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「ん・・・」 さつきの口から声がもれると、閉じられていた目がゆっくりと開いた。 「あれ・・・私・・・?」 彼女は眉に皺を寄せた。 何をしていたのかを思い出そうとしたのだが、頭がぼうっとしていて何も考えられない。 体もだるく、その上何故か彼女は全裸だった。 「え・・・?あっ・・・」 いきなり体に快感が走り、体に熱が帯び始める。 少しずつ動悸が早くなっていく。 さつきは自分の体が意思とは関係なく疼き始めた事を悟った。 「はあ・・・ど、どうして・・・」 疑問を感じながらも、さつきは甘い息を吐いた。 はしたないと思っても、体の疼きは止まらない。 ──快感が欲しい。 内側からそんな衝動に駆られた。 理性が打ち消してもまた直ぐに沸き上がってくる。 (私・・・どうしたんだろう・・・) 欲求に飲み込まれ始めながら、さつきはふとそんな事を考えた。 「さつき、どうかしたのか?」 不意に聞こえた男の声に、心臓が口から飛び出そうになった。 彼女が気付かなかっただけで、聡志もこの部屋にいたのだ。 (ど、どうして聡志君がここに!?) 当然の疑問が浮かぶと同時に焦った。 裸を見られても問題はないが、今の自分の状態を悟られるわけにはいかない。 何とかして取り繕う必要があった。 「さ、聡君・・・?」 さつきは自分の上ずった声を聞いて激しく後悔した。 動揺しているのは明らかだった。 「うん?」 さつきの予想に反して聡志は不思議そうに訊ね返しただけで、彼女の事は何一つ気付いた様子はなかった。 (良かったぁ・・・気付かなかったのね・・・) 冷静に考えればそんな事があるわけがないと分かる筈だが、さつきは聡志が何も気付いていないと思い込み、こっそり胸を撫で下ろした。 (取り敢えず誤魔化さなきゃ・・・) さつきは聡志の方を見て微笑んだ。 「何でもない・・・あっ」 体に微弱な快感が走り、さつきは思わず声を出してしまった。 それに伴って体の疼きが大きくなり始めた。 (う、嘘・・・どうして?) 自分の体の変異に驚くが、どうする事も出来ない。 「ん・・・んっ・・・」 歯を食いしばっても僅かにだが声はもれてしまう。 気を遣っているのかどうか分からないが、聡志が気付いた素振りを見せないのがせめてもの救いだった。 (ど、どうして・・・どうしてなの?) 何度目か分からない自問を繰り返しながら、さつきは恥ずかくて泣きそうになった。 理由はどうあれ男の目の前で浅ましくも発情してしまったのだ。 しかし心とは裏腹に、体の欲求は高まる一方だった。 一方で聡志はほくそ笑んでいた。 気付かないフリはしたいたが、さつきの様子を見ていれば彼女が自分の狙い通りになっている事がはっきりと分かる。 さつきは白い肌をピンク色に染め、時折口から甘い声をもらしている。 その上形の良い眉をひそめ、両脚を擦り合わせているのだ。 ──男にとってこの上なく刺激的な光景だ。 気付かない方がおかしいだろう。 現に聡志はさつきに気付かれないように細心の注意を払いながら、彼女の体を視姦していた。 そうとは知らないさつきは、何とか疼きに耐えようとしていた。 「んん・・・」 心なしか、彼女がもらす声は大きくなってきている。 駄目だと思っても、体の方は限界に近付いてきていた。 額には汗が滲み始め、目も潤み出している。 (そろそろ頃合かな) 聡志はそう判断すると、二度続けて手を叩き、一拍置いた後更に二度手を叩いた。 「あっ・・・」 その瞬間、さつきの体にさっきより強めの快感が走った。 快感が全身を駆け巡った後、彼女の体は火がついたかのように熱くなり始めた。 (も、もう駄目・・・我慢出来ない・・・) さつきから理性が消えていく。 そして狂おしい程の欲求が湧き上がってくる。 (欲しい・・・快感が欲しい・・・) 快感を求めるさつきの頭は、ぼんやりとある考えを思いついた。 (聡志に頼もう・・・) さつきにはそれが最高の考えに思えた。 理由など今の彼女には必要なかった。 ただ、体の欲求を静めたかった。 「さ、聡志君お願いがあるんだけど・・・」 「うん・・・?」 不思議そうな顔をした聡志を見て、さつきは躊躇った。 恥ずかしそうに聡志を見たが、それだけでは当然伝わらない。 「お願いって何だよ」 聡志は頬が緩みそうになるのを堪えながら、焦れたフリをして続きを促す。 そうとは知らないさつきは、もじもじしながらやがて口を開いた。 「わ、私とエッチをして欲しいの・・・」 「え?何て言ったんだ?」 聡志はわざと訊ね返す。 「え・・・?」 さつきは困惑して口を閉じてしまった。 頬を真っ赤にし、今にも泣き出しそうな顔になっている。 欲求と羞恥心の板ばさみになっているのだ。 「だから、もう一度言ってくれないか?」 さつきは何とも言い難い顔で聡志を見た。 しかし観念したのか、直ぐに口を開く。 「私とエッチして、お願いっ」 縋るように叫び、不安そうに聡志を見つめた。 「良いよ」 聡志は爽やかな笑顔を浮かべた。 ──心の中でガッツポーズをしていたが。 「本当?」 さつきの表情がぱっと明るくなる。 不安が吹き飛んだ彼女は、聡志が意地の悪そうな笑みを浮かべた事には気付かなかった。 「ところでさつき、エッチってどうやるんだ?」 「・・・・・・え?」 さつきは聡志の言葉に固まってしまった。 聡志の年で知らない筈はないのだが、それを確認する術は無い。 白を切られればそれまでだ。 「簡単で良いから教えてくれないか?」 「・・・分かったわ」 聡志があくまで真剣な口調で言っているので、さつきも覚悟を決めた。 他の男ならともかく、聡志ならまだ良いと思ったのだ。 第一、本当に知らないのならさつきの願いは叶えられない。 「簡単に言うと、男の性器と女の子の性器を結合するの」 さつきは聡志から目を逸らしながら言った。 そんな態度も聡志には好ましく映る。 「ふ〜ん・・・で、名前は?」 「え・・・?」 「だから、性器の名前も教えてくれよ」 さつきの頬だけでなく、耳や首まで真っ赤になった。 「そ、それくらい知ってるでしょ?」 「間違ってるかもしれないだろ?」 あっさりと切り返され、さつきは言葉に詰まってしまう。 別に名前など知らなくても問題はないのだが、彼女はその事には気付いていなかった。 「男のがオチ×チン、女の子のがオマ×コよ・・・」 語尾が震わせながら答えると、聡志は更に畳み掛けた。 「じゃあオマ×コってどこにあるんだ?」 「も、もう許して・・・お願い・・・」 さつきは堪えられなくなって遂に哀願した。 しかし、それこそ聡志を喜ばせる行為だった。 「教えてくれないと出来ないぞ?」 「そ、それはそうだけど・・・」 聡志の意地の悪い言い方にさつきは口篭もってしまった。 言わないとして貰えないが、言うには先程以上の勇気がいる。 (言いたくない・・・言いたくないけど・・・) 今や欲求は羞恥心を上回ろうとしていた。 一秒、二秒、三秒・・・。 やがてさつきの右手がゆっくりと動き、震えながらも彼女の股間を示した。 「ここよ・・・」 さつきの声には諦めさえ感じた。 それに気付いた聡志は小さく舌打ちをしたが、今のさつきには聞こえなかった。 「へえ・・・そこなのか。よく見せてくれよ」 聡志は感心したフリをしながら後ろに回って屈み込んだ。 さとしはおずおずと両脚を開いていった。 (おおっ) ある部分に釘付けとなった聡志は、心の中でさつきを称えた。 薄い茂みに覆われた、女の花園というべき箇所。 処女のように綺麗な色をしたソコは今、愛液で満ちていた。 溢れ出た液はベッドカバーにシミを作っている。 「そ、そんなに見ないで・・・」 凝視されている事に気付いたさつきは、小さく喘ぎながら聡志に抗議をした。 両脚を閉じようとしないのは、閉じても無駄だと悟っているからだろう。 しかし、余裕がないのは聡志も同じだった。 