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15歳。 作者:霜月沙羅
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第33章 新情報。

「アタシ、斐羅に電話してみるよ」
「え、だって携帯電話は持ってきちゃいけないって……」
「そんなの関係ねえよ。明の『トモダチ』はお風呂に入りに行ったから当分戻ってこないだろ」

 里恵はスカートのポケットから青い携帯電話を取り出すと、ボタンを押した。

「でも、安藤さん電話に出ないって……」
「留守電に入れるんだよ」

 里恵はそう言って携帯電話を耳に当てた。しばらくの時間が経った後、こう口にした。

「もしもし、斐羅? アタシたち、仲直りしたから。直史と明と。だから、だから来るのを止めるなんて言うなよ。またみんなでお喋りしよう? 今、修学旅行なんだ。だからメール、待ってるから」

 理恵は電話を切った後もしばらく本体を見つめていた。

「通じた、かな?」

 明が訊く。

「だといいけど」

 里恵は大切そうに携帯電話を閉じた。

「じゃ、風呂入るか」
「そうだね」

 そして明たちは風呂場へと向かった。脱衣所で沢山の裸体が目に入る。裸になるのがちょっと恥ずかしくてもたもたしている明をよそに、里恵は勢いよくブラジャーを外した。大きな胸だった。そしてパンツも脱ぎ、一糸まとわぬ姿になった。明は里恵の裸体につい見とれる。この姿を知っている男がいるのだろうか。援助交際の噂が頭をよぎった。

「明、早く」
「う、うん」

 明も仕方なく全てを脱いだ。片手で胸を隠しながら、風呂場に入った。
 隣で髪を洗う里恵を見ながら言った。

「ねえ、何で髪の毛染めてんの?」
「みんなと同じは嫌だからだよ」
「でも、不良ってみんな髪染めてるじゃん」
「アタシは不良じゃねえよ」

 泡の付いた髪のまま里恵が立ち上がった。まさかそんなに過敏な反応をされると思っていなかった明は、

「ご、ごめん」

 と謝った。

「アタシはな、万引きも恐喝もしない人間なんだよ」
「そうだよね。里恵、優しいもんね」
「モチ」

 里恵がやっと座ってくれた。明は止まっていた身体を洗う手を再び動かした。

「スマイリー!」

 後ろから声をかけられたので振り向くと、そこにはナツキが立っていた。

「……何?」

 シャワーで泡を流しながら訊く。

「一緒に湯船入ろう」
「え、でも……」

 里恵を好きだと言ったあの時から友情なんて壊れたんじゃないのか。ナツキはシャワーの蛇口を閉めると、無理やり明の腕を引っ張って湯船へと連れて行った。湯船には紀子が浸かっていた。

「スマイリー。今井さんの新情報、教えてあげるよ」

 ナツキが抑揚のない声で言った。

「何……?」
「やっぱり、援助交際の噂は本当らしいよ」

 ドキン、ど心臓が脈打つ。嘘だ嘘だ、そんなはずない――。

「証拠はあるの?」
「私、見たもん。オジサンとホテルに入るところ」

 紀子が言った。

「スマイリー、そんな奴と付き合う気?」

 ナツキが訊いてきた。明は何も言えなかった。
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