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【安保法制公聴会】
同志社大学長・村田晃嗣氏「学者は憲法学者だけではない」「戦争法案と表現したら安保の理解深まらない」
そして国際情勢の変化が、科学技術の向上とあいまって、いっそう大きく早くなっている。そうした中、国際情勢をあいまい、不明確として、国際情勢を憲法違反であると断定したところで、国際情勢そのものは変わらない。
侵略と防衛について。侵略について、明確なコンセンサス、定義はない。しかし一方で先の大戦でアジアにおいて行った多くの行為が、かなりの部分で、侵略といわれてもしかたない側面を持っていることは否定できない。明確に定義できないことと、何が侵略であるかが、個別に判断できないのは別。先の大戦では、アジアにおいて行った行為のかなりの部分についてまで、その侵略性を否定するというような議論を流布すれば、戦後、自衛隊という実力組織を持って、自衛に徹してきたという戦後の正当性が損なわれるであろう。明確に100%定義できないからといって、個別の事柄について侵略かどうかの判断ができないというわけではない。
他方で、国際情勢の流動化、科学技術の進歩に伴って、全ての事柄について、明確に防衛と侵略の一線を必ず引けるかというと、それは非常に難しくなっているのが現状。2つの極端の議論を排したとところで、安全保障を考えなければならない。中には、今回の法案が通れば、自衛隊が地球の裏側まで行って戦争するという議論があるが、自衛隊には、そのような能力が多分に欠けていると思う。また、自衛隊がそのような行為を取るときには、政府の政策判断があるだろうし、国会の議論や承認がある。