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【社説】

東芝不適切会計 企業統治はどうなった

 東芝が社長の関与で利益を二千億円もかさ上げしていた疑惑が強まっている。日本を代表する企業の経営者が部下に圧力をかけ、保身のために業績を良く見せようとしていたとすれば言語道断だ。

 疑惑の発端は今年二月、証券取引等監視委員会(監視委)への内部通報とされ、調査が始まった。東芝は四月に社内調査を始めたが進まず、五月、上田広一・元東京高検検事長を委員長に外部の専門化による第三者委員会を設けて実態解明を急いでいる。

 損失や費用の計上を先送りするといった不適切な会計処理でかさ上げされた営業利益は当初、インフラ関連工事を中心に二〇一四年三月期までの五年間で五百億円程度とされた。

 ところが第三者委の調査が進むと半導体、パソコン、テレビなど主要事業すべてに広がり、過大に計上された営業利益は総額で二千億円規模に達する見込みとなっている。

 深刻なのは、佐々木則夫前社長、田中久雄現社長と二代にわたり、収益目標の達成に向けてメールや電話などで部下に強い圧力をかけ、過大な利益計上を促したとみられる点だ。

 不適切会計の背景には〇八年のリーマン・ショックによる業績悪化、原発事業が打撃を受けた一一年の東日本大震災があるが、企業経営が想定外のショックに直面することはいくらでもある。トップとしての地位と評価を守る狙いで、目先の短期的な利益をかさ上げする不適切な会計処理を示唆していたとすれば、その時点で経営者失格といえる。

 一一年のオリンパスの粉飾決算事件でも問題となったチェック体制、監査機能もあらためて問われている。

 取締役会にはチェック機能が期待されるが、人事、経営全般にわたり権力が集中している経営トップを、内部昇格してきた社内取締役が批判するのは難しい。東芝は四人の社外取締役に加え、社内に監査委員会を設けていたが機能しなかった。外部の監査法人による会計監査も巧みにすり抜けていた。

 東芝は連結売り上げが六兆五千億円、二十万人の従業員を抱え、過去に経団連会長を輩出するなど日本の産業界の屋台骨を支える企業でもある。第三者委員会、監視委は有価証券報告書の虚偽記載なども含め、厳しい調査で東芝の経営に何が起きたのかを明らかにしてほしい。

 

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