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オレは女子高生 作者:AT
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第218話 兄弟 ドキドキが止まらない!

 オレは壁の時計を見ながら玄関のチャイムを気にしていた・・まだかなぁ・・もういい頃なんだけどなぁ・・いつもより心臓が早い気がする・・・

その時“ピンポン”とチャイムが鳴る音がして、オレは急いで玄関へ向かった。
ドアを開けるとそこには・・
「お帰り、兄さん!」
「おっ、ただいま有希、元気にしてたか?」
「うん!」
兄さんと会うのは久しぶり・・ちょっと照れくさい。

・・オレの身体がこんなじゃなきゃ・・博多駅までむかえに行ったんだけど・・・

「手術のあとはどうだ?」
「うん・・ちょっと痛いけど・・でも大丈夫!」
「そうか、少し痛いのは仕方ないな。急に良くなるものでもないしな。」
「・・うん・・・あっ、兄さん上がってあがって!」
オレは兄さんの重いバッグを受け取ると、リビングに向かう途中で書斎に声をかけた。

「とうさん、兄さん帰ってきたよ!」
「そうか、キリがついたら出るよ。」
「うん。」

兄さんがリビングに入ってくる・・
「兄さん座って座って! 暑かったでしょう? 冷たいもの何がいい?麦茶?」
「あぁ、何でもいいよ。」
「・・何でもいいなんて言わないでよ・・久しぶりに帰って来たんだからさ・・ジュースでもアイスコーヒーでも何でも言ってよ! 兄さんのために色々冷やしてるから。」
「そうか、それじゃ麦茶くれ。」
「うん!」

麦茶は昨日から沸かして冷やしておいた・・やっぱり麦茶は煮出した方が断然おいしい! だって香ばしさが水で出すのとは全然違う!

・・まあ・・暑い時期だから煮出すのは面倒ってのはあるけど・・それくらいの面倒は兄さんの為なら全然平気だ!

「はい。」
氷を浮かべた麦茶を出すと、兄さんはおいしそうにゴクゴク飲んだ。・・飲み込むたびに上下する喉仏が・・何だか男らしい・・・
「?・・どうしたんだ?」
「!!・・ううん・・なんでもない・・」

・・いけない・・・オレったら・・兄さんに見とれちゃうなんて・・・

・・思わず自分の喉をさわってみる・・オレはほとんど喉仏が出てない・・・まぁ、女の子としては良いんだけど・・・一応声変わりはしたハズなんだけどな・・・


「麻衣は?」
「なんか友達と会うって出かけてる。」
「そうか。」
「兄さんお昼は? ウチで食べるんでしょう?」
「いや、今からちょっと出て来ようと思うんだ。」
「え?! 帰ってきたばかりなのに?!」

・・兄さんのために・・何か作ろうと思って色々材料用意してたのに・・・

「・・どこに行くの?」
「お前の学校だよ。白石先生にはお前がずいぶんお世話になってるからな、お礼を言いに行こうと思って。」
「え?! 白石先生のとこ行くの?!」
「本当は明日にと思ってたんだけど、先生の都合が今日しかつかないらしいんだ。明日からお盆だからな。」
・・白石先生にならオレも会いたい!!
「兄さん、わたしも行っちゃダメ?」
「ダメって事は無いよ・・だけどなぁ・・まだ退院して間がないし、無理しない方が良いんじゃないか?」
「・・で・・でも・・わたしも先生に直接手術の報告したいし・・電話ではしたんだけど・・・」
「でもなぁ・・」
「ひとりじゃまだ行けないけど・・兄さんと一緒なら心強いし・・」
「う~ん・・そうだな、まあいいか。」
「やった! それじゃすぐ支度してくるね。学校行くなら、わたし制服着なきゃ!」

2階に上がりながら・・そういえば、兄さんに新しい制服姿見せるの初めてだ。修学旅行の時は前のセーラー服だったもん。なんかウキウキするなぁ!

