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「何度言ったらわかるんですか、黒洲(くろしま)先生? 先生のやっていることは覗き、痴漢行為ですよ」 私はレオタードの上にジャージを羽織り、体育館入り口でうろついていた黒洲先生に言い放つ。 最近いつもいつもこの太った中年教師は新体操部の練習を覗き見ているのだ。 最初は気がつかなかったが、レオタード姿の生徒たちがそわそわしているので、どうしたのか聞いたところ、時々黒洲先生が覗いているというではないか。 顧問としてそんなことを許すわけには行かない。 それにいつも汗をかいている、この太った中年教師が私はどうも好きになれない。 薄笑いを浮かべて反省している様子のまったく見えないこの男に私は苛立ちを覚える。 「黒洲先生、もし今後もこういうことがあれば、職員会議に提出しますので。そのつもりでいてくださいね」 「いやはや、誤解ですよ吹浦(ふくら)先生。私はたまたま通りかかっただけですから」 汗を拭き拭きニヤニヤと笑っている黒洲先生。 こんな男が生徒たちのレオタード姿を覗いていたのかと思うとぞっとする。 「わかりました。黒洲先生は方向音痴なんですね? 国語科準備室がこちらにあると思っておられるようですから」 「なっ・・・」 「とにかく、このあたりをうろつかれると迷惑なんです。生徒たちも萎縮していい演技ができなくなるんです。インターハイで不本意な成績を残したくはありませんので。いいですね!」 私は相手に言い返す暇も与えずに一気に言い放つ。 これぐらい言ってやらなければわからないでしょうからね。 国語化教師が聞いて呆れるわ。 「クッ」 何か言いたそうだった黒洲先生だが、私は体育館の入り口をぴしゃりと閉める。 ふん、いい気味だわ。 「先生お見事」 「先生ありがとー」 「吹浦先生やるー」 「デブ黒いい気味ー」 新体操部や体操部の女生徒たちが口々に歓声を上げてくれる。 インターハイ間近の今、生徒たちは本番同様にレオタード姿なのだ。 観客に見られるのはともかく、興味本位でいやらしい視線に晒させるわけには行かない。 顧問である私が彼女たちを守らなくちゃね。 黒洲のような変態教師なんてさっさと首になればいいのよ。 私がきつく言ったせいか、あれから黒洲先生は体育館近くには姿を見せない。 国語科準備室に篭もってなにやらしているらしいけど、生徒たちを覗き見しないのなら問題は無いはず。 もっとも、教師としての腕前もあまり褒められたものではないみたいなんだけどね。 時々教頭先生に嫌み言われているようだし。 あーあ・・・あんな人さっさとやめちゃって欲しいなぁ。 顔を見るだけで不愉快な気分になっちゃうわよね。 「吹浦先生、遅くまでご苦労様」 新体操部の顧問として部活動を指導していた私が職員室に戻ってきた時には、すでに夜の9時を過ぎていた。 寒々とした蛍光灯の灯が一画だけ点いている職員室は、普段ならもう誰もいないはずだった。 私は職員室の明かりを消し、戸締りを確認して守衛さんに鍵を渡すだけで一日が終わるはずだったのだ。 「黒洲先生・・・」 私は太ったこの中年男が職員室に残っていたことに驚くと同時に、思わず身構えてしまう。 こんなところでとも思うが、この男なら人目が無ければ私を襲うぐらいはしかねないと思ってしまったのだ。 「お疲れ様です。ずいぶん遅くまでお残りですね」 私はできるだけ内心の不安を出さないように、当たり障りの無い言葉を交わしてさっさと職員室を出ようとした。 まずったわね。 帰りに着替えるつもりで、職員室まではレオタードの上にジャージを羽織っただけで来てしまったのだ。 黒洲先生にしてみれば、まさに獲物がかかったようなものかもしれない。 「いやいや、待っていたんですよ、吹浦先生」 「クッ」 私は思わずあとずさる。 やっぱりこの男は私を待っていたんだわ・・・ 守衛室まで逃げた方がいいのかしら・・・ でもまさかそこまでは・・・ いざとなれば大声上げれば守衛さんに聞こえるかな・・・ 「吹浦先生。この通りです」 そう言って深々と頭を下げる黒洲先生。 