遠藤 成=構成 ノーチラス工房=写真
1人の時間を大切にしたいという蛭子能収さん。人との「つながり」がストレスを軽減し、人生を豊かにするという予防医学の石川善樹さん。お2人に、人付き合いの極意を聞いてみた。
◎相談◎毎日ネタを考えてはFacebookに投稿している。「いいね!」の数も気になる。依存症かも。
▼蛭子さんの回答
他人に好かれよう、嫌われまいという気持ちが強すぎ
だいたい、今日これ食べたとか、どこに行ったとか、うちのネコちゃんがかわいいとか、要するに「私、楽しい人生を送ってます」というアピールでしょ? そんなもん誰も知りたくないし、どうでもいい。人間が知りたいのは、他人の不幸。だから、楽しいことは一切投稿するなといいたい。
みんな、嫌われるんじゃないかとか、友達だからとか、考えすぎです。他人にどう思われたっていいじゃないですか。僕は人から嫌われていると思ったことがない。だって人に迷惑をかけることをしていないもの。そう胸を張っていればいい。友達の誘いだから断れないとか、おかしいでしょ。友達だから断れる。誘いを断れないような間柄を友達というのなら、僕は友達なんていりません。
▼石川さんの解説
感情は伝染する。感情表現はポジティブに
SNSではみんな、自分を実態より盛って見せようとしますから、それをリアルと信じると、自分がみじめに見えてきます。都合の悪いことはカットして、いいとこ取りすればいいのです。
現代では、SNSを介して「つながり」をつくることが一種のブームになっています。コミュニケーションツールが発達していない時代は、親しい人は地域の中でつくるしかなかったのですが、今は昔の友人ともつながりやすくなっているし、海外にいる人とも簡単につながれます。
SNSのようなバーチャルな「つながり」が、リアルな「つながり」とどう違うかについては、まだはっきりしていない部分もあり、「つながり効果」も賛否両論あります。
研究の世界では、本来「つながり」を持つべきである人たちが、「つながり」を持たないことで起こる損失を「社会的損失」という概念で呼んでいます。SNSはこの「社会的損失」を減らすよい道具になってくれます。
もうひとつ大事なことは、感情は伝染すると知っておくことです。69万人を対象にしたある実験で、特別なアルゴリズムで、フェイスブックの投稿に含まれる感情表現をポジティブとネガティブに分類しました。さらにポジティブな投稿の表示を減らした場合とネガティブな投稿の表示を減らした場合では、どんな変化があるのかを調べたのです。すると、ポジティブな投稿を多く見た被験者はよりポジティブな投稿をするようになり、ネガティブな投稿に接した被験者はよりネガティブな投稿をするようになったのです。
そして、別な実験では「3次の隔たり」(例:友達の友達の、そのまた友達)まで、感情や行動は伝播することが確かめられています。つまり、自分の感情は自分1人が決めているのではなく、つながりの先にある膨大なネットワークの影響を受けているという事実を忘れないでください。あなたのネガティブな感情は、あなたのせいではないかもしれないのです。
最後に、物理的につながっていても、主観的に孤独感を抱いている人は、健康状態がよくありません。逆に蛭子さんのように、ひとりぼっちに見えても、孤独感を感じない人もいます。
ヒトの遺伝子には、つながりを求める遺伝子とともに、つながりを拒む遺伝子も存在します。これは人類の生存にとっては極めて有効で、全部がつながって、感染症などで全滅してしまう危険を避けられたとも考えられます。
【「つながり」疑問派】蛭子能収(えびす・よしかず)
漫画家。タレント。1947年、長崎県生まれ。長崎商業高校卒業後、看板店、ちり紙交換などの職業を経て、漫画家に。現在は、ユニークな風貌と独特の発言で、バラエティ番組などでも活躍。近年の絆ブーム、つながり礼賛の風潮に疑問を呈した『ひとりぼっちを笑うな』が話題になる。
【「つながり」肯定派】石川善樹(いしかわ・よしき)
予防医学研究者・医学博士。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部を卒業後、米国ハーバード大学公衆衛生大学院修了。昨年秋に出版した、人との「つながり」と寿命についての研究をまとめた『友だちの数で寿命はきまる』が話題になる。近著に『最後のダイエット』。
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