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藤咲兄弟の家事情。 作者:未名無
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藤咲家5日目

勢いと直感と怠惰ニック(意味不明)で書きました第三弾。初めて文章を交えて書きました。お付き合い願えれば光栄です^^

それでは、何卒宜しくお願いします(^.^)(-.-)(__)
今年も冬が来た。北の国々では雪がつもり、その地を白く染めていた。二つあるバス停のベンチに腰を掛け、その風景を眺めていた。
ーー俺はこのバス停に何度訪れただろうか。そしてあと何回訪れることだろう。
俺がこの仕事について40年にもなる。40年、思い出せば様々なことがあった。その他ならないすべてが俺を苦しめ、時に励まし、成長させたのだが。
「ねぇ、カケルー」
もう1つのベンチに腰掛けている男の子の声が聞こえた。中学生くらいだろうか。俺の息子のあの頃を思い出す。
「ん? なんだスカルー」
その声に答えたのは髪を銀に染めた男の子だった。この二人は兄弟なのだろうか。髪を銀に染めているが、優しそうな印象のある子だった。息子もやさぐれた時期があったものだ。
俺は不謹慎だとはわかっているが、珍しくこのバス停にいる二人の会話に聞き耳をたてていた。
「ねぇカケルー。なんで冬になると葉っぱは落ちちゃうの?」
「あー。スカルそれはな…えっと、重いからだよ」
「え?でも冬に葉っぱがないとさむいよね?」
「あ、ちがう。えーっと…ほら! 木は死んじゃうんだよ!」
二人の朗らかな会話になごんでしまった。冬なのに暖まる。
「でもカケル、来年また葉っぱは生えるよ?」
「え…あ、生き返るんだよ。木って生命力強いよなー」
「そうなの?人間は生き返らないのに?」
「そうなんだよー。人間の散ってしまった葉っぱはもう戻らないんだ」
なんだか不思議な方向に話がいってしまっているようだった。
「人は生き返られないの?あのおじさんとか」
ん?どのおじさんだろう。
「あぁ、悲しいことにな。冬に死ぬわけてはないが、年を取ると…ほら、あのおじさんは、死んでる」
おじさん死んでるの!?何処!大変じゃないか!!
「へぇ、…今冬なのに寒いよね。頭」
「あぁ、あのおじさんも辛いはずだよ。頭の葉っぱがなくなっちゃって」
こいつら多分俺の頭について話してる!!てか頭の葉っぱって言うなよ!仕事のストレスで綺麗に抜けたんだよ!
「生き返ることはないんだね…もうはえてこない」
「あ、でもなんとなく少し残ってるな!」
「ほんとだ。だけど…もって三ヶ月。いや、きっともっといきるよね。毛根」
「いや、励ましたらダメだ。励まして…ハゲ増してしまったら」
俺の頭の余命を告げるな!だじゃれを言うな!てか本当に気にしてるんだから!
「うぅ、冷えるなぁ。あれ?スカルと…カケル兄さん! 」
「あ!マモルだ!」
「おーマモルー。なんでここにいるんだ?」
コートに身を包んだ男が立ち止まる。あれ?知り合いだろうか。とりあえず俺の頭の議論が終わって良かった。このストレスで余命が縮むわ。
「なんでって、こっちのスーパーで割り引きしてたんだよ。それよりカケル兄さん。髪染めたの?」
「おう。思いきったシルバー!」
「…白髪っぽいよ」
白髪でもあるだけましだろ少年。
「まったく。頭皮のダメージ大きいんだよ?カケル兄さんはもっと髪を大切にしなよ」
やめて!その言葉の流れ弾が隣の俺に突き刺さってるんだから!
「いや、まだ俺は髪あるんだし…」
「そうだよカケルー。あのおじさんみたいになるよ?」
何てことをいうんだ!
「こらスカル!知らない人にそんなこと言っちゃダメだよ!確かにあの人の頭はもう手遅れだろうけれど、本当のことを言わず見て見ぬふりをするの!」
「あ、ごめんねマモルー」
お前もだよ!
「そうか…わかったぜ。俺、髪大切にする。ああならないために!」
「わかった?カケル兄さん。あ、バス来たよ。足気を付けてね」
その三人の兄弟は仲直りしてバスに乗っていったが、見事に打ちのめされた俺は立ち上がることができなかった。初めて会社に遅刻することになるとわな。
ふふふっ。少年たちよ。…お前らもこうなるから今に見てなさい。

今日は一段と寒く感じ、似合わない帽子を買ってしまった。
ー了ー

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