・・でも、部屋に入って着替えようとして・・オレは急激に落ち込んだ・・・

・・そうだった・・オレ・・オシッコ我慢できないんだっけ・・・

・・どうしよう・・・

・・尿漏れパットで大丈夫かな・・でも・・オシッコ止める練習は始めたばかりだし・・まだどこに力を入れるんだか良くわからない・・・

・・やっぱりパットじゃ不安だなぁ・・でも・・あんなオムツみたいなの穿いて・・スカートで大丈夫かな・・・

!!いけない・・兄さんが待ってるんだった・・とりあえず目立つかどうか穿いてみよう・・

 パンツを脱いで紙パンツを穿いてみる・・やっぱりどう見てもオムツだ・・・紙パンツを穿いた格好はあまりに恥ずかしいから、鏡を見ないようにしてブラウスを着て、赤いチェックのフレアスカートをはく・・・どうかな・・目立つかな・・?

鏡の前に立って横向いたり、後ろも見てみたけど・・思ったより目立たなかった・・・

・・オレはもともと女の子としてはお尻小さいし・・これくらいふっくらしても全然平気みたいだ・・・

・・ちょっと安心・・・

胸の赤いリボンを留め、ヒモを襟の中に入れる・・これまでは本物のリボンを結んでいたけど、二学期からはみんなと同じ、最初から結んであるやつに変えようと思って用意していたのだ・・本物のリボンも可愛いけど・・やっぱり結ばなくていいのはスッゴク楽だ・・もっと早く替えておけば良かったかも・・・


「お待たせ兄さん!」
階段を降りると、リビングにはとうさんもいた。
「あ、とうさん・・これから兄さんと私の学校に行くの・・お昼作れないけど・・・」
「ああ、何かとって食べるよ。」

すると兄さんが
「・・その髪、どうしたんだ?」
「あ、これ? ウイッグよ。ウチの学校は髪染めちゃダメだから・・」
・・黒のショートボブのウイッグはレナにもらったヤツだ。ウイッグは他にもいくつか持っているけど、学校に行くならこれが大人しくて良さそうだ。
「・・ヘンかな?」
「いや、似合ってるよ。AKBだったっけ、あのコみたいだよ。」
「そ・・そんなぁ・・」
・・AKBの誰のことだろう・・誰にしても・・それは言い過ぎだと思う・・・オレはアイドルみたいに可愛くないもん・・・

「まあ、AKBって言っても、おれには誰が誰だかって感じだけどな。」
そう言って兄さんは笑った・・・
「・・・・・」
・・兄さんったら・・オジサンみたいなこと言ってる・・・


「・・あ・・あの・・私の格好見て・・どこかヘンなトコない?」
オレは兄さんの前で、クルッと回って見せた・・やっぱりお尻・・大きいかな・・・
「いや? どこも変じゃないけどな。」
「ホント?!・・良かった・・」
「何か気になるのか?」
「ぅ・・ううん!」

・・どうやら紙パンツ穿いてるのわからないみたいだ・・・

「・・じゃぁ・・兄さん行こう?」


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


「その制服を見るのは初めてだな。」
「うん・・冬はこの上にカーキ色のブレザーだよ・・」

・・この駅までの道を兄さんと並んで歩くのは久しぶりだな・・・

「・・兄さんは・・セーラー服とブレザーとどっちが好き?」
「おれか? そうだな・・どちらかと言えばセーラー服の方が思いで深いかな。」
「え?! この制服は嫌いなの?」
「そうじゃないよ、どちらかと言えばって言っただろう?」
「・・うん・・」
・・でも・・兄さんはセーラー服がいいんだよな・・・

「そういう服は制服じゃなくてもあるけど、セーラー服は制服しか無いからな。」
「・・そっか・・」
・・たしかに兄さんの言うとおりかも・・・セーラー襟の服も無いワケじゃないけど・・制服みたいなセーラー服は普段は着ない・・その分、女子の制服らしい特別感はあるかもしれない・・・

「それに、おれが行ってた高校も女子はセーラー服だったからな。そういう意味だよ、思いで深いってのは。」
「あ、そっか。」
・・兄さんは中学はオレと一緒の中学だし・・高校は違うけど、兄さんは詰め襟の学生服だった・・女の子はセーラー服だったんだな・・・

