[写真]路上で最も見かけるハイブリッドはアクアとプリウスだろう。トヨタのホームページではエマージェンシー対応方法が車種別に掲載されている。画像はアクアの車両システム停止方法

 クルマに乗っていると、様々なトラブルに出会うことがある。例えば、目の前でハイブリッド車が事故を起こした時、どうすればいいか? 事故によって乗員がぐったりしているなど、外部からの緊急救助を要するような場合、救助する手順が従来のクルマと違う場合もある。

 さらに、最近のクルマには様々な安全デバイスが付いていて、レスキュー時にはその誤作動に気をつけなくてはならないことも多いのだ。例えばエアバッグ。救出中に万が一作動したら救助者も被救助者も大怪我をしかねない。仮に事故車の搭乗者が頚椎(けいつい)になんらかの損傷を負っていたりしたら、エアバッグの作動が致命傷になる可能性もある。

 そうした装備をどうやって確実に止めて、救助するかについてはあまり記事を見かけないし、多くのドライバーは知らないのではないかと思う。今回はトヨタのハイブリッドとプラグインハイブリッド(PHV)を例に、緊急レスキューの際に知っておくべきことをまとめてみたい。

エンジン停止は走行システム停止ではない

[写真]メーターやナビ、エアコンなどが作動している場合、エンジンがかかっていなくても走行システムは起動中だ。条件によってエンジンを再始動することがある

 搭乗者救出の際には、ドアロック、パワーウィンドウ、電動チルト&テレスコピックステアリング、電動シート、電動パーキングブレーキなどの操作が必要なケースも多い。次の手順で走行システムをオフにするが、その前に、これらの作業をまず行う。電動式の各種機構は電気をストップしてからは操作できないからだ。

 特にバッテリーの接続を切ってからこれらの操作が必要になると大きく時間のロスが起きるので、まずはパーキングブレーキをかけてクルマを固定し、ドアや窓を解放してアクセスの自由を確保する。さらにステアリングやシートを救出に適した位置に調整をすることが大切だ。

《ステップ1》車両システムをオフにする

[写真]エンジン/パワースイッチは、押す毎に切り替わる。クルマと状況によって「オン/オフ」の2ステップの場合と「オン/アクセサリー/オフ」の3ステップの場合がある

 次に行うべきは、車両システムをオフにすることだ。ハイブリッド(含むPHV)を運転したことがある人なら分かるだろうが、これらのクルマは走行中常にエンジンがかかっているわけではない。モーターのみで走行して、必要な時にエンジンが起動する。つまり目の前の事故車のエンジンが止まっているからといって、車両システムがオフの状態にあるとは限らないのだ。

 まずは車両システムを確実に止めなくてはならない。トヨタでは以下の一つでも当てはまれば、車両は起動状態にあると説明している。

・エンジンが動いている
・イグニッションキーの位置が「ACC」「ON」「START」のいずれかにある
・メーターが点灯している
・エアコンが作動している
・オーディオが作動している
・ワイパーが作動している
・ナビやディスプレイが表示されている

 なぜ車両システムが完全に停止されていなくてはならないのかと言えば、上述したエアバッグなどの救出中の誤作動を止めるためだ。車種によっては非常に多くのエアバッグが装備されている。トヨタの場合で見てみると最大では実に10種類ものエアバッグが搭載されている。

(1)運転席 SRS エアバッグ、(2)助手席 SRS エアバッグ、(3)SRS フロントニーエアバッグ、(4)SRS フロントサイドエアバッグ、(5)SRS フロントシートクッションエアバッグ、(6)SRS カーテンシールドエアバッグ、(7)SRS リヤサイドエアバッグ、(8)SRS リヤシートクッションエアバッグ、(9)SRS リヤウインドウカーテンシールドエアバッグ、(10)SRS 後席センタエアバッグ

 これらのどれがクルマについているかを現場で判別するのは不可能だ。衝突の衝撃で感知センサーが壊れて、いつ作動するか分からない状況にある場合も考えられる。まずは全エアバッグの動作を完全に止めることが求められる。

 さらにシートベルトプリテンショナーも危険性がある。シートベルトプリテンショナーは、衝突時にシートベルトを火薬の力で巻き取って体をシートに固定する仕組みだ。燃焼圧力で強力に体を拘束するので、救出作業中に作動すればやはり怪我の原因になる。これも止めなくてはならない。

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