(岩渕)近年、日本のマンガ・アニメ・ゲームはクールジャパンといわれ日本を代表する文化の一つとして世界中で人気があります。そんな中、今東京六本木にある国立新美術館で「ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム1989」という国立の美術館としては初めての試みの展覧会が行われています。この展覧会には、どんな意味があるのか中谷日出解説委員に聞きます。
Q.どんな展覧会なんですか?
【VTR】
ご覧のような様子です。1989年から現在までのおよそ25年間に制作された日本のマンガ・アニメ・ゲーム作品を総合的に展望できる展覧会になっています。日本のみならず世界で人気の現代日本を代表する作品およそ130点が展示されています。
Q.どうして1989年からの作品なんですか?
1989年は平成元年なんです。そして、1989年に戦後の日本のマンガ・アニメのパイオニアと言われるあの手塚治虫さんが亡くなった年なんです。年号も変わり、マンガ、アニメの世界も手塚さんら日本のマンガ・アニメ創世記の人々が作り上げた時代から新しいステージに入った年と言えるのかもしれません。ご存じのように平成に入り日本そして世界では幾度かの震災やテロなどの事件を経験しました。日本はバブルも崩壊し、経済中心の考えから、この展覧会のようなマンガ・アニメ・ゲームなどのポップカルチャーを中心とした文化の時代に変化してきた時代といていいと思います。また、インターネット普及やテクノロジーの進化は私たちの意識や生活を大きく変えてきました。マンガ・アニメ・ゲームは社会の写し鏡。この年表にあるように様々な社会的な出来事や技術の進化をテーマにした作品も数々作られました。
Q.どんな作品がどんなふうに展示されているのですか?
この展覧会は、同時代の社会やテクノロジーと作品との関係を表すためにご覧のように8つの章で構成されています。
まずは、友情や正義の心に支えられたヒーロー・ヒロインが描かれた作品群です。世界でも絶大な人気を誇るヒーロー・ヒロインが1989年以降誕生しています。
そして、あの手塚治虫さんは鉄腕アトムでロボットと共生する未来社会を描きました。それが当時の子どもたちに夢を与え、多くの科学者を生み間接的に社会に大きな影響を与えました。マンガ・アニメ・ゲームにはそんな大きな力があります。
これは2007年にNHKで放送されていた「電脳コイル」という作品です。202X年の子どもたち中心とした生活を描いた物語ですが、この中で描かれていること、たとえば、子供たちがしているメガネは、スマホに変わる情報機器の本命として現在いくつかのメーカーから販売され始め、普及にむけて研究が進んでいます。未来をリアルに描く作品として評価されています。
そして、作品の生み出し方も大きく変わりました。こちらの作品はまずインターネット上で公開されそこで人気に火が付き完全版として劇場公開につながりました。そして、インターネットで資金を集めるクラウドファンディングによってブルーレイディスクが制作されたというまさにインターネット時代だからこそ生まれた作品です。この作品もロボットと人間が共生する未来社会を描いた作品です。世界中にファンをもつゲームも数多く展示されています。ご覧のようにゲーム機も歴史をたどっています。おおっ懐かしいという声もありました。
実在する場所を舞台にした作品も数多く作られました。日本だけではなく世界中から多くのファンが撮影された場所を訪れる。これを新アニメ用語で聖地巡礼といわれていますが、ブームになりました。私も聖地埼玉の秩父に取材に行きましたが、アジアからのファンがたくさん訪れていました。地域活性化、町おこしにアニメが役だっています。
Q.日本のマンガアニメゲームは海外で絶大な人気と聞きますが、はり外国人の入場者も多いのですか?
私は3回取材を含め会場に行きましたが、どの日も欧米をはじめ多くの外国人のお客様がいらしていてものすごく盛り上がってました。表示説明も英語表記してありますから外国人の方々にもわかりやすいですね。
それから、ちょっとこちらをご覧ください。これ今回無料で配布されているガイドブックです。これ今回の私の一押しです。少女と猫が主人公のマンガでこの展覧会の各章の構成や意味がわかるようになっています。日本人用だけでなく外国人用の英語版もあります。作品が多いので全体を把握するのが大変なのですが、このマンガで描かれたストーリーで数分で全体が把握できちゃうんです。まさにマンガやアニメの物語を一瞬で把握させる力を利用したこの展覧会ならではの企画と言えます。でも展覧会でこのようなマンガでわかりやすいガイドブックが作られることはあまりありません。
Q.このような展覧会は今までなかったんですか?
そうなんです。国立の美術館の独自の企画でこのような展覧会をすることは初めてなんです。会場の国立新美術館の館長は、元文化庁長官の青木保さんです。
この企画青木さん自身の企画ということです。日本ではサブカルチャーといわれ芸術としては一段格下に思われているマンガ・アニメ・ゲームですが海外での人気を体験するにつけこのような展覧会が必要だという強い思いがあったということです。日本の特有の知的財産をもっと生かしてさらに成長させることが大事だということなんです。この展覧会海外への巡回展も視野に行われているということです。
しかし、まだ日本を代表する作品すべてが参加しているわけではありません。日本のマンガ・アニメ・ゲームのまさに全貌が見える展覧会にして世界の人々に日本の作品の魅力が伝わると日本のマンガ・アニメ・ゲームの未来が見えてくるのではないでしょうか?