母音字:
u/o/a/e/iはウ段/オ段/ア段/エ段/イ段にそれぞれ対応。
子音字:
カ行はk、ガ行はg、サ行はs、ザ行はz、タ行はt、ダ行はd、ナ行はn、パ行はp、バ行はb、マ行はm、ラ行はrにそれぞれ対応。
濁点/半濁点の有無に関わらず、濁音の子音字はg/z/d/b、パ行音の子音字はpとなる。
ちなみに、和語に於いてラ行は滅多に語頭に立たず、非語頭でのラ行子音の音価は典型的なrの音価である。
この様に基本的な翻字規則は日本式ローマ字に従うが、以下に注意の要る文字を挙げる。
維持されるべき綴りが不明または存在しない場合は、引き音拍を段ごとに次の様にする。
*括弧内は音声転写での綴り(長音符が使われている長音の表記からの翻字)
ウ段長音: uu(uu)
オ段長音: ou(oo)
ア段長音: aa(aa)
エ段長音: ee(ee)/ei(ei)
イ段長音: ii(ii)
ウ段拗長音: iu(juu/yuu)
オ段拗長音: eu(joo/yoo)
オ段甲長音: awu(aww >oo)
エ段乙長音: ayy(ayy >ee)
イ段乙長音: uyy(uyy >ii)
オ段長音は「オ段+ウ」という頻出の仮名遣いで表現できるので、甲類乙類共にこれを優先する。
ウ段拗長音ではiu、オ段拗長音ではeuという形にする。
eiはエ段長音(ee)と二重母音(ej)との両用に読まれるので、エ段長音としか読まれないものにはeiを使えない。
音声転写としてのau/aww/ayy/uyyを使うのは、古語の発音を真似る場合など、失われた音素を利用しなければ表現できない音声を転写する場合のみである。
父さん: Tóusam
母さん: Káasam
姉さん: Néesam
兄さん: Níisam
どう: dóu
斯う: kau/káu
然う: sau/sáu
ああ: aa
詩歌: Síika/Síka
背: Sé >Séi
高え: takái >takée
寒え: samúi >samíi
細え: xosói >xosée
良え: jói >jée
焼売: Siumai/Syuumai(音声転写)/Shāomài(原語)
餃子: Geuza/Gyooza(音声転写)/Jiǎozi(原語)
子音字拍の直後の引き音はその子音字で表す。
h:
次の1/2/3のどれかに当てはまる場合、ア行に形式的な子音字としてhを付ける。
ハイフンの有無はhの有無に影響しない。
語頭のhは役に立たないので、これを省略してもしなくても良いが、文字数節約のために省略することを推奨する。
1(語構成の明示): 形態素頭であり、引き音になっていない場合
2(綴りの維持): 1の形態素が元の形を失いつつも、その頭の非引き音のア行を維持している場合
3(拍数の維持と呼気の停止): 子音字が必要な場合
3の具体例:
・同一語内に於いて直前に子音字がある。
・同一語内に於いて直前に同段(甲乙は無視)の母音字があり、その引き音になっていない。
また、和歌の字余り句に於いて音節数を調節したい場合は、上記の規則に関わらず必要に応じて音節境界hを取り除く。
ロマンス諸語でのh(音価無し)から。
あいうえお: Ahihúheho
他意: Táhi
真意: Sínhi
極意: Gókuhi
里親: Satawhoja
左右[サユー]: Sáhiu
胡瓜: Kihuri* >Kíuri
悪運: Akuhun
毛糸: Kayhito/Kayhitaw(Kayito/Kayitaw)
黄色: Kihiro(Kiiro)
羽織る: xahóru
幸せ: Sihafase
美味しい: ohisíj/oisíj
或いは: arúhifa/arúifa
やおい: Jáhohi/Jahohi
であ: de áru >deháru >deha*
やるお: jaruho*
やらんお: jaranho*
だろうお: d’aráuho
おいおい: ói-hoi
アンアン: an-han*/am-ham*
アッア: ahha*
アンア: anha*/amha*
アーア: áaha
ウーウ: uuhu*
イーイ: iihi*
アアー: ahaa*
アアア: ahaha*
cf.
