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「リモートで働くのは当たり前」 異端のテック企業・ヌーラボの挑戦

取材・文=上田裕資 写真=伊藤勇 Original

posted on 2015.07.13, at 07:39 pm


「テレホーダイの頃がネットの原体験」と語るヌーラボ代表・橋本氏

「テレホーダイの頃がネットの原体験」と語るヌーラボ代表・橋本氏

「インターネットってそもそも、会ったことも無い誰かとつながる道具じゃないですか。離れた場所にいる仲間と一緒に働くのはすごく自然なことだと思うんですよ」

テレークやリモートワークという言葉が登場する以前から、ごく当たり前にそれを実践してきた企業が九州にある。福岡を代表するテクノロジー企業、ヌーラボの代表・橋本正徳は現在39歳。創業は2004年。昼間は派遣プログラマとして働きながら、深夜にウェブ上のオープンソースコミュニティに出入りし、一緒にコミュニティーを運営していた仲間ら3人と会社を創立した。

「インターネットの黎明期、特にテレホーダイがあった頃なんて、ネットというのは夜中に家でパジャマを着てやるものだった。会社を立ち上げる以前から趣味でインターネットやパソコン通信をやっていましたが、オンライン上のソースコードを共有して、知らない人たちが手を組んでプログラムを完成させるようなことは普通にやっていた。起業した当初はお金も無いからオフィスが持てない。だから、それぞれが自宅からつながって仕事をするのが普通だったんです」

ヌーラボの代表的なプロダクトであるプロジェクト管理ツール「Backlog」のサービス開始は2006年。当時、東京の大手企業からの受託開発業務が中心だった橋本らは、プログラム開発の現場でスムーズな情報共有ができるツールがあればみんなに使ってもらえると思い開発を進めた。

「当時のコミュニケーションはメールが中心でした。たまに電話もかかってくるけれど、電話は言った言わないの話になるからプログラム開発には向かない。楽しく仕事を進めることが出来て、エビデンスも残るツールとしてBacklogを作りました。仕事をくれたお客さんの側にも自社の製品を導入してもらい、使いやすさを追求して磨きあげていきました」

Backlogに続き、2010年には図形共有ツールの「Cacoo」(カクー)をリリース。DeNAやCookpadといった国内大手でも利用され、ユーザー数は世界で170万人以上。その8割以上が海外企業だ。現在は福岡、東京、京都の三拠点にオフィスを構え、海外ではニューヨーク、シンガポールに拠点を置き、台湾、ベトナムにもリモートで働く社員がいる。

「同じタイムゾーンにいる仲間、特に福岡、東京、京都に関してはオフィスの様子を動画も音声も含め、ライブ中継でつながっています。うちの場合はテレワークというよりも、多拠点オフィスと呼んでいますが、特に意識的にこういうスタイルを選択したのではなく、みんなが住みたい場所に住みながら仕事をやるうちに、気がついたらこうなっていた」

福岡、京都、東京の3拠点を常時、ビデオ会議システムで中継

福岡、京都、東京の3拠点を常時、ビデオ会議システムで中継

取材中、ミーティングテーブルに置かれたモニター越しに東京の開発チームに声をかけてもらうと自然なノリで雑談がはじまり、やがて京都のチームがそれに合流。福岡、東京、京都の3拠点をまたいだ会話がはじまった。

「基本的にネットがつながっていれば仕事は出来る。いろんな拠点があったほうが優秀な人材も採用しやすいメリットもある。結婚を機に福岡から二時間ぐらいかかる離島に移住した女性社員もいて、彼女の場合は出社は週に一度だけ。ほかはずっと在宅でやっています。社員全員と合うのは年に一回の合宿ぐらい。三ヶ月に一度は社内総会をオンラインでやっています」

福岡オフィスに勤務するのは15名。「営業職が居ない」というヌーラボのオフィスにはスーツを着た社員が一人も居ない。「いっそのこと、社長自身も在宅勤務で務まるのでは?」と尋ねてみると、

「僕自身は家に居ると、嫁さんや子供がいるから気が散って仕事に集中できない。出勤したほうが気持ちの切り替えができるから会社に来る。けれども要は結果が出せればいいんだから、働き方は個人のスタイルに任せるという方針です」

◼︎テレワークについての詳しい内容はこちらをチェック
http://forbesjapan.com/telework

取材・文=上田裕資 写真=伊藤勇

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