「絶対服従! 王様ゲームの興奮をここに! 無料の魔法プログラム『魔女のゲーム』へご招待!」 友だちの沙織から、わたしがその招待状<インビテーション>を受け取ったのは、大学に入ってから、半年ほど経ったころだったろうか。 「なんだ、こりゃ?」 パソコンのメーラーに入っていたそれは、なにかのコンピューターゲームへの招待状に見えた。 とりあえずクリックをしてみると、ブラウザが開き、利用規約がごちゃごちゃと書いてあるページに飛ぶ。 無料ということは確かだったので、後は適当に流し読んで、「ちゃんと読んで内容を理解しました」というチェックボックスに印をして、「参加しますか?」に「了承」を押す。 すると、メッセージが出てきた。 「きちんと、説明を読んでください」 一瞬後、ぞっ、とした。 なんで? なんで、ちゃんと読んでないってわかるの? ちゃんとチェックボックスに印したのに!? もう一度、ちゃんと説明を読む。 いろいろ書いてあったけれど、要するに、このゲームに参加すると、「ヴァルプルギスの夜」と呼ばれる指定された時間に集まり、そこで魔女に命令されたことは何でもしてしまうようになるらしい。 なんだ、そりゃ。 嘘つけ。 いちおう、全部読んだので、内容を理解したとチェックして、もう一度「了承」を押した。 すると、たくさんの動画が現れてくる。 エロ動画。 「うっわ、ポルノサイトかよ」 とりあえず、そのままブラウザを閉じようと思ったが、ちょっとした出来心で、一番新しい動画をクリックした。 ウィルスソフトも入っているし、やばかったら強制終了すればいいや。 「あぁんっ! んっ、んっ、んはあっ!」 頭が真っ白になった。 なぜなら、画面の中で、ラブホテルかどこかの中、男にまたがって腰を振っているのは、沙織だったからだ。 「ふみかちゃんっ、ふみかちゃんっ!!」 沙織の下で、叫び声をあげているのは、わたしも知っている男だった。 だが、名前がちょっと思い出せない。その程度の知り合いだ。 ちょっとキモイ感じの、オタク系と思われる男が全裸で沙織の下になって、淫乱なロデオを踊る沙織を楽しんでいる。 だが、わたしが驚いたのは、むしろ、沙織のかっこうだった。 コスプレ、というのだろうか。 スパッツに、スポーツブラをして、ポニーテールをした彼女は、ちょっとびっくりするくらい印象が違っていた。 いつもは軽く茶色に染めた髪を、少しウェーブをかけて、かわいいブラウスにスカートで決めている彼女が、ストレートな髪をポニーテールにして、活動的な下着で腰を振っているのは、本当にギャップを感じる。 スパッツは、股間が切り裂かれ、そこからペニスが突き刺さっているのが見える。 「いいよお! ふみかちゃんエッチだよおお!!」 キモイ。 そう思うのに、なぜだか、画面から目が離せない。 わたしの知らないアニメのコスプレ(たぶん名前がふみかというんだろう)をさせられて、男の欲望のままに扱われている沙織。 かわいそう、とは、思わなかった。 むしろ――― 「はあんっ! いいですっ、ご主人様ぁ!」 沙織が叫ぶ。 ぞくり。 鳥肌が、立った。ご主人様――――。 でも、これも、嫌悪の鳥肌とは、違う、ような、いや、嫌悪も交じっているけれど、なにか、別の―――。 「ご主人様のオチンポ、ふみか病みつきなのぉ! ご主人様のオチンポ様がないと、もう生きていけませぇんっ! ふみかのエッチなぐちょぐちょオマンコ、かきまわしてくださいっ!」 「あー、沙織ちゃんみたいな、全然アニメとかに興味ない顔してる女の子にコスプレさせてエッチするの、最高だよ〜。あ〜、やばい、征服感すごい……」 がしっ、と手で沙織の腰を、自分の腰に固定して、動かなくする。 「あぁんっ、ご主人様ぁ、どうしてっ、どうしてっ……んっ、んんんっ」 腰を持ち上げて、上下運動をしようとするが、それがはばまれる。 前後にも動こうとするが、それも、しっかりと固定されているので、できない。 「ひどいですっ、ご主人様ぁ、ふみかのオマンコは、ご主人様のぶっといオチンポをシコシコして、子宮口にちゅっちゅっして欲しいんですっ! ご主人様のオチンポで、ふみかのオマンコ気持ちよくして、しつけてほしいんですっ! どうして動いてくれないんですかぁ!」 