いた。 

 そして、情勢に混迷の印象を加えたのは、馬英九総統が15日に台湾紙『リンゴ日報』との間で行った単独インタビューで、朱立倫氏が総統選に出馬しない意向を示していることを痛烈に批判したことだった。

「過去の世論調査をみれば、彼は勝てる見込みがないわけではない。ほかに勝てる確率が高い人には会ったことがない。党がこんな状態にあるなかで、個人的な事情は後回しにすべきだ」

「(自分が朱立倫だったら)もちろん重責を担う。自分は教授だったときも(台北市長選で)重責を担った。党主席だったらなおさら逃げられますか」

 この発言からは、馬英九氏と朱立倫氏との人間関係が切れてしまったことが分かる。在任中の総統がここまで言ってしまうところが、馬英九氏らしさでもある。しかし、朱立倫氏はそれでも動かなかった。

 結局、朱立倫氏は16日の立候補受け付け時間終了と同時に記者会見。総統選には出馬しないことと、現在務めている新北市長の任期を全うすること、党の団結強化に全力を尽くすこと、今後候補者選びの手続きをしっかり進めること、来年1月の総統選で敗れれば党主席を辞任することなどを明らかにした。

 これは党内の待望論にとどめを刺しながら、馬総統の批判に反論した形であり、同時に自らの今後数年間の政治日程を確定させたわけである。「あらゆる疑問や憶測に答えます」とでも言わんばかりだ。



想像以上に深刻な“病状”

 それにしてもこの3日間の出来事はちょっとしたドラマよりもはるかに面白い展開で、私を含めて台湾ウオッチャーは大変楽しい思いをしたのだが、ふと気がつくと、国民党は誰を立てるべきかという肝心の問題で本来の「当事者」たちが全員逃げてしまった形で、結局は何も決まっていないのである。

 これは果たして国民党崩壊の序曲なのか、それとも、反転攻勢のための死んだふりなのか。もしも当事者たちがシナリオを共有して演じていたとすればアカデミー賞ものなのだが、どうやら全員が大真面目に行動しているようで、だとすれば国民党の病状は想像以上に深いと言わざるを得ない。
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2015-05-27 10:53:14

「台湾文化センター」の名前が確定、オープンへ

テーマ:台湾の政治・経済・社会
 台湾の文化部が海外に文化交流や対外発信のために東京・虎ノ門に設置する「文化センター」の名称が、このほど「台湾文化センター」になることが確定したようだ。同センターのHPなどを見ると、すべて「台湾文化センター」になっているので、本決まりということだろう。
 これまでは組織だけが準備のために先行して発足していた「台北文化センター」は、「台湾文化センター」に改名して、6月12日に正式にオープンすることになっている。

台湾文化センター開設の案内はここから

 文化センターが「台湾」になるか「台北」になるかは、実は、けっこうやっかいな問題であった。というのも、上部機関という位置づけになる台湾の大使館に相当する「台北駐日経済文化代表処」が「台北」となっているのに、その下が「台湾」になっていいのかという問題があったからだ。
 外交関係のない日本において大使館相当の組織を置く際に、「台北」を頭につける名称を使ってきたことは外交的な取り決めのなかで世界共通のような形で実施されているものだが、文化センターについては、こうしなければならないという明確な方針があるわけではない。
 いま台湾の文化センターはニューヨークとパリにもあるが、ニューヨークは「台北文化センター」で、パリは「台湾文化センター」となっている。それぞれの名称決定のプロセスははっきり分からないが、少なくとも日本においては、「台北」にするか「台湾」にするかで、関係者による一定の調整があった末に「台湾」に落ち着いたことは間違いない。だからこと、センター開幕のおよそ一ヶ月を切ったところでの名称変更というところまで引き延ばされたのだろう。

 論理的にも実務的にも、台湾の文化を発信するのだから「台湾文化センター」がいいに決まっている。その方が利用する方も分かりやすい。台南の文化を台北文化センターで発信するというのは変である。しかし、そもそも中華民国あるいは台湾などの「大」の存在を「台北」という「小」の名称で語っているところに台湾の政府機関の名称問題の難しさがあることは言うまでもない。
 まず「台北」の名称を使ってきたのに、ここで「台湾」という名称を使うことに対して、日本の外交当局がどう判断するかという問題があったはずだ。これは、日本側の対台湾窓口である交流協会が、台湾側に対し、水面下で「日本政府として問題なし」という判断を伝えていると推察される。
 一方、台湾の政府にしてみれば、本質的には「台湾」が好ましいことは分かるが、中華民国的価値観からすれば「台湾」をあまりに強調されすぎるのはどうか、という考え方も、もしかすると一部にあったかも知れない。かといって「台北」を強硬に主張するのも変ではある。そのなかで最終的に文化センターの名称に「台湾」を選んだのは、極めて合理的な判断であったと言えるだろう。

