「英語不要論」も なぜ英語力は身につかないのか:イザ!

2014.12.20

英語教育「英語不要論」も なぜ英語力は身につかないのか

 英語教育の“抜本的改革”は過去幾度となく繰り返されながら、子供たちに英語力が身についたとの実感が乏しいのも事実。改めて考えてみたい。英語って本当に必要なのか-。

本当に必要か…大学関係者から漏れる英語不要論

 文部科学省の中央教育審議会で、子供たちが実用的な英語を学ぶ環境づくりを進める議論が本格的に始まった。平成28年度にも改定される新学習指導要領では、小学生高学年…[記事詳細へ]

《小学生高学年から教科として導入される見通し》

 文科省の中央教育審議会で、子供たちが実用的な英語を学ぶ環境づくりを進める議論が本格的に始まった。平成28年度にも改定される新学習指導要領では、小学生高学年から教科として導入される見通しだ。高校でも討論や交渉力を高める方針が示されている。

「英語」は本当に必要なのか…大学関係者から漏れる英語不要論

短大側「英語を話す必然性はない」

■差し迫った課題ではない

 文科省は2014年12月2日、「英検」や「TOEFL」などの資格試験を大学入試に活用できるか検討する有識者会合を立ち上げた。活用の是非とは別に、「現在の日本の段階では、英語を話す必然性はないと思っている」と日本私立短期大学協会副会長の奥田吾朗委員が述べ、英語力の向上が短大生の生活に差し迫った課題ではないことに言及した。

「英語」は本当に必要なのか…大学関係者から漏れる英語不要論

■福祉などの比重を高める短大

 同じく有識者会合で、全国公立短期大学協会副会長の中村慶久委員も英語教育の改革を「えらく遠い話のように感じる」と話した。短大教育が医療や福祉、保育などの分野の比重を高める中で、英語教育の推進に対する教育者側の感覚的な違和感ともいえる。

「英語」は本当に必要なのか…大学関係者から漏れる英語不要論

財界側「ビジネスにおいては必然性は高い」

■「企業が語学教育せざるを得ない」

 「英語教育の必然性はない」と述べた奥田委員らに対し、財界側から出席した経団連の教育問題委員会企画部会長の三宅龍哉委員は「ビジネスにおいては必然性は高い。社員を海外駐在などへ送り出す際、(企業が)語学教育をせざるを得ない現状だ」と正反対の意見を述べた。

「英語」は本当に必要なのか…大学関係者から漏れる英語不要論

■なぜ英語力は身につかないのか

 実用的な英語力の必要性は、これまで幾度も繰り返されてきている。元大学入試センター教授の小野博・福岡大客員教授は「授業づくりの前提に、学習内容の差別をしないという平等主義があった。そのため、学校に習熟度別など効率的な英語取得法が取り入れられてこなかった」と指摘する。

「英語」は本当に必要なのか…大学関係者から漏れる英語不要論

中高生『英語が必要』という意識はあるが…

■半数が「英語使うことない」

 ベネッセ教育総合研究所が全国の中高生約6200人を対象にアンケートを行ったところ、9割以上が「仕事で英語を使うことがある」など社会生活での英語の必要性を感じていることが分かった。一方で、中学生の44%、高校生の46%が「英語を使うことはほとんどない」と回答した。

「英語」は本当に必要なのか…大学関係者から漏れる英語不要論

■「英文を日本語に訳す」受け身の授業

 同じくベネッセのアンケートでは、学校での授業内容についても、中高の約8~9割が「英文を日本語に訳す」「単語の意味や英文の仕組みについて先生の説明を聞く」と回答するなど受け身的。「授業での学びと、英語を使うことにも大きなずれがある」(ベネッセ教育総研の加藤主任研究員)のが現状。

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「英語」は本当に必要か

■求めるのは「ツールとしての英語」

 立教大では、より実戦的な英語を学べる「異文化コミュニケーション学部」を新設すると、教養英語中心の文学部英米文学科の志願者が激減し、新設学部に人気が集中した。塚本副総長は「学生が求めていたものが教養としての英語ではなく、ツール(道具)としての英語だということが分かった」と語る。

「英語」は本当に必要なのか…大学関係者から漏れる英語不要論

■「能力や希望に応じた学習の場を」

 元大学入試センター教授の小野博・福岡大客員教授は「外交官や通訳など高度な英語力が必要とされる人と、アジアへ向かうビジネスマンとでは、求められる単語数や発音などは異なる。それぞれの能力や、将来の希望などに応じた多様な教育の枠組みを作っていくことが大切だ」と指摘する。

「英語」は本当に必要なのか…大学関係者から漏れる英語不要論

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