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生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

米国人から見た日本の生活保護制度への違和感

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第4回】 2015年4月3日
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 冒頭で紹介した、

 「日本の生活保護受給者って、ずいぶん少ないんですね」

 というコメントを発した女性は、続いて、貧困率と保護率を比較したグラフ(2ページ下)を指さし、

15~20%程度とみられる生活保護の捕捉率(利用率)を高めるために、日弁連が作成したパンフレット。ここからダウンロードできる

 「貧困率は高いのに?」

 と質問した。続く会話は、

 「ええ、生活保護の利用率(捕捉率)が低いんです」
 「なぜ?」
 「政府が、生活保護の利用を抑制したいからです」
 「でも、公的な制度でしょう? 国民に周知されてないの?」
 「国が全く積極的でないので、弁護士団体が周知する努力をして、申請を支援しています」

 となった。頭の中に「?」が飛び回っているような表情をしている相手に、

 「このことは国連でも改善が勧告されています」

 と述べたところ、何となく納得してもらって、別のディスカッションに移ったような記憶がある。

 また、生活扶助相当CPIそのものに関する批判コメントも数多くいただいた。ある男性は、

 「そういう恣意的な基準決定をチェックする公的機関は、日本にはないんですか?」

 と質問してきた。残念ながら存在しない。直接被害を受けた生活保護利用者本人による違憲訴訟が、公的なチェックへと持ち込むための唯一の手段である。

 さきほどとは別の女性は、

 「生活保護受給者を孤立させたり、厚労省に基準部会委員の専門知の『ツマミ食い』を許す社会構造を変える可能性はないの?」

 と質問してきた。私は、

 「特に昨年から、子どもの貧困に対する国民的関心が高まっています。解決するための社会的活動も、あちこちで活発に行われ、ネットワーク化されています。多くの人々の関心が、社会の風土や構造に風穴を開ける可能性はあると考えています」

 と答えた。

 日本人にとっても理解しにくく説明が困難な問題の数々を、下手な英語でしどろもどろになりながら説明しつつのディスカッションではあったが、来場者は概ね、納得し、満足し「今後に期待します、国際比較もしてくださいね」「日本の良い成り行きを願っています」とコメントし、握手して去っていった。日本人のうち3名も、同様の反応であった。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、2匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

生活保護当事者の増加、不正受給の社会問題化などをきっかけに生活保護制度自体の見直しが本格化している。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を紹介しながら、制度そのものの解説。生活保護と貧困と常に隣り合わせにある人々の「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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