「えっ?」 私は一瞬面食らってしまった。 黒洲先生が謝っている? 「いやはや、年甲斐も無くレオタード姿の少女たちに見惚れちゃったんですなぁ。それでもう少し見たいと思い、つい覗きのようなマネをしてしまいました。謝って赦されるものではありませんが、この通りです。赦して下さい」 頭を下げ、謝罪する黒洲先生。 「や、やめてください。頭を下げられても困ります」 私はとりあえず油断しないようにして黒洲先生の様子を窺う。 もしかしたら私を油断させようとして・・・ ふう・・・ ここまで疑っちゃうなんて私もどうかしているかもね。 本心で謝っているのかもしれないし・・・ 「吹浦先生にも大変ご不快な思いをさせてしまいました。幾重にもお詫びします」 国語科教師らしく、丁寧な口調で謝る黒洲先生。 「わかりました。でも二度としないで下さい。もし今後同じようなことがあれば・・・」 「いやいや、そのご心配は無用です。私は明日、辞表を提出いたしますから」 頭を下げたまま、懐から封筒を取り出してみせる黒洲先生。 まさかそこまで・・・ 「黒洲先生、私はそこまでは・・・」 そりゃあ、やめればいいとは思っていたけど、これじゃ私が追い出したみたいじゃない。 私は黒洲先生のそばへ行き、そこまでしなくてもと言うつもりだった。 「おっと・・・」 はらりと黒洲先生の手から封筒が離れ、私の足元に落ちてくる。 「あ・・・」 私は無造作にそれを拾い、黒洲先生に差し出した。 「えっ?」 私の目の前に突き出される木彫りの人形。 古びたもので、黒ずんでいて、何か得体の知れない雰囲気がある。 いや、それよりもその人形が耳まで裂けたような口で笑っている。 この人形はいったい? 角みたいのが頭にあって・・・ まるで・・・ まるで悪魔のような・・・ 「ふふ・・・あは・・・あははははは・・・」 まるで目の前の人形が笑い出したかのような笑い声。 その笑い声が黒洲先生のものだと理解するまでに、私はちょっと時間が掛かった。 「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ・・・」 黒洲先生は笑い続けている。 何がそんなに可笑しいのかしら。 それよりも・・・ どうして私はこの人形から目が離せないのかしら・・・ 「うひゃひゃひゃ・・・引っかかりましたね吹浦先生」 引っかかった? 何に引っかかったと言うの? 「うひゃひゃ・・・この人形はね、私の友人が南米で呪術師に押し付けられたものでしてね。現地では心をゆがめる悪魔と言うそうですよ」 「心をゆがめる悪魔?」 私はまったくこの人形から目が離せない。 ニヤニヤ笑う口の中にはご丁寧に牙らしいものまで彫られている。 両手を腕組みして、人間をあざ笑っているかのよう・・・ 「ええ、友人は知らなかったようですがね、私はこれがまぎれもない本物だとわかったんですよ」 「本物?」 「そう、これは心をゆがめてくれる悪魔なんですよ。持ち主の思った通りにね」 持ち主の思った通りに? 私はぞっとした。 それが事実ならば、私の心は黒洲先生にゆがめられてしまうということなの? まさか・・・ 「もちろん無制限じゃありません。悪魔には取引が必要ですからね。うひゃひゃひゃひゃ・・・」 ぞっとするような笑い声を響かせる黒洲先生。 私はただそれを聞きながら立ち尽くしていた。 「さて、吹浦先生にはこれから私の女になってもらおうかな。君は結構その体つきがいやらしくてね。レオタード姿を見ては勃起していたよ」 鳥肌の立つような黒洲の言葉。 でも私は彼がどんな顔をしているのか見ることができない。 きっといやらしく笑っているんだわ。 最低。 こんな男の言いなりになるなんてありえない。 こんな人形で何ができるのよ。 「黒洲先生! いい加減にしてください! 訳のわからないことはもうやめておとなしく私を解放しなさい。さもないと大声を出しますよ」 私は人形から視線をそらすことができないまま、どうにかして黒洲の卑劣な行動から逃れようとしていた。 催眠術とかで聞いたことがあるわ。 何らかの拍子に相手に催眠をかけ、視線をそらすことができなくさせる。 