 個人的なことを言わせてもらうと、今年1月に出版した拙著「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」のなかでは「台湾文化センター」と書いてしまっていた。これは半ば思い込みでそうなるに違いないという判断があったからなのだが、その後なかなか「台湾」に変わらないので焦っていたが、幸い今回の決定によってこの記述が「誤記」となることを免れることとなったのは何よりである。

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2015-03-29 11:09:23

台湾の「銅像政治学」と今も続く「蒋介石攻撃」

テーマ:台湾の政治・経済・社会
台湾の「銅像政治学」と今も続く「蒋介石攻撃」

*本文は3月20日に国際情報サイトフォーサイトで執筆したものです。



 台湾で昨年上映された映画『行動代号:孫中山(邦題:コードネームは孫中山)』という映画のDVDが2月に発売されたので、早速、『博客来』という台湾のネットショップで取り寄せた。なかなかいい映画だった。5段階評価ならば4か5の星をあげたい。ちょうどこの原稿を書いていたら、大阪アジアン映画のコンペティション部門でグランプリと観客賞をダブル受賞した。台湾の映画賞である金馬奨で最優秀脚本賞も取っている。台湾映画のレベルの高さを示す一作だ。

 タイトルの「行動代号」とは「作戦のコードネーム」という意味になる。孫中山は台湾や中国での孫文の呼び方だ。

 給食費や学級費が払えない貧困家庭の子供たちが団結して「作戦」を立て、小学校の体育館の倉庫に運動用具などと一緒にほこりをかぶって放置された孫文 の銅像を盗み出し、売り払ってお金を稼ごうという話である。

 90分あまりの映画のなかで、中国革命の父として中国近代史で大きな功績を残し、台湾でも国民党一党独裁時代に神格化されていた孫文=国父について、子供たちは一度もその歴史的、政治的な存在意義について言及しなかった。かつては崇拝の対象だった孫文がいまや単なる記号となり、こうした娯楽作品で「消費」され得ることを伝えるため、制作側があえてそうしたとしか思えない。


起源は日本総督府時代?

 今日からは想像がつかないが、台湾にはかつて非常に強烈な銅像文化があった。言ってみれば「銅像政治学」を強制されていたのである。1990年代までは、台湾に行くと孫文と蒋介石という2人の人物の銅像にあちこちで出くわした。孫文の銅像も蒋介石の銅像も、蒋介石と息子の蒋経国の独裁時代に造られた。非公式の統計では台湾全体で蒋介石の銅像は4万5000体もあったという。孫文の銅像も同じぐらい造ったかも知れない。

 この銅像文化が国民党起源かといえば、そうでない面もあった。日本統治時代の50年間にも、台湾ではあちこちに、児玉源太郎や後藤新平など歴代日本総督府首脳の銅像が造られた。国民党はそれを引き継ぎ、さらに強化したのである。

 民主化後、大量に造られた蒋介石の銅像は各地で撤去されて溶かされたが、一部は桃園の「両蒋文化園区」に移設された。そちらには200体ほどあり、一種の蒋介石テーマパークになっている。同じ蒋介石の銅像にも、軍人としての蒋介石を強調した銅像、政治家としての蒋介石を強調した銅像、文化人としての蒋介石を強調した銅像と、いろいろあって面白い。特に、私のように台湾政治を研究する人間には勉強になる。何年かに一度は台北から足を延ばして見に行くことにしている。



 それでも、蒋介石や孫文の銅像はいまも台湾のあちこちに残っている。孫文については銅像が攻撃されたり、崇拝されたりすることはないが、蒋介石についてはそうはいかない。それは、台湾の人々のなかでは、蒋介石の評価についていまも見解が割れているからだ。そのことが如実に示されたのが今年の2月28日だった。