「でもね、セーラー服って意外に大変なんだよ? 夏は首がつまってるから結構暑いし・・寒い時はカーディガン着るくらいしか調節できないし・・・」
「そうなのか?」
「うん・・だからこういう制服の方がラクなの・・だからセーラー服の学校、少なくなってるの・・」
「なるほどな、何にでも理由があるんだな。」

・・オレいったい何の話してるんだっけ?・・兄さんに制服の話したってしょうがないのに・・・


 駅で電車に乗る前にトイレに行った・・お漏らししないためには、とにかくこまめに行くしかない・・・

乗った電車は二人席のヤツで、オレは兄さんと並んで座った・・・なんか・・近くて緊張する・・・
「兄さんと電車乗るの久しぶりだね・・」
「そうかな?」
「そうだよ。」
・・だって・・オレ・・女の子になってから兄さんと電車乗るの初めてだもん・・・
(作者注:2年前に帰ってきた時、有友と一緒のときはタクシーや車を使っていました。)

・・兄さんとふれてる部分が・・なんだか熱い・・・心臓がドキドキする・・・

・・でも・・兄弟なのに・・ドキドキするなんて変だよな・・・

・・オレ・・本当は弟だもん・・・

・・弟が・・妹になってしまったのに・・兄さんのオレとの接し方は・・あまり変わらない・・・

・・もしかして兄さん・・まだオレのこと・・弟だと思ってるのかな・・?

・・ホント・・オレが女の子になって・・手術までしてしまったこと・・兄さんはどう思ってるんだろう・・ハッキリ聞いたことがない・・・

・・女の子にはなっても・・そこまでやるとは思わなかっただろうか?・・それともいずれ手術すると思ってたのかな・・?

・・タマを取ることは・・兄さんが白石先生に話したみたいだけど・・・

・・兄さんの本心・・・聞いてみたいけど・・なんだか怖くて聞けない・・・


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 夏休みの学校は静かだった・・校庭で運動部の声が少しするくらい・・・

・・校舎の中はもっと静かで・・なんだか寂しい感じもする・・いつもの学校とは、ぜんぜん雰囲気がちがう・・・

保健室のドアをノックすると中から白石先生の声がした。
「どうぞ、入って!」
久しぶりの先生の生声に嬉しくなる・・・
「こんにちは、先生。」
「有希ちゃん?!」
「ぁ・・兄さんが先生のとこに行くっていうから・・ついてきちゃいました・・」
「大丈夫なの? 退院したばかりなのに・・」

「お久しぶりです、白石先生。」
兄さんが先生にあいさつすると・・・
「ちょっとお兄さん、あなたも医学の知識があるんだから、退院したばかりなんだから少しは気をつけてあげてよ?」
「そうですね、すみません。」
・・そ・・そんな・・兄さんは悪くない!
「!・・ち・・違うんです・・わたしが兄さんに無理にたのんで・・・兄さんは無理しない方がいいって言ったんだけど・・・」

「痛くないの?」
「はい。」
「そう、だったら良かったわ。田口先生からもすごく順調に回復してるって聞いてたけど、有希ちゃんの元気な姿見て安心した。」
「はい! わたし元気です!」
・・本当は歩いたから少し痛いけど・・正直に言ったら先生心配させちゃう・・・

しばらくおしゃべりしていると・・急に尿意が・・・!
「・・あの・・ちょっとトイレに行ってきます・・」
・・いくらオムツしてるからって・・漏らさない方がいいに決まってる・・・


 オレは保健室を出て、上のいつも使ってるトイレに行った・・・保健室の近くにもトイレはあるけど、先生用だからもし誰か先生とガチあったら気まずいし・・・

「・・ふぅ・・あ~・・スッキリした・・・」
・・オチンチンが無いとこからオシッコを出すのにもだいぶ馴れてきた・・まだ止めるのは難しいけど・・・

カラカラとトイレットペーパーを手に取り、そっとアソコに当てる・・・
・・トイレが終わって拭くときに・・すごく女の子になったんだと実感する・・・やっぱりオチンチンの先っちょを拭くのとは全然ちがう。

