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赤ちゃんでした。
あなたは、転生だの生まれ変わりだのを信じるだろうか?
まぁ、誰がどう言おうと関係ないけど。
じゃあそんな無駄なこと聞くなって?しょうがないでしょう。そーいう無駄なことしてないと気が狂いそうなの、こっちは。
ーーだってあたし今、赤ちゃんなんだもん。
ふにゃ、とかあぅぅとかしか言えないこの状況!ありえなくない!?
ついさっき、車に轢かれて死んだばっか。死にたてホヤホヤなの!なのに!!なのになんで生きてて、おまけに赤ちゃんなの?あたし、さっきまでぴちぴちの女子高生だったんですけど!?
あ、今もぴちぴちか。……じゃなくて!
「あら、起きたの?」
突然、あたしの耳に美声が飛び込んできた。と、同時にめちゃくちゃ美人な金髪女性があたしを覗き込んできた。もう、なんか、何て言っていいのかわかんないけど、とにかく美女。キラキラしてんの。女のあたしでも見惚れるくらい。
「ほら、ミリー。お母様ですよ」
綺麗な笑顔を浮かべて綺麗な声で発声された『ミリー』という名前。明らかに日本の名前じゃない。いや、金髪美女がいる時点で日本じゃないけど。
日本じゃ染めたりもできるだろうけど、彼女の目は綺麗なアクアブルー。カラコンの色じゃなくて、自然な透き通った色。
それで、あたしはミリーとかいう名前らしい。しかも、金髪美女はあたしのお母さん。えー、どうしよ。あたし、外国人になっちゃったぁ!
……ありえないんですけど!!!!
ちょっとぉ、どーいうことぉ??
「あらあら、泣かないで。お腹空いたのかしら?」
いつの間にか、あたしは泣いていたらしい。赤ちゃんだからしょうがないけど。そして、お母様はなぜか、あたしを抱っこして斜め後ろにいた女の人に渡す。
「じゃあ、お願いね。ルーシー」
「はい、奥様」
ルーシーと呼ばれた女の人は、少しふっくらしてる、30歳くらいの人だった。
「さあ、お嬢様。ご飯の時間ですよ〜」
にこにこ笑うルーシーは、ほんわかした雰囲気の優しげな印象だった。
あれ、でもなんでルーシーなの?普通、赤ちゃんのご飯って母親があげるんじゃないの?母乳でしょ?
とか思ったけど、それよりもお腹空いた。さっきまで全然だったけど、言われて初めて気づいた。お腹空いた!
だけど、母乳なんてまずそうだから飲みたくない……。
「あらぁ、どうしたんですか?」
なかなか母乳を飲まないあたしに、ルーシーは困ったように覗き込んできた。
これはルーシーに悪いかも。いい人そうだし。しょうがない。赤ちゃんのご飯だもんね、うん。
……赤ちゃん。そう、あたしは赤ちゃん。なんてこと。
とりあえず、一口。あれ、案外甘くて美味しいかも。
結局、お腹がいっぱいになるまで飲んだ。満足。
……って状況は変わってないんですけどね!
「お嬢様〜。お昼寝しましょうね」
笑顔のルーシーは、あたしを元の寝ていた場所に戻すと、ふわふわの毛布を掛けてくれた。
「はぁい、暗くしますよ〜」
そうルーシーが言った瞬間、部屋が薄暗くなって頭上でぼんやりと星が光った。
あれ、あの星動いてない?どうやってんの?
あうー、と自分の口から声が漏れた。可愛らしい声だった。ナルシストでは決してないけれども!
「ミリー、お休みなさい」
お母様があたしのおでこにキスをして離れて行った。
パタンとドアが閉じる音がして、あたしはひとりになった。
えー、ちょっとどうしよう。なにがどうなってんのよ、これぇ。
……とか思ってるうちに、だんだんと瞼が閉じてきた。
赤ちゃんっていっつも寝てるよね。あれって、すぐ疲れちゃうからなのかも。すでにあたしは疲れて夢の中に引っ張られてます。
……考えるのは後にしよう。
なにかありましたら、遠慮なくどうぞ。
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