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 新たな安全保障関連法案を審議する衆院特別委員会で13日午前、専門家から法案への意見を聴く中央公聴会が開かれた。集団的自衛権の行使容認を盛り込んだ法案は「憲法違反」という指摘や、安全保障環境の変化を理由に必要だとする意見が示された。中央公聴会は採決の前提となるもので、与党は週内の委員会採決をめざしている。

 野党推薦の木村草太・首都大学東京准教授(憲法学)は「日本への武力攻撃の着手がない段階での武力行使は違憲だ」と明言。法案の違憲性を問う訴訟があれば「裁判所が同様の見解をとる可能性も高い」とし、「集団的自衛権の行使容認が政策的に必要なら憲法改正の手続きを踏み、国民の支持を得ればいいだけだ」と述べた。

 さらに、維新の党が提出した対案にある、個別的自衛権を拡大した「武力攻撃危機事態」について「外国軍への攻撃が同時に日本への武力攻撃の着手になる事態を意味すると解釈するなら合憲だ」との考えを示した。

 野党推薦の小沢隆一・東京慈恵会医科大教授(憲法学)は、集団的自衛権を使う際の前提条件「存立危機事態」の定義があいまいで、行使の歯止めがなくなりかねないと批判した。その上で、「(海外派遣された)自衛隊員が相手方に拘束された場合、戦闘員でも文民でもないという不安定な地位に追いやられる」とも指摘した。

 野党推薦の山口二郎・法政大教授(政治学)は、集団的自衛権の行使容認で日米同盟が緊密になって抑止力が高まるとの政府の主張に対し「中国との対話や相互理解はそっちのけで、自国が武力行使する可能性を拡大すれば、より安全になるとの主張は政治的に稚拙だ」と批判した。

 一方、与党推薦で外交評論家の岡本行夫氏は「宗教や民族、国家間の対立が先鋭化し、過激派組織『イスラム国』のような暴力的な準国家組織が勢力を伸ばしている。一国で生命と財産を守り抜くことは不可能だ」と述べ、法整備に賛意を示した。

 与党推薦の村田晃嗣・同志社大学長(国際関係論)は「中国が経済的に急速に力を付け、軍事力や外交的な影響力に転化しようとしている」とし、「こうした中で日米同盟の強化は理にかなったことだ」と述べた。(小野甲太郎)

■菅官房長官「論点、整理された」

 菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で、安全保障関連法案について「審議時間が100時間を超え、維新の党から対案が出されたこともあり、論点はだいぶ整理されている」と述べ、衆院採決に向けた環境が整いつつあるとの認識を示した。