児童買春・ポルノ禁止法改正:「単純所持罪」どう運用?

毎日新聞 2015年07月14日 21時49分(最終更新 07月14日 22時09分)

 児童買春・ポルノ禁止法の改正を受け、15日から、個人の性的好奇心を満たす目的で子供のわいせつな写真や映像を所持する行為(単純所持)に罰則が適用される。単純所持罪の導入を巡っては、法改正の論議のなかで「捜査権が乱用される恐れ」が指摘された経緯があり、警察庁は全国の警察本部に対し「客観的な証拠に基づく捜査を徹底」するよう要請している。

 同法は1999年に成立した。単純所持罪の導入は当時から議論されてきたが、プライバシーや表現の自由の侵害につながるとの意見も根強く、日本は先進主要7カ国で唯一、同罪の規定がなかった。欧米からは「日本は児童ポルノの供給国になっている」と批判されてきた。

 警察庁によると、昨年の児童ポルノ事件の摘発件数は前年比11%増の1828件、被害児童(18歳未満)は同15%増の746人でいずれも過去最多。被害児童のうち138人は小学生以下で、約7割が強姦(ごうかん)や強制わいせつの被害を受けて写真や映像を撮られていた。

 15日からは単純所持が処罰対象となり、「自分の性的好奇心を満たす目的」と「自分の意思で所持」の二つの要件が立証されれば1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる。

 ただこれらの要件を立証するのは容易でなく、警察幹部は「摘発には慎重にならざるを得ない」と話す。たとえば、パソコンに画像を所持した人が「勝手にメールで送られたものを消し忘れていた」と主張した場合、通信履歴や閲覧履歴などの捜査を尽くし、供述がうそかどうかを調べる必要がある。警察庁は「現行犯逮捕できるケースは極めて限定的」との見解を都道府県警察に示している。

 元検察官でインターネットの問題に詳しい落合洋司弁護士は「最優先に取り締まるべきは児童ポルノを作り出している業者や大量所持者、ネットへの配信者など悪質性の強い人」と指摘。「個人で所持している人の中には、児童ポルノに当たるかどうか判断できない人もいるだろう。過剰な取り締まりを防ぐためにも、まず本人に処分を促し、応じれば立件を見送るなど状況に応じた運用が大切だ」と話している。【長谷川豊、斎川瞳】

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