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知り合いの髪型が昔と違うと時間感じるよね。
学生時代、誰もが一度くらいは髪染めしたりすることがあるだろう。けれどそのチャラついた部分は就職とともにみな一律の黒髪になり糊の効いたリクルートスーツを来て満員電車に揺られるのだ。
就職のために上京して数年が経ったある日、出先からの帰り道に見るはずもない人の影を見た。でもその影は間違いなくあの人で。
あの頃とは全然違う髪型に、私も歳をとったんだなぁと薄ら寒くなった。
出会った頃のあの人はまさに軽薄さを絵に描いたような人だった。
痛んだスカスカの金髪は不自然なまでに形作られ固められてまるでイミテーションのよう。外に一歩出ればショーウィンドウを鏡代わりにして髪をいじりながら歩くような男。
チャラチャラとネックレスやら指輪やらキーチェーンやらをぶら下げてだらしなく下ろしたズボンは裾を引きずり今にもパンツが見えそうだった。
当時はそんな男がイケてると思っていたし、自分も負けず劣らずのチャラついた格好の女子高生だった。
白いダボダボのルーズソックスに服屋で買った校則違反のリボン、赤茶色に染めエクステを付けた髪はまるでキャバ嬢みたいに盛っていた。ルールなんて破ってなんぼと言わんばかりの昔は思い起こせば黒歴史。若いって怖い。
そんな私もそこそこの大学を出、就職した今では真っ黒ストレートのロングヘアーだ。昔は貞子みたいでダサいと思っていたけれどこれはこれで男ウケがいい。
清楚系はけっこう需要があるらしい。
あの人も昔の面影なんてこれっぽっちもなかった。彼がギャル男だったなんて今の彼の同僚に言ってもたぶん信じてもらえないだろう。
鬱陶しい長さだった髪は爽やかに切り揃えられ天使の輪ができそうなほど綺麗な黒髪。スーツもぴっちり着こなしいかにも出来る男オーラを発していた。
あの人とは高校卒業以来会っていないし風の便りなんかもなかったので、どんな風になっているかなんてまったく知らなかったから今日の衝撃は計り知れない。
彼を見て思ったのは、変貌への衝撃と、時間の隔たりだ。
彼は私の知らぬ内に大きな変化を迎えていた。あのころは誰よりもそばにいたのに。
寂寥。過ぎ去った時間と、もう交わらない線がノスタルジィを思わせる。でもそれでいいのだ。私たちはあの時、自分たちの意思で交わることをやめたのだから。
時間は平等に過ぎていく。
それは私と彼の間だって同じ。
分かたれた線はもう混じることはないけれど、落ち込むことはない。
それがきっと、人生というものなのだ。
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