親友が、こんなに卑猥な言葉を、今まで聞いたことがないような媚びた声で発しているのを見て、わたしは少なからずショックだった。 「ぶふふ、ふみかちゃん、本当に淫乱なんだねぇ」 「違いますうっ、ふみかは、ご主人様の前でだけ淫乱になるんですっ」 「ふふっ、そんなかわいいふみかちゃんには、お仕置きだよ」 そういうと、沙織の腰をもちあげて、ペニスを抜く。 ペニスが抜けた衝撃で、あんっ、という甘い声を沙織が響かせる。 どんっ、と男が沙織を押すと、沙織は頭からベッドのシーツに突っ込み、尻を高くあげる格好になる。 「本当にいやらしい恰好だなぁ。雌犬みたいだ。―――いつもの沙織さんとは全然違って興奮するよ」 「い、今の私は、ふみかなんですっ! も、もうっ、恥ずかしいなぁ……。ご、ご主人様の雌犬ふみか、発情期のオマンコに、どうかご主人様のたくましいオチンポをつっこんでくださいっ!」 そういって、フリフリとお尻を振る沙織は、女のわたしの目から見ても、ぞくりとするくらい淫乱で品がなかった。 まるで、完全に性欲の虜になっているような姿は、蔑みと、わたしの下腹部に甘いしびれを呼び起こす。 むっちりと沙織の尻をつかんで、男がペニスを突き入れる。 「きゃうううんっ! いいっ! すてきぃっ、ご主人様のオチンポすてきいっ!!」 口をだらしなくあけて、目をとろんとさせている沙織は、すっかり雌の顔になっている。 「ふひゅうっ、ひゅうっ、ああんっ、うふぁん、うふうんっ、ああっ、あんんっ、あああんっ」 荒い呼吸が、徐々に甘い喘ぎ声に変わり、それは次第に、獣の叫びへと変わっていく。 まるで動物の交尾のような後背位で、本当に沙織が、ただの雌犬になってしまったかのような錯覚にとらわれる。 「おおんっ! おおおおおんっ、おおんっ、おおっ、おおっ、おおおおおおおおんっ!!」 「ああっ、いくっ、いくよっ、ふみかちゃんっ」 「ご、ご主人様っ、おおんっ、わたっ、わたしもっ、おおおんっ、いくっ、いきますっ、おおおおおおおおおおおおおおおんっっ!!」 言葉を忘れた獣の声で、絶頂へと達した沙織は、がっくりとベッドに突っ伏す。 ずぼんっ、とペニスを抜いた男は、まだ絶頂していなかったのか、まだ硬いままのペニスを、あおむけに転がした沙織の口につっこむ。 沙織の上半身が、男の下半身で完全におおいつくされる。 男の尻が、上下運動を何度かしたかと思うと、うっ、という声と共に、男の腰が小刻みに痙攣した。 そのあとに、ずるっ、ずるるっ、という音が響く。 沙織が―――射精したあとのペニスから、精液を搾り取っているのだ。 くらりとするような背徳的な光景。 ごちそうさまでした、と沙織の小さな声が聞こえて、そこで映像は終わった。 ぴこん。 メッセージが、画面に浮き出る。ヴァルプルギスの夜に、参加しますか? やばい、と思った。 わたしは、いいえを反射的に押して、ブラウザを閉じた。 翌日。 まったくいつもと変わらない口調だったので、最初、それが沙織の声だという認識と、沙織が動画でやっていたことが、即座につながらない。 「招待状、受け取った? 動画も見たかな?」 その意味が頭にしみわたると、わたしは、びくっとなる。 午前中、大学の構内で、そんなことを言われると、大学という正常な世界と、昨日見た動画の異常な世界の境界が、一瞬であいまいになってしまったようで、怖い。 「あ、あれ、なに? なんかやばいことに巻き込まれてるんじゃ……」 「ふふっ。大丈夫、大丈夫。なんにも心配することないよ。私、楽しんでるし。でもそっかぁ、そっちの動画も見ちゃったんなら……今頃、やりたくてやりたくて仕方ないんじゃない?」 「な、なにをっ!」 否定が強めになったのは、心のどこかで、それを認めているからかもしれない。 なによりもびっくりするのは、沙織が、本当に今まで通り、という感じであることだ。 本当に、なにも、変なことは起こっていないような雰囲気。 「もしさ、ああいうことしたいんだったら、ヴァルプルギスの夜への招待状が来るから、それに参加するって返信しなよ。じゃあね」 そう言って、沙織は去っていく。 最後に、不吉な言葉を残して。 