悶えるさつきの様子を堪能したので、彼の方も限界が近付いていた。 いい加減にしておかないと、早漏という憂き目に遭うかもしれない。 「それじゃあ・・・入れようか?」 しようか、と訊ねなかったのは前戯が不要だと思ったからだ。 さつきもそれと悟って小さく頷いた。 聡志は手早くズボンとトランクスを脱ぎ捨て、イチモツを取り出した。 さつきは関心がないフリをしながらも、時折イチモツの方に目を向けていた。 何だかんだ言っても好奇心はあるのだ。 聡志はそれに気付かないフリをしながらさつきに近付いていく。 目と鼻の先まで来るとイチモツを手に持ち、入り口に当てた。 「いくぞ」 「うん・・・」 さつきの顔は緊張で強張っていた。 聡志は敢えて何も言わずさつきに跨り、ゆっくりとイチモツを中に入れていった。 「あっ・・・ううっ・・・」 さつきは苦鳴と愉悦の入り混じった声をもらしたが、聡志も彼女の膣内の感覚にうなり声を上げそうになった。 (あ、相変わらず凄い・・・) 抵抗こそなかったが、締まり具合は処女と言っても過言ではなかった。 もう少し調子に乗っていれば、既に射精してしまっていただろう。 「くっ・・・」 聡志は歯を食いしばりながらより奥へ入っていく。 「ああっ・・・す、凄い・・・」 小さくうめいて仰け反ったさつきの顔は蕩け始めている。 一方の聡志は、射精したくなるのを何とか堪えながらゆっくりと律動を開始する。 「ああっ・・・ふうっ・・・んんっ・・・」 聡志が動く度に淫猥な音がする。 さつきは喘ぎながら、無意識のうちに両手を聡志の背中に回す。 「す、凄いっ・・・んんっ・・・」 聡志に突かれる度にさつきの全身は痺れる。 焦らされていた反動か、彼女の快感は飛躍的に高まっていった。 彼女の手は聡志の背中にめり込んでいったが、二人にそんな事を気にする余裕はなかった。 「はあっ・・・ああっ・・・」 やがてさつきの腰は自然と動き始め、襞の一つ一つがイチモツを襲う。 本来静かであるべき真夜中の部屋に、淫猥な音と二人の荒い息が響いている。 「あああっ、イク、イクッ」 さつきがイクと同時に、聡志は彼女の膣へ勢いよく射精した。 心なしか普段よりも長い射精が終わると、聡志は彼女から離れてティッシュを取りに行った。 数枚手にするとぐったりとしたさつきの脚を広げ、カバーに零れた液体を拭き取っていく。 その際、すべすべした彼女の太腿の感触を楽しむのも忘れない。 それが終わると聡志はさつきの股間へと手を伸ばした。 「“ヤドカリの家”」 催眠状態になったさつきの股間に溢れる液体を丁寧に拭き取っていく。 正直勿体無いと思っていたが、自分の精液が混じった物を口にする気にはならなかった。 ほとんど拭き取れると聡志はティッシュをゴミ箱に捨て、さつきに下着とパジャマを着せる。 そして自分もトランクスとズボンを穿き、さつきを抱き寄せた。 「あなたは三つ数えるとぐっすり眠ってしまいます。起きた時には夜の事は全て忘れてしまいます。一つ、二つ、三つ、はい」 聡志はさつきの体をゆっくりと横たえると、物音を立てないように注意しながら部屋を出た。 さつきの部屋の更に奥にしほりの部屋はあった。 カーテンもベッドカバーも藍色で統一されたこの部屋は、さつきのもの以上に簡素だった。 「やっと終わったみたいね」 しほりは右手を止めると、冷笑を浮かべた。 あれだけの声が隣にいる彼女に聞こえるのは当然だ。 「二人共、良い度胸してるわよね」 しほりは冷笑を浮かべたまま再び手を動かし始める。 あそこまであからさまだと、返って怒る気になれなかった。 (もし続ける気なら・・・その時は・・・) しほりはさつきと聡志の行為に反対しているわけではない。 見かけによらず彼女は柔軟且つ大らかな思考の持ち主だった。 ──彼女自身の琴線に触れない限りは、だが。 コンコン 控えめなノックの音がしほりの耳に入り、彼女のこめかみが小さく痙攣した。 (まだ邪魔してくれるみたいね) 静かなる怒りを心に秘めてしほりはドアを開け、すまなそうな顔をして立っていた聡志を思いっきり睨んだ。 「何の用かしら?」 しほりは両手を腰に当て、居丈高に訊ねた。 その動作は非常に自然で、女王様然とした彼女が行うと恐ろしい程様になっている。 聡志は気圧されたかのように立ち竦み、言葉一つ発する事が出来ないでいる。 そしてそれが余計にしほりの怒りを煽った。 「だから、何の用なの?」 同じ質問を繰り返した彼女の口調は、より刺々しくなっている。 しかし、その一言が聡志に我を取り戻させた。 「えーと・・・しほりさん?」 「何かしら?」 右手で頬を掻きながら遠慮がちに声を出すと、しほりは腕組みをしながら答える。 「“ヤドカリの家”」 しほりの目から理性の光が消え、腕がだらりと垂れた。 「ふう〜」 聡志は冷や汗を拭うと、部屋に入ってドアを閉めた。 そしてしほりの股間をまさぐってみると、僅かに湿っていた。 「・・・効き過ぎたか?」 聡志は意味不明な事を呟くとしほりをベッドに座らせ、改めて彼女の体を視姦する。 パジャマやガウンの上からでも胸の膨らみははっきりと分かる。 歳の所為もあるだろうが、女の魅力ではさつきよりも上だ。 更に彼女が着ている青のパジャマと紺色のガウンが、より魅力を滲み出させているようにも見える。 聡志は一気に活力を取り戻し、ゆっくりとした口調でしほりに話し掛ける。 「私の声が聞こえますか?」 「はい・・・聞こえます・・・」 「今、あなたの目の前には最愛の恋人がいます。あなたはその人とセックスをするととても感じやすくなりますが、イク事はできなくなります。あなたがイクには恋人の許可が必要です。良いですね?」 「はい・・・」 「今から三つ数えるとあなたは目が覚めますが、私が言った事は全て忘れてしまいます。しかし私が言った内容は覚えていて、必ずその通りになります。一つ、二つ、三つ、はい」 しほりは何度か瞬きすると、眉を寄せて自分の記憶を探った。 聡志を威嚇した事までは覚えているのだが、それ以上の事は何も思い出せなかった。 「しほり・・・?」 声が聞こえた方を見ると、“彼”が不思議そうな顔をしていた。 「どうかしたのか?」 「いいえ、何でもないわ」 しほりは恋人を心配させまいと、極上の笑みを浮かべた。 「そうか」 “彼”もほっとした顔すると、しほりの背中に両腕を回してきた。 驚く彼女を無視し、“彼”は彼女を抱き寄せてキスをした。 「んんっ!?」 最初はもがこうとしていたしほりも、何度も優しくキスをされると次第に抵抗しなくなった。 “彼”はしほりが抵抗しなくなると舌を彼女の口腔に侵入させ、更にはガウンを脱がせた。 「んっ・・・うんっ・・・」 “彼”の舌は彼女の柔らかい口腔を汚すかのように動き回り、彼女を防戦一方に追い込んでいる。 「んんっ・・・ふぁ・・・」 “彼”はしばらく愉しんだ後、口を離してしほりを押し倒した。 「もう・・・強引なんだから」 やっと開放されたしほりは“彼”を睨み付けたが、目には鋭さがない。 「ごめんごめん」 “彼”は謝りながらもパジャマのボタンを外していく。 「がっつくなんてみっともないわね」 しほりは冷ややかな言葉を投げかけこそしたが、“彼”にされるがままになっている。 “彼”の手に前が開かれると、黒色のブラが顔を覗かせた。 「おっ、勝負下着か?」 「いつも着てる奴よ」 “彼”の軽口はあっさりと返したが、頬を赤くして顔を背けた。 “彼”はそんなしほりを可愛いと思ったが、口にすればしほりの機嫌が悪くなるだけなので、何も言わずにブラを剥ぎ取った。 「あっ!」 しほりが何かを言うよりも早く、やや黒ずんだ乳首に吸い付く。 「きゃあっ」 しほりは体を強張らせたが、“彼”は気にせずに乳首を責め始める。 片方の乳首を口全体で弄びながら、指で二つの白い乳房を揉む。 「ああっ・・・んあっ・・・んんっ・・・」 しほりは胸に集中攻撃を食らい、堪らず声を上げる。 “彼”はその声を聞いて、ますます張り切って胸を責める。 豊かで弾力に富んだそれは、さつきの物よりも遥かに責め甲斐があった。 「もう硬くなってるなんて、いやらしいな」 「ああっ・・・言わないで・・・」 しほりは恥ずかしそうに首を振るが、体は既に熱くなっている。 “彼”がしほりのズボンを脱がせると、スラッとした白くて長い脚が露わになった。 彼女の股間を覆っているのは、ブラと同じ色のパンティだった。 肌と下着の色のコントラストはこの上なく扇情的で、“彼”は我慢が出来なくなりせかせかとズボンとトランクスを脱ぎ去った。 「良いだろ?」 “彼”はそう言うと、自分もベッドの上に腰を下ろした。 それを待っていたしほりは自らパンティを脱ぎ捨てると、“彼”の上に跨った。 「ああっ・・・」 既に濡れていたしほりの膣は、淫猥な音を立てながら“彼”のイチモツを迎え入れた。 そして“彼”は両腕をしほりの腰に、彼女は両腕を“彼”の背中に回した。 「もう濡れてるじゃないか、雌犬」 「ああ・・・そんな事ない・・・」 しほりは“彼”の囁きに反論しながらも喘いでいる。 彼女は言葉責めに弱いのだった。 「そろそろ動いてくれよ」 「え、ええ・・・」 しほりは催促されると両脚を“彼”の腰に巻きつけ、動き始めた。 それに合わせて“彼”も彼女を突き上げ始める。 「はあっ・・・くっ・・・ううんっ・・・」 「うくっ・・・ううっ・・・」 二人に強烈な快感が襲い、理性が打ち砕かれてしまう。 比較的余裕のある“彼”は、より深くより荒々しくしほりを突き上げる。 「ああっ・・・す、凄いっ・・・」 よがるしほりの理知的な美貌は蕩けており、彼女の両手は“彼”の背中にめり込んでいる。 「あんっ、ああっ、ああんっ・・・」 しほりは喘いでいるというよりは鳴いていた。 その額はしっとりと汗ばみ、髪も乱れ始めている。 「ああっ、だ、駄目・・・イク・・・」 「イきそうなのか?」 しほりは“彼”の言葉に何度も頷いた。 「ええっ、イク、イッちゃう」 「よし、イって良いぞ」 “彼”がそう言った瞬間、しほりは絶頂を迎えた。 ぐったりとなったしほりが仰向けに倒れそうになったので、“彼”は手を背中に回して彼女を支えた。 「しほり」 “彼”は優しく呼びかけながら、彼女の体を揺さぶった。 しほりは体を起こして首を数回振り、“彼”を軽く睨んだ。 「もう・・・激し過ぎるわよ」 「お前の方こそ、凄過ぎたぞ」 “彼”はしほりの抗議に対し、万感を込めて反論した。 数秒間沈黙した後、二人は同時に笑い出した。 ひとしきり笑うと、不意にしほりが真面目な顔になった。 「ねえ、あなたはイけなかったでしょ?」 その瞬間、二人の間に気まずい空気が流れる。 しほりは申し訳なさそうな顔をしているし、“彼”の方も何と答えて良いのか分からない。 沈黙を破ったのはしほりだった。 「ご、ごめんね?お詫びにイかせてあげるから」 しほりは珍しくうろたえていた。 普段なら例え恋人が相手でも、こんな事は絶対に言わない。 “彼”がイけなかったのは彼女の所為ではないのだが、そんな事は知る由もない。 「それじゃ・・・フェラをして貰おうかな」 「え・・・?」 しほりの顔色が変わった。 彼女はフェラが大嫌いで、いつも頑なに拒んでいた。 しかし、今回ばかりは彼女に拒否権はない。 「私、した事ないわよ?」 しほりは一応そう言ってみた。 ──こういう事は誰だって下手な人間にはして欲しくない筈。 そんな考えが彼女にはあった。 「それでも良いよ」 “彼”はしほりの予想、いや期待をあっさりと裏切り首を縦に振った。 こうなると、彼女に残された選択肢は一つしかない。 「わ、分かったわ・・・」 しほりは観念すると、立ち上がってティッシュを取った。 勿論、イチモツを拭く為だ。 “彼”はしほりの手首を掴んでそれを阻止し、イチモツをずいっと突き出した。 「このまましてくれ」 しほりのこめかみがぴくりと震えた。 彼女は撥ね付けたくなったが、今回は自分に非があると辛うじて思い止まった。 