[新安保政策・与野党攻防激化] 議論は深まっていない
( 7/14 付 )

 安全保障関連法案を審議する衆院特別委員会はきのう、採決の前提となる中央公聴会を開いた。

 与党推薦の有識者らは、中国の軍事的な台頭などを理由に賛成した。野党推薦の憲法学者らは「専守防衛を逸脱し、憲法違反」などと批判した。

 公聴会を済ませ、与党は採決の環境が整ったとしている。15日に特別委で採決、16日には衆院通過の構えだ。

 ちょっと待ってほしい。

 審議は与党が目安とした80時間を超えて110時間前後になる。

 だが、公聴会は有識者らの意見を審議に反映させるために開くものだ。維新の党などの対案の審議も始まったばかりではないか。

 維新の松野頼久代表は、「15日に採決するなら、採決には加わらない」と強くけん制した。

 議論が深まったとはとても言えない。むしろ、本格的な審議はこれからである。

 そもそも法案は憲法違反の疑いを拭えない。いくら審議時間を重ねても国民の間に支持が広がらないのは、政府・与党の反論に説得力がないからだ。

 集団的自衛権の行使要件となる「存立危機事態」の定義も曖昧で、明確な歯止めを欠く。

 安倍晋三首相は、「国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険」という武力行使の要件があり、ホルムズ海峡の機雷掃海など限られた事例しか念頭にないと強調する。だが、事例は現時点でのものだ。

 国連平和維持活動(PKO)協力法の改正も見過ごせない。

 これまで国連統括下に限定していた自衛隊の活動を、国連が統括しない業務に参加できるようにするものだ。

 改正案は「国際連携平和安全活動」と位置付け、治安維持や人道復興支援などを行う。いわば有志国連合への参加である。これが果たしてPKOと呼べるのか。

 危険な任務への参加で、高まる自衛隊員のリスクの問題も納得できる説明がない。

 地方議会からは慎重審議などを求める声が相次いでいる。

 共同通信によると、集団的自衛権を認める憲法解釈変更を閣議決定した昨年7月から1年間に、国会に提出された安保関連の意見書が少なくとも469件あった。

 圧倒的多数が閣議決定の撤回や法案の廃案ないし、慎重な審議を求めた。「丁寧な説明」を繰り返す安倍政権だ。これらの声を無視することは許されまい。


 
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