「あの動画が見れちゃったんなら、もう逃げられないし、すでに逃げたくもないでしょ。きっとすぐに優花も楽しめるようになるよ。私みたいにね―――」 数日後、ヴァルプルギスの夜への招待状が届いた。 わたしは、招待状の、「出席しません」という項目にチェックをして、送信した。 あれから、二度、ヴァルプルギスの夜への招待を断った。 でも、そのあと、動画がアップされていて、わたしは思わず見てしまう。 沙織が、セックスしている動画。 昔に撮影されたのだろう映像もあって、いったい、いつからこんなことをしているのだろうと思ってしまう。 ちょっとキモイ感じの男子に、無理やりコスプレされて犯されている映像も見た。 なにかのアニメのコスプレで、それが本当に、その男の欲望のはけ口になっている感じで、ぞくぞくした。 ラグビー部の、筋骨隆々の男たちに、更衣室みたいなところで犯されている動画も見た。 思わず、男の匂いが画面からあふれてきそうなシチュエーションに、くらくらした。 かっこいい先輩に、口を押えられながら、縛られて、ペニスを入れられているのも見た。 きれいな顔と、やっていることのギャップに、血がたぎる。 わたしも―――わたしも、あんな、ふう、に――――。 考えちゃ駄目だ。 そう思いながらも、ここのところ、ずっと、そういう動画で、オナニーをしている。 我慢、できない。 あんなところ、行っちゃだめだ、って思うのに。 行きたい。 やりたい。 あんな風にしたい。 そういう気持ちが、押さえられない。 わたしの心に、何かされたのか。 あんな、変なゲームだ。 きちんと利用規約を読んでいないことがわかってしまうゲームだ。 魔女に命令されたことはなんでもしてしまうというゲームだ。 だったら―――この、気持ちは。 あんなエッチなところに行きたい、という気持ちは。 ああ、駄目だ。 たとえ、この気持ちが、だれかに植えつけられたものだとしても。 わたしは、もう、我慢できそうになかった。 わたしは、「ヴァルプルギスの夜」に出席しますか、という質問に。 イエス、と答えた。 「待ってたよ」 夜の校舎。 沙織が、ひらひらと手を振る。 「おいで」 連れていかれたのは、ある研究室。 この時間、まず人は来ないし、鍵もかけられている。沙織は、鍵を取り出すと、扉をあけた。 紙袋を沙織は用意していて、わたしに手渡す。 そこには、ヴェネチアの仮面舞踏会の仮面と、ベビードールが入っていた。 「じゃ、鍵はここに置いておくから。楽しんでね」 そういうと、沙織は帰っていく。 一人きりの研究室。 ブラインドは降ろされていて、卓上の電気スタンドが、オレンジ色の光を放っているだけだ。 手早くベビードールに着替える。いつの間にか、ためらう気持ちは消えていた。 パンティは履いていないし、薄い生地だから、アンダーヘアが見えてしまうかもしれない。 この暗さだから、大丈夫かな。 仮面をつける。 赤い口紅を塗った唇で、きゅっと笑みを作る。 鏡で顔を見てみると、まるで自分じゃないみたい。 声さえ出さなければ、きっとわたしだとばれないだろう。 服を紙袋に押し込んで、深呼吸する。 次の瞬間、がちゃり、とドアが開いた。 一瞬、学生が入ってきたのかと思ったが、そうでないことがすぐにわかった。 毛深いおじさん。ふとっちょの体に、芋虫のような指。 知ってる。 N教授だ。 あまり授業を受けたことはないけど、クマみたいな、女子学生からはあまり人気のない人。 でも、わたしは、たまにこの人に犯される想像で、オナニーをしていた。 わたしも、別にこの人のことは好きじゃないし、彼氏にもしたくない。本気でセックスなんてしたくない。 ただ、エッチな想像の中では、こういう手合いは、役に立つのだ。 「これで、どうかな」 す、と一万円札を出す。 わたしが、びっくりしていると、もう一枚、お札を重ねる。 「まだ、足りない?」 少し、声が震えている。 「こ、これなら」 軽く震えている手を見て、わたしは落ち着きを取り戻す。 黙って、三枚の紙幣を受け取る。 自分が娼婦になったようで、ドキドキする。 そっと、紙袋の中に、それを入れる。 「た、たのむよ」 ズボンを下ろすと、すでに勃起したペニスが、自己主張していた。 