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第1回 NATOにやってきました

NATO事務総長特別代表
(女性、平和、安全保障担当)補佐官
栗田 千寿

2015年1月26日

皆さん初めまして。

北大西洋条約機構(NATO)本部に派遣され、12月1日、ブリュッセルに赴任してきました。ヨーロッパに来たのはこれが3回目。しかも、日本人初のNATO勤務という栄えある機会を頂き、正直言ってとても緊張しています。

今回の派遣は、2014年5月の安倍総理とラスムセン前NATO事務総長の首脳間の合意に基づくものです。安倍総理は、これまでに「女性の輝く社会の実現」を国内外で強調しており、この中には途上国の女性支援という面と、日本女性の社会での活躍拡大という面が含まれています。つまり、日NATO協力の進展と、国際的課題である「女性分野」での日本女性による取り組み、という二つのニーズから実現した派遣ということになります。

日本はNATOの加盟国ではありませんが、重要なパートナー国としてこれまで協力関係を進展させています。安全保障・防衛協力は、まずは定期協議などの会議や教育・研究分野の交流を通じて信頼醸成を図り、共同訓練の実施や人的交流を重ねて徐々に進展していきます。折しもNATOは「女性、平和、安全保障」分野における各国からの協力を求めており、今回わが国からの女性自衛官の派遣により、日NATO関係はますます緊密化し、協力関係は新たなステージに入っていくことが期待されています。ちなみに、NATO本部への要員派遣は、アジア(北東・南東アジア)からは日本が一番乗りなのです。

というわけで、到着翌日の2日から、NATO事務総長特別代表(女性、平和、安全保障担当)補佐官としての勤務が始まりました。国際事務局(IS: International Staff)という文民組織所属のため、陸上自衛官の制服から私服に着替えての勤務です。周囲は欧米バリキャリ美女ばかり。アジア系の人はほとんどいないので、自分が「平たい顔族」なのが一層際立ちます。今後、欧米美女に習い「ステキ女子」を目指す道と、大和撫子の「珍獣街道」をまっしぐらに突っ走る道と、どちらがいいのか真剣に考えているこの頃です。両方使い分けるという道もあるかもしれません。

NATO本部内に、なんと個室を頂きました。数十人が大部屋で勤務する防衛省自衛隊から来たので感動していたら、実はNATOの職員はほとんどが個室勤務なのでした。勤務時刻が厳格に決まっている日本と異なり、NATOでは朝早く来る人もいれば、ゆっくり出勤する人もいるようです。帰りも色々理由を言ってはまちまちに去って行きます。要は、自分の仕事さえさばけばいくら休んでも誰も文句を言わない、という独立性の強い文化なのですね。日本との違いをじわじわと実感しています。

ところで、NATOの正面玄関には加盟国28カ国の国旗が、NATOのシンボルを囲むように円環に配置されています。ある職員に全て識別できるか聞いてみたところ、「実のところ、わからない国旗もある」などと言っていました。国際事務局には1,200名ほどの職員が勤務しているそうです。それぞれ一畳くらいはあろうかという各国旗が曇り空の下、バタバタと風にはためくのを、2年も経てばこの巨大な組織の一端がわかるようになるだろうかと思いつつ、一人見上げています。

NATO本部内の「Chizuの部屋」はまだ殺風景ですが、これから日本色に仕立てて、時々物珍しそうに立ち寄る親日派を皮切りに、日本のファンを増やしていきたいなと考えています。

次回は、補佐官の職務の内容やオフィスの雰囲気について、ご紹介したいと思います。

(栗田2佐略歴)

昭和50年京都市生まれ。同志社女子中高、同志社大卒業後、平成9年陸上自衛隊入隊。第5高射特科群(八戸)、第2高射特科群第336高射中隊長(松戸)、国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)軍事連絡要員、統合幕僚監部防衛計画部防衛課防衛交流班等を経て、平成26年12月よりNATO勤務。

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(写真:NATO正面玄関にて、岸田外務大臣NATO訪問時の献花とともに)

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