近年、金融とITを組み合わせた「FinTech」と呼ばれる分野で新興企業が次々と台頭し、消費者や企業が金融機関に求めるサービスにも変化が生じている。業界関係者や専門家によれば、そうした中、世界トップクラスの銀行や保険会社は従来のビジネスモデルが脅かされつつあることに危機感を強めているという。
世界の政財界人らが集う「ダボス会議」で知られるスイスのシンクタンク、世界経済フォーラム(WEF)は6月30日に発表した報告書において、「かつて非常に高い収益性を誇っていた金融サービス業界の前途には大きなディスラプション(創造的破壊)が待ち受けている」と指摘している。
英国の規制当局が先週、「支店なし、紙の書類なし」の金融機関であるAtomに銀行免許を付与したことは、“地方銀行の親切な支店長”という肩書きの終焉を予兆しているのかもしれない。Atomの顧客は全ての取引を自分の携帯電話かタブレットで行う。
WEFだけでなく、スペインSantander銀行のベンチャーキャピタル子会社であるSantander InnoVenturesなど、最近ではさまざまな報告書で「デジタル化の波が金融サービス業界の堅固なビジネスモデルを侵食しつつある」との指摘がなされている。旅行業界やエンターテインメント業界が10年かそれ以上前にデジタル化の波にさらされたときと全く同じ構図だ。
金融サービス業界への新規参入組は目下、クラウドコンピューティングによるコスト削減を武器にデータ処理と分析能力で既存の銀行に真っ向から勝負を挑んでいる。Santander InnoVenturesの報告書はこうした動きを「FinTech 2.0」と呼んでいる。
「デジタル化以前のビジネスモデルやビジネスプロセスは時代遅れとなり、新しいビジネスモデルの企業に数十億ドル程度がシフトすることになるだろう」と同報告書は予想している。
FinTech分野の新興企業への投資は世界規模で拡大しており、そのことが既存の大手企業の危機感に拍車を掛けているようだ。調査会社CB Insightsによれば、FinTech分野のベンチャー企業に対する投資額は2014年には122億ドルと、前年の3倍以上に増加している。
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