パンツを上げるときはラクちんだ・・いちいちオチンチンを股間に挟まなくてもいいから・・・

・・もっともパンツといっても今は・・オムツみたいな紙パンツだけど・・・

 手を洗ってトイレを出るとガランとした廊下が新鮮で・・なんだかすごく校舎がなつかしく思えた・・・
「・・もう1ヶ月近く来てないもんなぁ・・・」

窓から中庭を眺めながら、ブラブラ廊下を歩いていると・・・
「あれ? 戸田さん?」
男の子の声・・声の方を振り返ると・・・!
「・・そ・・聡くん・・・」
・・鈴木の弟の聡二だった!

「どうしたんですか? 登校日でもないのに。」
「・・あ・・うん・・ちょっと用事があって・・」
「髪切っちゃったんですか?」
「・・うん・・ぁ・・これはウイッグだけどね・・本当の髪も切ったよ。」
「え?!それカツラなんですか? どんな髪か取って見せてくださいよ。」
「ダ・・ダメよ。」
「どうして?」
「ウイッグ被るのって結構大変なの! 一度取ると髪グシャグシャになっちゃうんだから・・」
「チェッ・・」

「それより、聡くんこそ・・なんで学校にいるの?」
「補習ですよ。」
「え? 聡くん勉強出来るのに・・なんで補習なんか・・・」
「その補習じゃなくて、僕たち進学クラスは夏休みも補習があるんですよ。」
「へぇ~・・大変だね。」
「僕たちは戸田さんみたいにのんきにしてられないんです。」
「うっ・・」
「塾に行く人もいるけど・・でもウチはお金も無いですから。」
「ぁ・・」
・・そうだった・・聡二はお父さんがいないんだっけ・・・
「だから学校が補習やってくれるのはありがたいんです。」
「・・そっか・・頑張ってるんだね。」

「でも明日からお盆だから休みですよ!」
「あ、そうなの?」
「戸田さんは? どっか行ったんですか?」
「あ・・夏休みに入ってすぐ田舎に行ったけど・・それくらいかな・・」
・・病院に入院してたことは言えない・・・
「お盆は? どこか遊びに行きませんか?」
?!・・これって・・もしかしてデートの誘い?!

「・・ごめん・・ちょっと用事があるから・・」
「そうですか・・」
・・ぅ・・聡二のヤツちょっとガッカリしてる・・でもこんな状態じゃムリだし・・・

・・それに・・聡二とどっか行くより・・お盆は兄さんと一緒にいたいもん!

あ・・そろそろ戻らなきゃ・・先生と兄さん心配してるかも・・・

「・・じゃぁね・・聡くん、勉強頑張ってね!」
「戸田さんに言われなくても頑張りますよ。戸田さんこそちゃんと勉強やってるんですか?」
「・・や・・やってるわよ・・・」
・・うぅ・・大きなお世話だ・・・可愛くないヤツ・・・

・・今年は入院中、弘子と長谷川が助けてくれたおかげで、ずいぶん宿題ははかどってるんだ!


 聡二と別れて保健室に戻ると・・・
「あ、有希、丁度いいところに戻ってきた。そろそろ帰るぞ。」
「え? もう帰るの? 先生と話は済んだの?」
「ああ。」
「・・そうなんだ・・」
・・いったい・・何の話したんだろう・・・
「有希ちゃん、何か聞いておきたいことあるの?」
「あ、いえ・・特にはないですけど・・」

・・あらためて聞かれると・・とくべつ話があるワケじゃない・・・ただ・・もう少し一緒におしゃべりしたかっただけで・・・

「気をつけてね、くれぐれも無理しないようにね。」
「はい。」
「それじゃ白石先生、今後も有希のことよろしくお願いします。」
そう言って兄さんは先生にお辞儀をした。オレも慌ててお辞儀をした。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 帰りの電車の中は冷房してるのに妙に暑かった・・・
「・・なんだか・・今日は暑いね・・・」
「まあ、夏だからな。でも今は冷房が効いてるから涼しいんじゃないか?」
「・・うん・・まぁ・・・」
「久しぶりに外に出たから、よけい暑く感じるのかもな。」
「・・うん・・そうかも・・・」