「兇手」「殺人魔王」

 1947年2月28日に起きた台湾民衆の騒乱をきっかけに、国民党政府が台湾で治安維持を理由に無実の人々数万人を惨殺したとされる2.28事件。2月28日は、台湾にとって、日本における5.3(憲法記念日)や8.15(終戦の日)のような特別な意味を持っている日になった。犠牲者の家族は台湾社会でいまも生きており、その不満や怒りは時々の政治状況に呼応して噴出する。

 今年の2.28は、台北市のランドマーク、中正紀念堂の蒋介石座像にペンキをかけるという、過去に1度もなかった「事件」で幕を開けた。台湾メディアの報道によれば、台湾で合計36体の蒋介石銅像が、ペンキで「兇手」「殺人魔王」などと落書きされたり、首部分を切り落とされたりした。

 まさに、各地で「行動代号:蒋介石」が展開された のである。

 この背後には、まぎれもなく国民党の退潮、民進党の復調という台湾の政治状況が投影されている。近年は国民党政権の下で比較的静かであった「反蒋」世論が、再び勢いを取り戻してきたのだ。

 この蒋介石攻撃の世論に対し、馬英九総統は「歴史においては誤りを認め、改めることは必要であるが、同時に、台湾の建設に貢献があった人について、その貢献を抹消することはない」と述べ、疑問を向けた。「中華民国」の伝統を受け継ぐ総統であるという強い自意識を持っている馬英九からすれば、一方的な蒋介石時代の否定はどうしても受け入れることはできないのだ。


「蒋介石のパラドックス」

 しかし、総統の立場でははっきり言えないところもある。その国民党側の主張をさらに明確に語ったのが、国民党立法委員の蔡正元の発言だった。蔡正元は馬英九とも近いと言われるベテラン議員で、テレビのコメンテーターとしてもメディア露出度の高い議員である。

「2月28日のたびに蒋介石の銅像は汚され、壊され、罪人のように扱われる。しかし、もしも蒋介石がいなければ、2.28事件を議論することすら不可能だったのではないだろうか。蒋介石がいなければ台湾は中華人民共和国の領土になり、毛沢東が引き起こした大躍進や大飢饉、文化大革命を経験し、いまごろは習近平と一緒に『中国夢』に向けて邁進していただろう。蒋介石がいなければ蒋経国どころか李登輝も陳水扁もいないし、ヒマワリ運動も起きなかった。2月28日に毎年、涙を流すこともできなかった。最も蒋介石を憎む人間が、実は蒋介石によって最も利益を得ている人間なのだ」

 いささか言い過ぎのところもあるが、確かにこれはこれで一面の事実を突いている主張でもある。中華人民共和国という存在が台湾海峡の対岸にあるから、憎むべき相手に助けられている構図になってしまう現実が台湾にある。いわば「蒋介石のパラドックス」である。

 一方、銅像問題に関連し、民進党の次期リーダーの1人である台南市長の頼清徳は、2.28事件の追悼集会に出席したとき、台南市の小・中学校にある14体の蒋介石銅像について、「権威主義政治に別れを告げ、学校にクリーンな学習空間を与えるためにも、最短の時間で、すべての学校から蒋介石の銅像を撤去する」との方針を明らかにした。

 この時、昔のように台湾の世論で蒋介石評価をめぐって大激論が展開されると思いきや、バランスが取れた意見を発表し、論争に一段落をつけたのは、無所属から台北市長に当選したばかりの柯文哲だった。

 柯文哲の祖父は、2.28事件で逮捕された影響で病を患い、早くに世を去っている。2.28事件の被害者家族の一員である。

 普段の破天荒な発言とは打って変わり、柯文哲は冷静にこう語った。

「蒋介石の銅像を撤去するかどうかだが、私は、歴史は歴史であり、銅像はそこにそのまま残せばいいのではないかと思う。みんなで歴史を乗り越えていくことで(台湾という土地の)主人公になればいい」

 恐らくは、これがいまの台湾社会で最終的に落としどころになる意見ではないのだろうかと私も思う。論争も、その後は潮が引くように静かになった。今後はこうした柯文哲の「歴史(蒋介石)を乗り越えていく」というスタンスが、台湾における銅像政治学に関するスタンダードになっていくかもしれない。

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2015-03-19 10:51:24

台湾「総統選」国民党候補は「王金平」か

テーマ:台湾の政治・経済・社会
台湾「総統選」国民党候補は「王金平」か

*国際情報サイトフォーサイトで3月12日に執筆したものです。

 台湾政治では、国民党と民進党という2大政党のウォッチの仕方はそれぞれ違っている。両党の性格に深く根ざした党文化と言うべき意思決定の特徴があり、その点を理解していないと流れを読み誤ってしまう。