体: Tái
砂糖屋: Satagja
左右[ソー]: Sau*
西洋: Séijag
秀でる: xiidéru
櫂: Kái
申す: máusu
稼いで: kaséide
美しい: utukusíj
美しゅう: utukusíku >utukusíu
大分: Ófoita
はーい: xaai
わーい: váai
みたい: míta jág >mítai
赤い: akái/akai
危うい: ajafüi/ajafǘi
雄々しい: vovösíi
唯々諾々: vívïdakudaku
鱝: Éfï
姪: Mefi/Mefï
買う: kafü
思う: omófü
憂う: urefu*/uréfü
多う: ófoku >ófov
えい(掛声): éj
アウ: av*
オウ: ov*
エイ: ej*
アウア: aüa*
オウオ: oüo*
エイエ: eïe*
全米オープン: Zenbei-open
x, f:
転呼していないハ行の子音字はx、転呼したハ行の子音字はf。
xはギリシャ文字χやキリル文字х、国際音声記号xから。
fはかつてのハ行の音価や多くの言語でのvとの関係から。
現代共通語の音韻を使った音声転写ではfが現れない。
は(助詞): fa
へ(助詞): fe
縄: Nafá
那覇: Náxa
法律: Xafuritu
法力: Xofuriki
母: Xafa*/Xáxa
頰: Xófo/Xóxo
使える(可能動詞): tukaferu
使おう >使お: tukafáu >tukafo
浅茅生: Asadifü/Asadifo
仮令: tatofi/tatófi
譬え: tatofáy/tatófay
譬い: tatofi*
大夫[タユー]: Táifu
大夫[タイフ]: Táixu
気配[ケハイ]: Kéxai/Káyxai
気配[ケワイ]: Kayfafi*
転呼したハ行から母音が脱落してできたウはfとする。フはウに成らない。ただし、ウが形態素頭である場合や、ウに記号付き文字を当てる必要がある場合は、fをuに変える。
妹: Imawfito* >Imawfto
素人: Sirafito*/Sirawfito* >Siráfto/Siráwfto
箒: Xaxaki* >Xafaki* >Xafki
請うて: kofite* >kófte
問うて: tofite* >tófte
言うて: ifite* >ifte*
蝙蝠: Kafaxori* >Káfmori
河本: Kafamoto* >Káfmoto
河骨: Kafaxone* >Kafxone
河内: Kafáhuti/Káfati/Káf’uti/Káuti
兄人: Sefito* >Sefto*
秋保: Akifo* >Akif* >Akiv*/Akihu*
向こう: Mukafi >Mukáf
(「向かふ」とみなせばMukáfu)
cf.
白粉: Xakuxun* >Xaxuni* >Xafüni*
蔵人: Kurabito* >Kuramdo* >Kuráṃdo >Kuráudo
東人: Adumabito* >Adumavdo*/Adumahudo*
甲: Káfu
歴史的仮名遣いに於けるア段直後のフが例外的に[オ]と読まれる場合、そのフをfuoとする。
仮名とローマ字との対応も例外的になってしまうが、こうすることによって使用文字を増やすことなくこの語形変化を表現できる。
afuoという文字列は外来語を除いて他では発生しないので、混乱は起きない。
葵: Afuofi
仰ぐ: afuógu
煽る: afuóru
倒す: tafuósu
cf.