・・でも・・なんか暑いんだよなぁ・・・


・・それにしても・・こうして兄さんと肩を並べて座っていると・・またあの疑問が頭をよぎる・・・

・・ホントに兄さんは・・オレのことどう思ってるんだろう・・オレがまだ男の子だった頃と同じように接してくれるけど・・・

・・ちょっと怖いけど・・聞いちゃおっかな・・・

「・・ね・・ねえ、兄さん・・」
「ん?」
「兄さんは・・わたしのこと・・どう思ってる・・?」
「どうって?」
「・・だって・・前は弟だったじゃない?・・だから・・今はどうなのかな?って・・前と変わらないのかな・・それとも・・妹みたいに思ってるのかな?って・・・」
「そうだな・・あまり考えたことないな。」
「え?!」
「だって有希は有希だろう? 男でも女でも有希は有希だからな。」
「・・そ・・それは・・そうだけど・・・」

「見た目はずいぶん変わったけどな、心はそんなに変わってないんじゃないか?」
「!!!」

・・ドキッとした・・それはいつもオレが思ってることだったから・・・

・・みんなはオレのことを女らしいって言うけど・・オレは男の子だった頃とぜんぜん変わった気がしない・・・

・・やっぱりオレ・・変わってないのか・・?

「・・ダ・・ダメだよね・・身体だけ女の子になっても・・もっと心も女の子にならなきゃ・・・」
「それはどうかな。別に変わる必要もないと思うけどな。」
「えっ・・どうして?」
「さっきも言ったろう? 男でも女でも有希は有希だって。」
「・・・・・」
「女の子らしくなるのは構わないよ。だけど有希じゃなくなる必要は無いだろう?」
「!!」
「それに、お前は今でも十分女の子らしいぞ。」
「!・・心も・・?」
「ああ。」

・・どういうことだろう・・心は男の子の頃と変わってないのに・・女の子らしいって・・・

「有希は有希らしくいればいいんじゃないか?」
「・・わたし・・らしく・・?」
「女になったからって自分で無くなる必要もないし、そもそも自分でない人間になんてなれない。」
「・・・・・」
「有希は自分じゃない女の子になりたいのか?」
「・・ううん・・」
「だったらそのままでいいだろう?」
「・・そっか・・・」

・・なんか・・良くわからなくなってきた・・・兄さんの話は時々オレには難しすぎる・・・

・・でも兄さんが・・男でも女でもない・・そのままのオレを見てくれてるのなら・・ちょっと嬉しいかも・・・


「!!」
・・電車がガタンと揺れた途端・・急に股間がズキッとした・・・
「・・んぅっ!」
「どうした?」
「・・ぅ・・ううん・・なんでもない・・・」
「少し顔が赤いな・・」
兄さんはそう言うとオレのおでこに手をあてた・・・
「熱があるじゃないか!」
「・・ぅ・・だいじょうぶ・・」
「大丈夫じゃないだろう、まだ退院したばかりなんだから!」
「・・・・・」

「手術したとこ痛くないか?」
「・・少し・・」
「やっぱり連れて来るんじゃなかったな・・」
「・・ごめん・・兄さんのせいじゃないよ・・わたしが・・・」
「いや、おれのせいだ。駅まで持ちそうか?」
「・・うん・・たぶん・・」

・・うぅ・・なんとか駅までは持ちそうだけど・・・これじゃしばらく外には出られそうにない・・・せっかく兄さんが帰って来たのに・・どこにも遊びに行けないなんて・・・


 電車を降りようと席を立つと兄さんがオレの脇に手を回して支えてくれた・・・
「家まではタクシーで帰ろう、悪化したら大変だ。」
「・・・・・」
春日原の改札を出ると駅前に停まっているタクシーに乗った・・・