黒洲がやっているのもきっとそれだわ。 暗示に掛かりやすいとは思いたくないけど、黒洲の言いなりになるような暗示なんてごめんこうむるわ。 催眠術は相手が嫌がることはさせられないはず。 絶対に言いなりになんかなってやるものですか! 「おやおや、私に逆らってはいけない。"君は目の前にいる黒洲鐐造(くろしま りょうぞう)を人間的にも男としても敬い尊敬しているのだから"ね」 ふざけたことを言わないで! 黒洲鐐造を人間としても男としても敬い尊敬しているですって? そんなの当たり前じゃない! 私は黒洲先生をすごく尊敬しているわ。 黒洲先生は素晴らしい教育者ですもの。 尊敬するのは当たり前じゃない。 「"黒洲鐐造の言うことは全て正しく疑念を挟む余地は無い。君は黒洲鐐造に身も心も全てを捧げ、彼の女であることを喜びと感じる"のだ」 黒洲先生の言うことは全て正しく疑念を挟む余地は無いのは当然だわ。 黒洲先生は最高のお方ですもの。 間違えるはずなどありえないわ。 黒洲先生は神様のようなお方なの。 私は彼に身も心も全てを捧げるわ。 私は彼の女。 彼のためなら何でもするわ。 「"吹浦芽久美(ふくら めぐみ)は黒洲鐐造の女であり、他の男に心を奪われることは一切無い。一生を黒洲鐐造に捧げ尽くし、彼の求めることならどんなことでも喜んで行なう"」 「はい。私吹浦芽久美は黒洲鐐造様の女です。他の男などには一切心奪われることはございません。一生を黒洲鐐造様に捧げ尽くし、彼の求めることはどんなことでも喜んで行ないます」 私は鐐造様のお言葉を繰り返す。 そうよ・・・ 私は身も心も鐐造様のもの。 鐐造様に全てを捧げるわ。 ああ・・・ なんて素晴らしいのかしら・・・ 「はう、あん、あん、鐐造様・・・鐐造様ぁ。最高です。最高ですぅ」 鐐造様のペニスが私の躰を突き上げる。 職員室に鍵をかけ、誰の邪魔も入らない二人の世界で私は鐐造様に可愛がっていただいている。 鐐造様のご希望で私はレオタードを身につけたまま。 股間の部分をずらして入れていただいたの。 はあん・・・ 天にも昇る気持ちってこのことなんだわ。 最高のセックス。 鐐造様の汗が飛び散り美しい。 太目のお腹が弾力のあるクッションとなって私の快感をさらに増大させているわ。 ああーん・・・ イく・・・イく・・・イッちゃうー・・・ 「ひゃあう・・・こ・・・こんなこと・・・」 レオタードの股間に鐐造様のモノを模したバイブを嵌め、スイッチを入れてやる。 「ふああああ・・・」 たちまちレオタードの股間部分の布には染みが広がり、彼女が快楽を感じていることがわかる。 両手両足を縛り上げ、身動きをとれなくした上で絶えず股間を刺激して発情させる。 この娘ももうすぐ鐐造様の好みの女となるわ。 うふふふ・・・ 「ふふふ・・・いい声でよがるじゃないか。快楽には逆らえないということかな?」 笑みを浮かべながら鐐造様がレオタード姿の少女を見ている。 すでに調教を終えた新体操部の部長がその鐐造様のペニスを咥え、うっとりとした表情で見上げていた。 「はい、鐐造様。あの娘ももうすぐ鐐造様の素晴らしさがわかりますわ。いずれ新体操部の少女たちは全て鐐造様のメスとなるでしょう。うふふふふ・・・」 手元のバイブのスイッチで強弱をつけてやり、少女を快楽の虜にする。 やがてあの娘も涎をたらして鐐造様のペニスをねだるようになるのだわ。 うふふ・・・ なんて素敵なのかしら。 鐐造様の素晴らしさを少女たちに教え込む。 これこそが教育というものだわ。 そのお手伝いができるなんてなんて私は幸せなのかしら。 「ふふふ・・・赤いエナメルのボンデージ。よく似合っているじゃないか芽久美。まさに少女たちの上に君臨する女王だな」 「ああ・・・ありがとうございます鐐造様。鐐造様のおかげで私は真の教育に目覚めることができました。これからも私は鐐造様のために少女たちに性の喜びを教えていきますわ」 私は鐐造様にお褒めいただき、思わず股間をぬらしていた。 < 終 >
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