「アメリカの文化は好きではありません。」
ー安倍政権は、基地問題も安保法制も、いずれもアメリカとの関係上、それが必要だという立場を取っていると理解しています。監督は、日米関係について、どのようにお考えでしょうか。このままでいいのか、もっとこうあるべきだ、というのがあれば、教えてください。それについて、つまり僕はアメリカに非常に大事な友人たちがずいぶんいるんです。極めて誠実な、本当に友情に厚い友人ですが、アメリカの文化は僕は好きではありません。アメリカの生活様式も 日本に多く浸透している色々な生活のやりかたも、基本的に好きじゃない人間なので、そういう色眼鏡だけで見てしまいます。
今、具体的にどういう方針をめぐってどうなのかとここで述べることはできませんが、僕はいつか大量消費文明に終りが来るだろうという予感の中で生きていますので、それでお答えをご勘弁してください。
ー安保連法案も多くの国民はよくわからないと言っていますし、憲法学者のほとんども反対だと言っている。強制採決されようとしているそのやりかたも疑問視されている。そしてまた自民党の一部の会合で沖縄の新聞に対すする発言もありました。少しずつ民主主義が壊れていっているのではないかという人がいます。監督は、表現をする立場としてどうお感じになっていますか。
もともとその程度のレベルのひとたちなんです。それが自分たちが数が多いと思ってのさばって姿を現しただけだと思います。
あまり良い返事じゃないですが(笑)非常に悲しいお答えですが(笑)
ー「風立ちぬ」で、監督の意図としましては平和主義的な考え方を打ち出していたと思いますが、中には軍事的なことを美化していると誤解した受け止め方もあったと思います。
昔、三島由紀夫にフランスのメディアが質問をしたときに、日本人とは"invisibleである"と答えました。監督は、日本人というものは何であると思いますか。
社会の右側の端っこにいる島の人間たちで、平和に暮らせるはずの人間たちなんです。僕はそれだけです(笑)。
この水と緑と、資源と言ったらコメが穫れるくらいです。でも今僕らがやっている生活は、他所からかきあつめてきて、それを使い尽くしていくという、そういう生活です。それは長く続かないでしょう。
日本人であるということは僕にはよくわかりません。わかりませんが、本当の必要な知恵は、世界の隅っこでひそやかにいようというのが一番正しいと僕は思っています。
ー文部科学省が、すべての人文社会科学を廃止する方針を打ち出しました。その方針についてはどう思いますか。
歴史というものに対する感覚がひどく鈍くなっているんだと思います。いま、歴史のある場所にいるんだという感覚が鈍くなっていて、このままずっと続くんだろう、みたいな感じがこの国に蔓延しているんだと思いますね。
第二次大戦の後、日本は冷戦の狭間で、保守と革新というのは、民主主義か社会主義かというそういう冷戦構造のなかで揺れ動いてきたんです。それが冷戦が終了したあと、つまりソ連が崩壊した後、はっきりとした根拠、つまり保守と革新を分ける根拠を失ったんだと思います。その再建がまだ革新の側にできていないんだと思いますよ。
ー原発が近く再稼働される予定です。どうお考えでしょうか。日本は原発を放棄すべきだと思いますか
ええ。こんな地震だらけで火山だらけの国で、原発なんてもってのほかです。
この土地だって、本当にわずかな前に火山の噴火によって出来た土地ですから。私は東京と埼玉の間に住んでいますが、そこの川沿いの小さな土地にいますけど、実は東京湾に津波か高潮が起こった場合、東京都のハザードマップによると、私の家も沈没することになっています。そのスケールたるや、壮絶なスケールなんです。そういうことが起こりうる、いや、起きるだろうと確実に。そういう国にいいるんです。
"ここは津波が来るか"というと、意見の分かれるとこですが、友人たちの多くはそんなことははないだろう言いますが、実際いつかは富士山が爆発して巨大な阿蘇山のようになるんですから、この国は本当にわからないんです。わからないということを前提に生きないといけないところなんです。そんなとこで原発なんてもってのほかです。
ましてですね、沖縄をなんのために基地にするかと言ったら、それは中国の封じ込めの最前線でしょ。だけどなぜアメリカがグアムに海兵隊を持って行こうとしているかといったら、それは最前線に最強部隊を置くことはできないでしょう。だって、パールハーバーもクラークフィールドも、そこに最強の基地があったから日本海軍が攻撃したんです。必ずそういうことになりますがから。沖縄を拠点にすることは、もはやアメリカの戦略でもよくないことになっていると思います。ベトナム戦争の時とは違うんです。
結局それは、自衛隊が使うことになるでしょう。そう考えると、僕は辺野古に埋め立ての基地を作るのは本当に反対です。本当に。そこは標的を作るようなものです。というのも入っています。
ー先ほど、アメリカの大量消費文化について、あまり好きではないとおっしゃいました。しかしながら、アメリカは監督の映画を大好きですし、非常に成功しています。そうは言っても、ハリウッドでは翻訳などを通しますから、何か本来の意味、監督が打ち出したいという意味が少しでも変えられていると思うことはありますか。
いや、アメリカに紹介するについては、Pixarのジョン・ラセターが非常に友情と責任を持ってやっていますから、彼を本当に信頼しています。本当に一番の親友です。
ついでにちょっとひとつ。僕がイギリスのブリストルにある、アードマン・スタジオのスタッフと交流したときに、彼女たちがサインしてくれとDVDを持ってきました。完全な海賊版でした(笑)。どういう風になっているのかわたしには見当も付きません(笑)
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