・・ウチまではワンメーターくらい近い・・それでも痛くて歩けそうにない・・・

・・タクシーの中では兄さんが・・ずっとオレの肩を抱き寄せていてきくれた・・・オレも・・こんな時だから・・遠慮せず兄さんの肩にもたれていた・・・

・・兄さんの匂い・・なんだか懐かしい・・昔とおんなじだ・・・


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 ウチに着くと、兄さんに助けられながら階段をあがり・・オレの部屋に入ると兄さんはオレをベッドに寝かせようとした・・・
「・・あ・・ちょっと待って・・」
オレはショートボブのウイッグを外してクシャクシャにならないように頭の形の台に被せてから、ベッドに横になった・・・

「まだ痛いか?」
「・・ちょっと・・でも歩かなきゃ大丈夫・・・」
「患部を診てみようか?」
「!!ダメ!!」
オレは慌てて股間を両手で押さえた・・・

「そうだよな、さすがにココはマズイよな。」
「・・うん・・」

・・もちろん・・手術して女の子になったアソコを見られるのも恥ずかしいけど・・オムツを穿いてるのを見られるのもイヤだ!

「熱はどうかな・・」
兄さんはいきなりオレの前髪を手で上げて、オレのおでこに自分のおでこをくっつけた!
「!!!」
「・・まだ少し熱はあるみたいだな。待ってな、氷枕持って来てやるから。」
「・・・・・」
兄さんはそう言うと部屋を出ていった・・階段を降りる音が小さくなる・・・

・・うわぁ!・・焦った・・いきなりおでこくっつけるなんて・・あんなことされたらよけい熱が上がっちゃうよ!

音で兄さんが降りたのを確認すると、オレはベッドを降りて急いでオムツを脱いでベッドの下に隠した・・少しフラフラする・・・
「・・・・・」
・・そして恐る恐る股間を見てみた・・・
「・・だいじょぶ・・かな・・・」
・・とりあえず血とかは出てなかった・・縫ったところも開いたりしていない・・表面的には、なんとか大丈夫そうだ・・・

・・それにしても・・ココってほんとに変なカタチだ・・女の子はみんなこんなになってるなんて・・・千里も弘子も直美も・・みんなこんなになってるんだと思うと・・不思議な気持ちになる・・・

!・・兄さんの足音だ!!

オレは慌てて引き出しからパンツを出してはくと、急いでベッドに横になった・・・
「氷枕持ってきたぞ、あと体温計も。」
「・・うん・・・」
首の後ろにタオルで巻いた氷枕を置くと、制服のリボンを外してブラウスのボタンを3つはずし、兄さんに渡された体温計を脇にはさんだ・・・
「まだキツいか?」
「・・ううん・・そうでもない・・」
「そうか・・」

・・心配そうな顔・・・兄さん・・責任感じてるんだろうか・・?

・・全部オレのせいなのに・・・

体温計が“ピピッ”と鳴って・・出したのを兄さんに渡す・・・
「37度5分か・・しばらく寝てろ、な。」
「・・うん・・ごめんね・・せっかく兄さん帰って来たのに・・なんにも出来なくて・・・」
「そんなこと気にするな。良くなってからしてくれればいい。」
「・・うん・・・」

枕元に体温計を置くと・・・
「また見にくるから、おとなしく寝てるんだぞ。」
「・・うん・・・」
兄さんは部屋を出て行った・・・

・・そうだ・・制服脱がなきゃ・・シワになっちゃう・・・
オレは制服を脱いでハンガーに掛け、部屋着に着替えてから、またベッドに横になった・・・
「・・はあぁ・・・」
・・氷枕が心地いい・・兄さんの優しさがつまってるみたい・・・


・・あ~ぁ・・今日は兄さんに美味しいもの作ってあげようと思ってたのに・・最低だ・・・

・・でも・・今はムリ・・キツいし眠い・・・


・・あっ!・・しまった・・今日ダイレーションするのも忘れてた・・・

・・今から・・ってのはムリか・・さすがに痛いよな・・1日くらいやらなくても大丈夫かな・・・


 オレは眠りに落ちながら思った・・

・・明日は絶対・・ダイレーションやらないと・・・

・・せっかく作った穴が塞がっちゃったら大変だ・・・





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