大きい……。 思わず、舌なめずりをしそうになる。 わたし、こんなにエッチだったっけ……? こんなことはやめよう、という理性の声は、どこかに飛んで行ってしまう。 ゆっくりと手で、ペニスをしごきあげる。 それだけで、自分のあそこが、熱を帯びていくのがわかる。 Nの手を、わたしのあそこにもっていくと、びっくりしたように手をひっこめる。 「濡れてる……」 もしかして。 わたしの頭に、ぴんとひらめくものがあった。 声色を変えて、ささやく。 「あなた、童貞?」 「は、はい……」 やっぱり。 わたしは、いつもなら、絶対にしないようなことをしようとしている。 先ほど紙袋の中にあった、コンドームを取り出して、Nのペニスに装着する。 そして、ゆっくりと後ろを向いて、お尻を両手で持ち、外側に開く。 まるで、誘うように。 いや、まるで、じゃない。 誘っているのだ。 淫らに。娼婦のように。突き出したお尻に、オマンコに、あなたのオチンポをぶっ刺して、と。 こんなこと、いつもなら絶対にしない。 そうだ、これは魔女のゲームなのだ。 だからしょうがないんだ。 そう思うと、抵抗する気も失せて、自分から腰さえふってしまう。 「あ、あれ? あれ?」 Nは、うまくペニスを入れられないようだ。 経験豊富なわたしが、リードしなくちゃね。 年上の、社会的地位のある男が、性的経験がなくって、それをわたしがリードする。 それは、なんだか、とってもゾクゾクすることだった。 無限の力が手に入ったような気になる。 ペニスに手をはわせ、唾液をだらだらながし、欲しがっている下のお口に導いてあげる。 ぬぷぷっ、とペニスが入ってくる。 「童貞卒業、おめでとう」 「あ、ありがとうございますっ……」 感動したような男の声を聞いて、たまらない優越感。 ぎこちない腰振りも、年上のお金持ちの童貞を奪ったという高揚で、気にならない。 わたしも、自分から積極的に腰をふり、リズムをあわせ、快感をむさぼる。 「あ、あ、もう、だめ、ですっ……」 早いなあ。 でも、わたしも、年上童貞とのセックスで興奮しているから、ちょうどいいか。 「あ、いく、いくっ……」 わたしも、いくっ……! 二人で、同時に、オーガズムを迎える。 わたしは、しばらく机につっぷして、快感の余韻を味わう。 いつの間にか、男は消えている。 今夜の宴がもう終わったことを、頭のどこかで感じながら、わたしも片づけをして帰った。 帰り道の途中、思いついたかのように、友だちの百合に招待状を送って、その日は眠りについた。 翌朝。 我に返ったわたしは、百合に招待状を送ってしまったことが夢であればいいのにと思ったが、聞いてみると、きちんと受け取っていた。 わたしは、おそるおそる質問する。 「百合。あのゲーム、どうだった?」 「ああ、あの音楽ゲーム? 難しかったよー、すぐにあきらめちゃった」 え? 音楽ゲーム? 「いったい、どうしたの? 優花、なんか変な顔してる」 「あっ、ああ、うん、なんでもないんだ! そうだよね、わたしも全然だめでさー、百合ならどうかなって思ったんだけど」 「ははっ、あたしも無理無理ー」 どういうことだろう。 百合は、わたしが見た動画とは、違う動画を見たのか? 沙織だ。 沙織に、聞いてみなくちゃ。 「あのねー、あの動画。適性がない人が見ても、ただの音楽ファイルなんだってさ」 「え? ど、どういうこと?」 沙織の部屋で、告げられた衝撃的な言葉に、わたしは固まった。 「うん、ただの音楽ゲームみたいなのが出てくるらしいよ。私もよくは知らないけど。私のときは、ばっちりエッチな動画だったから」 「で、でも、あの動画、見たら、エッチな気分になって、あの場所に行きたいって思って、止まんなくて、それにヴァルプルギスの夜には、やっぱり操られてて、しかたなく、あんなことして……。そういうの、なんで百合には起こらなかった、の?」 にっこりと、沙織は、とても優しく笑った。 わたしがとても恥ずかしがっていることを、全然恥ずかしいことなんかじゃないんだよ、とでもいうように。 「命令されたから仕方なく、って思ってた? 