 民進党は、日本の民主党型で、言いたいことを言い合っている間に、次第に結論へ収斂されていく傾向にある。収斂されないときは喧嘩になる。議論の最中はけっこう難しい顔をしているが、決着がつくとすっきりした顔になっていて、「議論は民進党の文化だ」と言って笑っている。

 国民党は自民党的で、内部の議論はあまり表に出ることはない。いわば談合型だ。お互いの利害を調整し、内々でまとまったときに初めて全貌が見えてくる。しかし、だからといって対立がないわけではなく、シグナルを微妙に出しているのでそれを見逃してはならない。どちらかというと、国民党の方がウォッチは難しいし、職人的な作業と読みが求められる。


すでに密約が!?

 そうしたシグナルを総合すれば、この1カ月で見えてきたことはどれも「王金平総統候補」への道筋が敷かれつつあると理解できる。

 王金平は現立法院長(国会議長)で1941年生まれ。台湾南部に地盤を置く国民党本土派(非外省人系)のベテラン政治家で、12期にわたって立法委員を務め、1999年からは立法院長を務め続ける。いわば「国会のボス」だ。李登輝元総統に近く、馬英九総統とはあまり関係が良くないとされてきた。

 まず、朱立倫・国民党主席は、昨年馬総統が提起した王氏の「口利き」疑惑について、党内での処分手続きを継続しないことを最近決めた。この問題を「是々非々」として強硬に処分を主張していた馬英九総統の意向に反するもので、その決定の直後、馬総統は朱氏とのイベント同席を直前でキャンセルして不満を明らかにし、馬・朱関係にヒビが入ったことが示された。

 一方、朱氏サイドから王氏に対し、「朱氏はは出馬しない」との意向が伝えられたという報道が流れた。これは、どちらかが言わない限り表に出ない話で、反応を見るための観測気球として流された可能性は否定できない。

 出馬に関する王氏の言葉も、次第に「否定」から「曖昧」なニュアンスの言い方に変わってきている。最近でも王氏出馬を伝えるメディアの報道で「それはメディアの見解。出るか出ないかは私自身の見解次第だ」と述べた。台湾の政治的言語の読み方で言えば、出馬に傾いていると見えなくもない。

 こう考えると、王・総統候補、朱・副総統候補というコンビの可能性が高まっていると感じさせる。ただ、朱氏は副総統としても出馬せず、党主席として支える方向に傾いているとも言われる。いずれにせよ、王氏出馬は王、朱両氏にとってメリットがある。それゆえに、2人の間ですでにある種の「密約」が形成されたと疑われても仕方がない。



辛い立場になった馬総統

 もともと王氏は総統への野心があったが、馬総統に2005年の党内選挙で大差の敗北を喫して夢を断たれた。以来、王氏と馬氏の間には拭いきれない不信感が生まれた。一方、朱氏は、人気は国民党で一番手だが、自身は今回の出馬は不利とみて、出馬しない方向に傾いているとされる。逆に、高齢の王氏は立法院長の座に選挙後もとどまれるかどうかは国民党自身の過半数が危ぶまれるなかで保障されておらず、ここで人生最後の一か八かの勝負に出ようという気持ちになっても不思議ではない。馬総統が念頭に置いていたと見られる呉敦義副総統は、世論調査で支持率が低すぎて勝負にならないとの見方が強い。

 もし王氏立候補となっても国民党の苦戦は変わらないが、同情したくなるのは馬総統だ。11月の地方選敗北の責任をとって党主席を退いたことで、総統候補選びにおいて、発言権はあっても決定権はない馬総統は主導できない立場になったことが今回はっきりとなった形だ。不満を口にするほど、「党の団結を壊さないで欲しい」という声が党内からは浴びせられ、沈黙を強いられる。

 しかし、選挙戦となれば、現職総統として王氏の手を握って投票を呼びかけなければならない場面が何度もあるに違いない。「台湾司法で最も暗い1日」と呼んで、王氏の「口利き」を批判して政治生命を奪おうとした馬総統にとっては、その輝きに満ちた政治家人生の最終局面で、政治の残酷さを嫌が応にも味わう日々が待つことになるかもしれない。
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