そして屈み込むと、躊躇いがちにイチモツの先端を咥える。 「んっ・・・」 最初は舌で亀頭を恐る恐るなぞってみる。 慣れてくると徐々に舐めるスピードを上げる。 「ううっ・・・その調子だ・・・」 褒められて気を良くしたのか、しほりは更にスピードアップした。 根元を手でしごきながら、前立腺なども刺激する。 「うおっ・・・す、凄いぞ・・・」 とても初めてとは思えない、娼婦並のテクニックによって“彼”は瞬く間に上り詰めていく。 「で、出る・・・出るぞ・・・」 “彼”はうめきながらも力を振り絞り、イチモツをしほりの口から抜いた。 次の瞬間、精液が勢いよく飛び出し、しほりの顔を襲った。 彼女は白い奔流をまともに浴び、顔はおろか髪までも汚れてしまった。 「もうっ・・・掛けるなら先に一言言いなさいよ」 しほりは“彼”を睨みながら、ティッシュを取った。 「ごめんごめん」 “彼”は苦笑いして謝る。 しほりはおそよ反省しているとは思えない“彼”を睨んだまま、ティッシュで自分の顔や髪を拭いていく。 綺麗に拭き終えると、ティッシュをまとめてゴミ箱に捨てた。 「終わったのか?」 「終わったわよ!」 “彼”が手伝わなかった事に腹を立てたのか、しほりの言葉には棘がある。 それだけでなくしほりは“彼”に背を向けると、黙ったまま下着を着始めた。 「怒ってるのか?」 「別に」 機嫌を取りたそうな“彼”を突き放すと、パジャマも着始める。 まずズボンを穿き、続いて上を着てボタンを止める。 しほりが全てのボタンを止め終わった時、“彼”は見計らっていたかのように口を開いた。 「“ヤドカリの家”」 動かなくなったしほりに、聡志はゆっくりと近付いていった。 「あなたはずっと一人で勉強していましたが、眠くなったのでうとうとしていました。私が部屋を出て行ってドアを閉めると気が付きますが、そのまま寝てしまいます。そうすると朝は気持ち良く起きる事が出来ます」 しほりを椅子に座らせてシャーペンを持たせると、部屋を出て勢いよくドアを閉めた。 「やれやれ・・・今日は久し振り徹夜せずに済んだな」 朝、丹羽家はいつものように全員でご飯を食べ終えた。 「「「「「ご馳走さまでした」」」」」 かなえ・しほり・さつきの三人が後片付けをし始め、健二と聡志はくつろいでいる。 「ああ、そうだ聡志君」 健二は手を叩くと、懐から茶色の封筒を聡志に差し出した。 「これは今月の授業料だ」 「あ、すみません」 聡志はお辞儀をしながら封筒を受け取り、制服の胸ポケットに入れた。 「しかし毎月持っていかなくても、銀行で振り込めば良いだろう」 「大丈夫ですよ、お世話になってる事を忘れない為ですから」 聡志は微苦笑を浮かべながら答える。 そう言われると健二も何も言えなくなってしまった。 「本当に聡志君は偉いわねえ・・・」 側で聞いていたかなえは、感嘆の声をもらした。 そしてちらりと二人の娘の方を見る。 暗に聡志を見習えと言っているのだ。 「あ、そうだ。皆に話があったんですよ」 聡志の言葉に、四人は一斉に顔を見合わせた。 彼の視線に促され、かなえ達三人は席についた。 「それで、話ってなんだ?」 「“ヤドカリの成長”」 四人はほぼ同時にテーブルに突っ伏した。 聡志が口にしたのは記憶を消し去る為のキーワードだった。 彼等が起き上がった時には聡志に関する記憶は全て消え、一家団欒を行う事もなくなるだろう。 聡志は立ち上がると、鞄を持って玄関へ向かう。 彼は靴を履き終えると改めて家の中を見回した。 「今日でこの家も見納めか・・・」 戦利品を手にした泥棒のような顔で呟くと、聡志は玄関のドアを開けた。 (次はどの家の世話になろうかなぁ) 聡志は頭にインプットされた“親戚”達の顔を思い浮かべた。 全員が美人だという事は、言うまでもない。 < 終 >
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