図書館専門誌「ARG」最新号には「ライブラリーアドヴォカシーの重要性と
その実践」  ー  「神奈川の県立図書館を考える会」の活動から  ー  と題する
ARG株式会社の岡本真氏の論文が掲載されています。かなり長文の論文
なのですが、その内容にはがっかりでした。以前当ブログにおいて「ARG」の
事を好意的に紹介したのですが、今回掲載された氏の所論には間違った
事実認識の下で議論を展開している部分が多くみられ、説得力を欠くばかり
でなく、図書館行政に対する市民運動への清算主義的な評価がなされる
など読んでいて不快感を持ちました。氏は、まず今まで各地で取り組まれてきた
「指定管理者制度反対」「図書館をつぶすな」等といった「反対運動」は連戦
連敗であったとし、その原因をいたずらな行政との「対決主義」にあると断じます。
なぜなら「こちらから(市民側?)対決姿勢を打ち出すと、お互いに引け無くなる
のが目にみえているからであり、時に問題の解決を難しくしてしまう。今は旧来の
住民運動の理屈では戦えなくなってきている時代であり、経済が縮小方向に
向かう今の時代では勝てないのだ」そうです。その点を踏まえた上で、反対して
いるだけで建設的なアイデアが無ければ、行政がそれを取り入れたくても不可能
なのだから、今大事な事は反対するのではなく「より良い提言を出していく事」であると
氏は言うのです。しかし、図書館をめぐる市民運動の側が、ただ「反対」を叫ぶ
だけの運動しかやってこなかったのでしょうか。当ブログでも紹介してきたように
瑞穂区、緑区,千種区の運動にしても図書館行政、運営に関し様々な積極的
提案をしてきました。岡本氏は「それまでの反対運動が功を奏した試しがないにも
かかわらず、同じ方法でミイラ取りに行ったところで、ミイラになる事は目に見えて
いる」「反対運動で最もよく使われ、効果が出ない方法が署名を集めることだ。
 なぜなら署名が社会で有効な力を発揮するためには日ごろの投票率が高い
 という絶対条件があるからだ」などと市民運動を揶揄していますが、名古屋市が
支所図書館6館すべてに指定管理制度を導入しようとした際、短期間に「市民の
会」が集めた13000名分の反対署名が大きな力を発揮し、志段味図書館1館のみの
試行にとどめた事はまぎれもなく「反対運動」「署名活動」の成果にほかなりません。
 さらに市は大阪市の橋下市長の例を持ち出し「選挙で選ばれた政治家が強い意志
を持って政策を推し進めると、基本的に住民は太刀打ちができない」等と述べて
いますが先に行われた住民投票で大阪都構想が葬られたことをご存知ないの
でしょうか。氏は「神奈川県立図書館を考える会」の活動を進める上で、最も
重視したことが「反対運動にしないこと」と強調していますが、そもそも行政からの
「図書館建設基本構想」の作成委託事業を主要業務と唄っているARGが、行政
にたてつくような態度をとれるはずもないのに、あたかも市民活動であるかの
ような団体を立ち上げて、図書館運動を反対運動にしてはならないとアピール
するに至っては「権力側の回し者」と言わざるを得ません。ARGの今後の
動きには警戒が必要です。