扇: Afugi
逢瀬: Áfuse
押韻: Afuvin
v:
ワ行の子音字はv。ラテン語でのvとuとの区別の仕方から。vは子音としてのu。
現代共通語の音韻を使った音声転写ではvo/ve/viが現れない。
泡: Avá
尾: Vó
絵: Vé
胃: Vi
ワ行から母音が脱落してウになった場合、vではなくuとする。
申す: mavosu* >máusu
夫婦: Mevoto >Meuto
維持されるべき綴りが不明または存在しない場合は、引き音やhの規則に当てはまらない限り、現代仮名遣いでの「お」に当たる拍の綴りをvoとする。
前後の仮名に関係なく非形態素頭にはア行が立たなかったことから、非形態素頭ではoよりvoの方が無標であると考える。(頭音法則)
また、foはハ行性をvoに加えているので除外。
ただし、音声転写ではその音声の発せられた時代の音韻に従う。現代共通語ではo/hoのみ。
襖𨱽: Avozai/Aozai(音声転写)/Áo dài(原語)
鍋巴: Guvóba/Guóba(音声転写)/Guōbā(原語)
cf.
魚: Uvo
顔: Kafo
男: Votokáw
大きさ: ofokisa
十: Tóvo
里親: Satawhoja
ウオー: uoo*
ガオー: gaoo*
オーオ: ooho*
オエ: oe*
j:
ヤ行の子音字はj。jは子音としてのi
この字が元々は子音としてのiを表す為の文字であることや国際音声記号jから。
上代特殊仮名遣いにおけるエ乙類はヤ行のエjeである。
現代共通語の音韻を使った音声転写ではjeが現れない。
湯: Jú
世: Jó
矢: Já
江: Jé
柄: Je
兄: Je*
干支(兄弟): Jeto
枝: Je/Jeda
机: Tukuje
采/賽: Saje*
映える: xajéru
見える: miju*, mije* >míje, mijéru
cf.
声: Kóve
前: Máfe
ヤ行から母音が脱落してイになった場合、jではなくiとする。
生憎: ajaniku* >ainiku
来い: kojo* >kói
行く: juku >iku
可愛い: kafajúi >kafaíj
みたい: míta jág >mítai
するみたい: suru mítai
夢みたい: Jumáy mitai
おまい: {omafe}={omave} >{omaĭe} >{omai}→omafe >omai
元い: {motofe*}={motove*} >{motoĭe*} >{motoi}→motófe >motoi
cf.
してみたい: site mitái
夢: Imay* >Jumáy
維持されるべき綴りが不明または存在しない場合は、引き音やhの規則に当てはまらない限り、現代仮名遣いでの「え」に当たる拍の綴りをjeとする。
前後の仮名に関係なく非形態素頭にはア行が立たなかったことから、非形態素頭ではeよりjeの方が無標であると考える。(頭音法則)
また、voとの対称性やi >jeの語形変化を重要視して、veよりもjeを優先した。
また、fe(fay)はハ行性をveに加えているので除外。
ただし、音声転写ではその音声の発せられた時代の音韻に従う。現代共通語ではe/heのみ。
遮る: sakikiru* >saigiru* >sajegíru
才 : Zai* >Zaje*
いいえ: iije
cf.
得る: éru
戎: Ébisu
愛媛: Éxime
姉さん: Néesam
オエ: oe*
ねえ: née
ええ: ée
エーエ: eehe*
法衣: Xofuhe
帰依: Kwíhe
英語: Eggo
日本語に於いてワ行のウとア行のウとが、またはヤ行のイとア行のイとが音韻上区別されたという証拠は無いとされる。これらの区別の存在が確定するまで、vu/jiを存在しないものとして扱う。
わゐうゑを: Vavihúvevo
やいゆえよ: Jahijújejo
植える: uv*, uvru*, uve* >uve, uveru
聶う: xuyv*, xuyvru*, xuyve*
老いる: oju*, oi* >ói, oíru
悔いる: kuju*, kui* >kúi, kuíru
射る : íru, i
cf.
