小学生のガウスが足し算をあっという間に計算したというあの逸話は、
実はもっと複雑な計算だったとする説がある。 広く知られているのは、1から100までを足す計算。 1+2+3+・・+98+99+100 =(100+1)×100÷2 =5050 小学生のガウスが等差数列の和を求める公式を編み出したのは驚異的である。 ただ、この逸話は読者が理解しやすいように伝記作家が簡略化したものらしい。 よくよく考えると、1から100まで足す計算は、 単純に足し算を繰り返したとしても、一時間もあれば多くの小学生が答を出せるだろう。 ガウスほどの大天才を語り継ぐ題材としては、凄味に欠けるのである。 大人が計算しても時間がかかったり、計算ミスを誘発するような計算が望ましい。 本来の計算はこうであったとする説がいくつかある。 有力な説は、81297から始まり198ずつ増える数を100個足す計算。 81297, 81495, 81693, ・・・, 100503, 100701, 100899 これらの合計を求めよ、と。 数字をすべて書きならべるのは面倒であるが、 教師はこれら100個の数字をわざわざ書いてから合計を求めよと命じて欲しい。 解く側にとってハードルが高くなるからだ。 生徒は100個の数を眺めて規則性の有無を検証しなければならない。 羅列された数の一部から規則性を見出して、一般化し、 定理として証明するのは数学的な思考そのものである。 ガウスの逸話としては、これが望ましいと思う。 一方、「81297から始まり198ずつ増える数を100個足せ」という出題方法なら、 設問自体が数の規則性を表現しており、等差数列のヒントになっている。 大ガウスに失礼である。 ガウスの計算方法は次のとおり。 81297+81495+81693+ ・・・ +100503+100701+100899 =(81297+100899)+(81495+100701)+・・・+(100899+81297) =182196+182196+・・・+182196 =182196×100÷2 =9109800 ちなみに、あまり美しくはないが、別解を考えてみた。 81297+81495+81693+ ・・・ +100503+100701+100899 =(81297+198×0)+(81297+198×1)+(81297+198×2)・・・+(81297+198×99) =81297×100+198×(0+1+2+・・・+99) =9109800 この計算でポイントとなるのは (0+1+2+・・・+99) の部分をいかに算出するかにある。 そこで、伝記作家が出題自体を(1+2+3+・・・+100)という問題に変更して、 それが世間に広まったのではなかろうか。 なんてことを想像しているのだが、ホントのところはわからない。 いずれにしても、1から100まで足す計算だけでは大天才を矮小化しているようで、 ガウスの並はずれた数学的なセンスを語る題材として適当とは思えない。 センスといえば、卓越した数学的センスとしか表現のしようのないセンスで 15歳のときガウスは素数の分布を予想した。(それを発表したのはだいぶあとのこと) いわゆる素数定理がそれで、x 以下の素数の数を π(x) とすると π(x)~x/log(x) となる。 前述の等差数列は数字の並びを眺めているうちに気が付くかもしれないが、 素数の何を観察すれば log(x) などというモノが出てくるのか 凡人の私には到底理解できない。 バーゼル問題では有理数の和がπ^2/6という無理数に収束する点で それを解いたオイラーに底知れぬ数学的なセンスを感じるが、 素数定理のガウスの天才ぶりにも驚く。 ※オイラーの数式は 1月3日付の当blog をご参照ください。 しかし、驚くのはまだ早いのであった。 もっとスゴイものがある。 十代後半のガウスは正十七角形の作図方法を発見するのである。 あるとき「思いついた」そうだ。 定規とコンパスで正多角形(辺の数が素数)を作図する問題は、 古代ギリシア時代に正五角形がクリアされて以来、実に2千年ぶり。 しかも、正十七角形というワケのわからない多角形の作図方法である。 作図方法を説明するgifアニメがWikipediaに掲載されている。 こちら へぇー、としか言いようがない。 これを「思いつく」というのは、一体どういう現象をいうのだろうか。 解法は こちら 。 それらの数式の羅列を見て、吐き気をもよおすのが正常な人間だと思う。 従って、私も正常な人間として胸を張る資格がある。 吐き気をこらえて数式を嘔吐、じゃなくて数式を追うと、 どうやらこの解法は、まず2次方程式 X^2+X-4=0 の解を求め、 その解を係数とする2次方程式を解き、 さらにその解を係数とする2次方程式を解き、 もひとつオマケにその解を係数とする2次方程式を解くこと、らしい。 要は、何がなんだか、わからないのである。 凄すぎて賞賛する言葉が思いつかない。 ガウスは作図しただけでなく、17個の頂点の各座標を精密に計算したという。 電卓もパソコンもない時代だから手計算である。 その手計算がどれほどスゴイかは、もはや想像すらできない。 これだけでも実績として十分だと思うが、 正十七角形の作図方法を解明したことに自信を深めたガウスは 数学者になる決心をしたという。 作図可能な正多角形に関して、 フェルマー素数と関連があることが証明されているが、それはさておき、 当blogには数学者となったガウスの功績を書き記す余白が残されていない。 by hikihitomai | 2010-05-29 23:07
|
since 2006.09.22
カテゴリ
タグ
以前の記事
2015年 07月
2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 | |||||