作品

かもなんばん
メイドさんは魔女
「美雨さん……さがしましたわよ」
「はい、お嬢様。なにかご用でしょうか」
「なんですか、あの……あの、クローゼットの中身はっ!」
「ああ!そうそう、全部エプロンドレスに入れ替わっていた、というのですよね?」
「どういうことなのか、貴女の口からきちんと説明していただきますわ!」
「じつを申しますとね……わたくし、魔女なのです」
魔法、女性支配、百合
メイドさんは魔女

お嬢様は魔女
 私は、彩草 菜々(あやくさ なな)。
 ここ、蒼風院家のお屋敷で『お嬢様』の付き添いメイドとして働いている。
 今、取ってつけたような名前だと思ったアナタは鋭い。
 そもそも私が何者かと言うと……。
魔法、女性支配、百合
第一話
お嬢様は魔女
 お嬢様付きメイドとしてまず第一のお勤めは、お嬢様にさわやかにお目覚め頂くことである。
 お屋敷にメイドの仕事は数あれど、これほど高貴なお仕事は他にあるまい。
第二話
ミストレス・オルタナティブ
 お屋敷のお休みは毎週一日、決まった曜日にもらえるのと、各人の誕生日から9日に一度、特別な休暇がもらえる、という仕組みになっている。
 何か意味があるらしいけど・・・
第三話
雨音は誘う
 冬も終わりかというある日の午後。
 私は休み時間に厨房でお茶を飲んでいた。
 手元にはこのあいだ読み損ねた小説がある。
 私はこのお話が大好きだった。
第四話
空の司
 天気のいい日。
 ピクニックにでも出かけたいものだけど、今日は蒼風院本家から来客がある。
 蒼風院つかさ様――本家とお嬢様との橋渡し役をなさっている方である。
第五話
キス・インフェクション
 輝く春は足早に去って行き、梅雨も迫ってきたある雨降りの日のこと。
 お嬢様がお風邪を召してしまわれたので、私は他のお仕事はそっちのけで付ききりのお世話に当たっていた。
第六話
正しい妹のつくり方
 ある日曜日、私は居間のお掃除に取り組んでいた。
 と、メイド長の澄さんに声をかけられた。
「おーい、菜々。それ終わったらお嬢様のとこに来てちょうだいな」
第七話
Can you keep a secret?
 こほん。結論から言うと、お嬢様の代わりにつかさ様のお屋敷にご挨拶にうかがうことになった。私が。一人で。
 なぜもってそんなことになったかというと……
第八話
夜間飛行
 秋の夜長はのんべんだらり。
 本日のお仕事もつつがなく終え、厨房でお茶を飲みつつ雑誌をぱらぱらとめくっていた私の元に、珍しくお嬢様がご自分からお見えになった。
第九話
湯煙艶語り
 その日、私たちは年に一度の慰安旅行で温泉宿へとやって来ていた。
第十話
翼の行方
 澄さんの運転で買い出しに出かけたその帰り。ライトバンの助手席に陣取った私はいつになく上機嫌であった。
 それもそのはず、明日はお嬢様の誕生日なのだ。
最終話
マイ・ディア・レディ
 その日、お屋敷は暗い雰囲気に沈んでいた。
 今朝から何度目とも知れないため息をついて、私は自室の窓から外を眺めた。


 

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