食う: kúfu
報う: mukúfu
いい加減: iikagem
聞いて: kiite
良い: jeki* >jóki >jói >jei* >jee* >íj
大きい: ofokíj
可笑しい: vokasíj
悲しい: kanasíj
楽しい: tanawsíj
可愛い: kafajúi >kafaíj
愛おしい: itofosíj
w, y:
合拗音字はw。この字がuまたはvを二つ繋げた物であることから。w=ŭv
開拗音字はy。一般的なローマ字でのyに加えて、フランス語でのyやオランダ語のÿ(iとjの合字)から。y=ĭj
現代共通語の音韻を使った音声転写では合拗音が現れない。
会議: Kwáigi
蹴る: kwéru
食事: Syokuzi
兄弟: Kwyágdai
泥鰌(土長): Dodyag
お嬢様: Odyágsama
醤油: Syagju
しょうが無い: Sijag ga nái >syagganái
cf.
しよう: semu* >sem’* >seṃ’* >seu* >sijóu
uとvまたはiとjの融合により二字が一つの拍となっている場合にも拗音字w/yを使う。
語形変化の仕組みがこれと同じであっても、基になる表記(語源を含む)から拍の融合が見て取れない場合は除く。
uv >ŭv=w
ij >ĭj=y
-右衛門/-えもん: -huvemon* >-hwemon*
五右衛門 : Gohwemon
cf.
あわよくば: afajókuba
故: Juvé >Ve*
仁左衛門: Nizavemon
箱: Xakaw
酒: Sakay
神: Kámuy
葵: Afwfi
g:
基本的にはガ行の子音字だが、平水韻で下記の韻に分類される字音の韻尾のウやイは共にgとする。
平水韻:
東/冬/江/董/腫/講/送/宋/絳
陽/庚/青/蒸/養/梗/迵/漾/敬/径
直前の母音字によってウかイかが明確に定まるので混乱は起きない。(ug/og/agならウ、egならイ)
「相模/双六/愛宕」など、韻尾をガ行で表した例がある。詳しくは本居宣長の『地名字音転用例』を参照。
「うむの下濁る」と言われる様に、この種の字音の直後では連濁が起きやすかった。
gという字に母音的な音価を持たせている例として、アイスランド語のgやトルコ語のğを参考にした。
現代共通語の音韻を使った音声転写では現れない。
青[ショー]: syag*
青[セイ/セー]: seg*
情景: Zyagkeg
映像: Egzag
重要: dyugheu
中国: Tyúggoku
香草: Kagsau
西洋: Séijag
正月: Syaggwatu
証拠: Syogko
しそうだ(「相」説): sisag da
するそうだ(「相」説): suru ság da
cf.
円柱: Ventyuu
住所: Dyúusyo
牛乳: Giunyuu
余裕: Jojuu
法曹: Xafusau
北条: Xóudeu
しそうだ(「様」説): sisau da
するそうだ(「様」説): suru sáu da
とりあえず『日本国語大辞典』に従っておくが、「中/龍」などの字音仮名遣いが「チウ/リウ」のように「イ段+ウ」とされることもある。そちらに従う場合、iの直後のgをイとして扱う必要が無いので読み方に混乱は起きないが、ウをgで書いて良いのかは検討する必要がある。この様なウの表す対象が韻尾だけに収まっていないのだとすれば、gを使ってはならないかも知れない。
また、アルファベットに付けられた記号はそのアルファベットに派生要素を加える為のものなので、uと起源の異なるこのウを記号付きのuで表すことは避けたい。
ちなみに、gの音価が後舌母音u/o/aの直後でウ、前舌母音e/(i)の直後でイと成る方が綺麗なので、「チュウ/リュウ」のように「ウ段+ウ」として扱いたいという気持ちがあるが、これはあまり重要でないと思われる。
何か問題があるとわかるまでの実験として、ガ行からの音便にもこのgを使ってみる。ただし子音脱落で説明できるものには使わない。
冠: Kagaxuri* >Kagburi* >Kamburi* >Kammuri
cf.
稼いで: kasegite* >kaséide
泳いで: ojogite* >ojóide
香ばしい: kagufasi* >kaubasíj >kambasíj
「香」の字音からkagbasíjとするのも認めてみる。