自分が操られていると思ってた? じゃ、なんで、あそこにいた男は、優花の好みだったの? 少なくとも、こいつとは死んでもセックスしたくない、っていうやつが来なかったのは、なんでだと思う?」 「え? え? 沙織、それって……」 「『魔女のゲーム』だよ、優花。『魔女』のゲームなの。魔『女』。『女』のゲーム。わからない? 魔女の命令を、みんなが聞く、って書いてあったでしょ?」 沙織は、「女」の部分を何度も強調する。 「まさか、それって、操られてるのは、わたしじゃなくて……」 「そういうこと。いろんな男としたいと思ったでしょ? ロマンチックなセックスじゃなくて、魅力的な男たちに、欲望のままに、性欲にまみれた視線で見つめられて、犯されたいと思ったでしょ? そういう願望を、このゲームは叶えてくれるんだよ」 「じゃあ、じゃあ、魔女のゲームっていうのは……」 「女の、人には言えない願望をかなえるゲーム、ってこと。優花は、自分が操られていると思っていたみたいだけどさ。そうじゃなくて、男たちが操られているんだよ。そうじゃなかったら、噂になって、いろんな男が女の子たちとやりにくるに決まってるじゃん。そういうの、全然なかったでしょ? 主導権はこっちにあるの。あ・ん・た・が・主役。ってこと」 わたしが、動画を見て、参加したいと思ったのも。 命令は絶対だ、って言われて、みんなとセックスしたのも。 エッチな命令だからといって、エッチな下着で過ごしたのも。 全部。 全部全部。 わたしが、自分で―――― 「優花、顔、真っ赤。まあ、気持ちはわかるけど。でも、無修正動画や自分の性癖を親友に見られた私も、けっこう恥ずかしかったけどね」 沙織の顔も、真っ赤だ。 そうか。 沙織が参加したゲームを見たっていうことは、沙織の性癖を、わたしは、見ちゃったことになるんだ。 「キモイ系オタク男子に、アニメコスプレで犯されたいんだ、沙織……」 「ちょ、ちょ、ちょーーー!! マジ引くわー、みたいな顔するのナシな!? それに、あんただって毛深い独身教授に犯されて喜んでたじゃない! 若いだけ私の方がまだましだわ」 「いや、あのおじさん、お金持ってるでしょ、プレイしたあと、おこづかいくれたし、甲斐性はあるんじゃ……」 二人とも、口をつぐむ。 どっちも、どっちだ。 同じくらい気持ち悪くて、下品で、淫らで、最低の欲望―――。 沈黙は、きっと一瞬だったのだろう。 わたしたちは、すぐに爆笑してしまう。 「あー、恥ずかしい。わたし、何やってんだろね、ほんと」 「私もだよ、まったく、あー、バカみたい。バカみたい、だけど、さ」 はあっ、とため息をつく沙織は、とんでもなく色っぽくて。 「だけど、やっぱり、そういう気持ちも、確かにあるんだよね。付き合いたいとは思わない。愛してもいない。でも、あーゆーのに、性欲のままに、安全に犯されたいって。絶対に私を傷つけられない条件で、ドン引きするくらいエロいセックスしたいっていう気持ちが、さ…………フツーはみんな、オナニーで我慢しちゃうんだろうけど」 幸か不幸か、わたしたちには、その幻想を、現実にする手段が与えられた。 ぴこん。 二人の端末に、同時にメッセージが届く。 ヴァルプルギスの夜に、参加しますか? 二人で、笑いあう。 自分の笑顔は見れないけれど、きっと、沙織のものと同じように、いやらしい期待に満ちた卑猥な笑顔なのだろう。 動画を見た最初から、こうなることは決まっていたのかもしれない。 次の夜の魔女は二人になるだろう。 < 終わり >
あとがき すべての催眠は自己暗示という話を聞きますが(他人にかけられるというのは自己暗示を手伝っているだけという話)、もしそうなら、優花ちゃんも自分で自分を暗示にかけた、といえなくもないのかも。 乱交的な要素もいれようかと思ったが、書いているうちに入れるタイミングを逃した。が、乱交はわりとよく書いているので、なしでもいいかと思う。 この作品の構想段階にはあったけれども、魔女狩り編でも王様ゲーム編でも入れられなかった要素(謎のサイト、学校内で起こる異様な性の営み)をまとめた感じの話です。
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