2/6
一話目 俺は間違ってなんかいなかったんだ
退屈。
彼の、鈴木玉夫の脳裏にはこの二文字がちらつく。
子供の時が懐かしい。あの頃は最高だった。
ヒーローは毎週テレビに現れ、ある時は自分がヒーローとなっていた。
鳥と空も飛んだし、お化けもやっつけた。
そんなことはあるはずもないのに。
「くだらないよな」
彼は自嘲気味にそういった。
一度は皆が妄想すること。一部の人間はまだしているもの。
「おい、鈴木!」
玉夫に男が話しかけた。
「お前ホント根暗つーか陰気臭いよな!」
「言えてる言えてる」
「マジ何考えてんのお前? 言ってみ? ほら!」
最初に話しかけたのは、桐嶋隆司という男だ。
桐嶋に同調したのが雨宮静と加藤重信
三人とも髪は派手に染め、耳にピアスを開け、制服は着崩している。
彼らは俗にいう不良だ。
玉夫はこの三人によく絡まれる。態度が気に食わないからだ。
玉夫はこれをすべて無視している。
関わってはいけないことを知っているからだ。
いつもならすぐ終わるはずだが今回は違った。
「俺知ってるぜ」
桐嶋が喋りだした。その顔には薄気味悪い笑みがあった。
「こいつ、アニメとか漫画とか本気で信じてるんだぜ!」
そんなことはない。もう夢なんて見てはいない。
故に彼は退屈なのだから。
「なにそれきもーい」
「だよな! そう思うだろ!」
彼らはその後も喋ろうとしていたが、一人の男によりなくなった。
「いい加減やめないか」
桐嶋達の笑い声がピシャリと止んだ。
彼は飯田蓮。風紀委員だ。
「嫌がっているだろう」
「わかったよ」
桐嶋達は不満げに返事をしている。
彼らに注意を促すことができるのはこのクラスで彼だけだ。
こんな風景が日常に成りつつあった。
だがそんな日常は突然崩れる。
教室に魔法陣が浮かび上がった。
陣の上には桐嶋達と飯田、そして玉夫が居た。
眩い光が辺りを照らす。
彼らは声をあげる間もなく消えてしまった。
それは一瞬だった。
玉夫たちはこことは違う別の世界に往くこととなった。
これは偶然であり必然……。
魔界ガルガリアに彼らは招かれた。
これが運命というならば、なんと残酷なことだろう。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。